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MIX師必見!MIXの基礎講座その3〜オケとボーカルのMIX3〜

第1回ではオケの下処理を、第2回ではボーカルトラックの下処理を行なってきました。第3回となる今回はいよいよ、これらをMIXしていく方法について紹介して行きます。

この記事では第1回、第2回を読んでいることを前提に手順をご紹介しています。まだご覧になっていない方は、こちらを先にご覧下さい。

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目次

オケとボーカルのMIX手順

では、下処理済みのオケとボーカルを組み合わせて2MIXの作成を開始して行きましょう。音楽ジャンルにもよりますが、以下の手順でMIXして行くのがミスが起きづらい方法です。

1.フェーダーでバランスを取る

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まずは、フェーダーのみでバランスを取っていきます。

ここでポイントはボーカルトラックのフェーダーを0dBに設定してから、オケデータのフェーダーを-∞から徐々に上げていってバランスを取る、と言う点です。逆の手順でもバランスを取ることは可能ですが、慣れないうちはボーカルが埋もれがちになるので、ボーカルトラックを先に立ち上げて行くのがよいでしょう。

下処理が上手くいっていると、オケに空いた『スキマ』にボーカルトラックがハマっていく感覚がわかると思います。個人的には、このハマっていく感覚をとても大切にしていて、ボーカルMIXだけではなく、オケのMIXでも頼りにしています。どちらかというと、パズルをやっている感覚に近いですね。

バランスを取り始めるポイントについては、曲のアタマから聴き始めてもよいのですが、歌モノであればサビから始めるのがよいでしょう。MIXバランスと言うのは個人の感性によるところが大きいのですが、歌詞がハッキリと聞き取れる位、かつ、オケからボーカルが浮いてしまわない程度に調整しましょう。

また、あまりにもパートごとに音量差があったり、狙いの音質が曲中のパートごとに違う場合は、ボーカルトラックを複数作成して、それぞれに個別の処理を行う方法がオススメです。考え方としては、歪んだエレキギタートラックと、クリーントーンのエレキギタートラックが分かれているのと一緒です。

2.EQを使用して帯域ごとのバランスを取る

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オケの音量を上げて行くと、どこかで楽器の音でボーカルトラックが埋もれて、歌詞が不明瞭になってしまうポイントが見つかると思います。その少し手前のポイントがZAL的バランスが取れるポイントです。オケの中音域がしっかりと処理されていればこの段階である程度完成形に近いMIXが出来上がっているはずです。

楽器の音が邪魔になってボーカルが抜けて来ない場合、オケの中音域をEQで少しカットすることで抜けてくる場合が多いです。すでにカットしている場合はカットするポイントを見直しましょう。

一般的な楽曲ではボーカルは中音域〜高音域の主役です。そのため、混み合った帯域がある場合は、楽器、オケ側をカットしてボーカルを抜けさせることを最優先に考えましょう。

ボーカルに使用するEQポイントの目安

ボーカリストの声質や、録音環境にも大きく左右されますが、以下にEQポイントの目安をご紹介して行きます。

〜80Hz

この帯域は一部の低域楽器が存在している超低域です。ボーカルトラックであれば迷わずHPFでカットしてしまってよいでしょう。

80Hz〜200Hz

一般的に言う低域です。男性ボーカルの場合はこの帯域をブーストカットすることで、声の太さや量感などをコントロールすることが可能です。しかし、楽器に取っても重要な帯域なので注意が必要です。オケのこの帯域をカットしすぎるとベースやエレキギターの音程感が失われる恐れがあります。

女性ボーカルの場合はほとんど音の存在しない帯域になります、HPFのカットオフ帯域をこの帯域まで持ち上げてしまってもよいでしょう。

個人的にはEQでコントロールするよりも、可能であるなら録音段階のマイクチョイスでコントロールすべき帯域だと思ってます。

200Hz〜400Hz

ボーカルの太さが集中している帯域になります。声がこもって聞こえる場合には、この帯域を広めのQでカットしてやるとスッキリ聞こえます。ただし、カットし過ぎると途端にペラペラの音になってしまうため、Qを狭めてカットしたり、オケ中だけではなく単音でも聴いて慎重にカットしましょう。

400Hz〜1.25kHz

いわゆる中音域で、楽器と声で取り合いになる帯域です。この帯域にはボーカルのハリを感じる部分があります。MIX内でボーカルの前後感を調節する際にコントロールすることが多いです。この帯域が出すぎていると全体的にコンコンとしたアナログの電話回線を通ったようなサウンドになります。

1.25kHz〜4kHz

ボーカルの印象を決める最も重要な帯域だと思っています。私は基本的にメインボーカルトラックのこの帯域を積極的にEQすることはありません。

4kHz〜8kHz

声の抜けをコントロール可能な帯域です。サ行などの歯擦音が存在する帯域でもあるので、ディエッサーやダイナミックEQなどでピンポイントでカットしてからEQを使用することで、扱い易くなります。

ボーカルトラックのこの帯域を少しブーストしてやるとオケの中でも抜けてくるサウンドに仕上がります。ただし、過度なブーストを行うと耳に痛いサウンドになってしまうので注意が必要です。

歌詞の歯切れの良さはこの帯域が決めると言っても過言ではありません。

メインボーカルトラックとは逆に、コーラスパートのこの帯域が出すぎているとメインボーカルと合わさった時に痛いサウンドになってしまったり、コーラスの方が前に出てしまう場合があります。この点にも注意しましょう。

8kHz〜

この帯域では主に倍音をコントロールします。ブーストすると派手な印象に、カットすると落ち着いた印象のサウンドになります。アナログ回路をシミュレートしたEQの多くはこの帯域をブーストした時のサウンドに特徴があります。ブーストしすぎるとシャリシャリのサウンドに、カットしすぎると抜けないサウンドになるため慎重に調整しましょう。

多くの場合はこの帯域以上をシェルビングEQでブーストすることになります。




いずれの帯域を調整するにしろ過度なブーストカットは禁物です。特にブーストはトラックのレベルも持ち上がるので、EQによってPEAKが点灯してしまう場合もあります。慣れない内はブーストは+3dB位までに留めておくのが無難です。

EQを使用して帯域ごとのバランスを整えたら、次の行程に移ります。

3.フェーダーオートメーションを書く

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ボーカルの音量は曲の中で大きく変化する(ダイナミックレンジが広い)のが一般的です。そのため、サビでオケとのバランスが取れていてもAメロやBメロではオケに埋もれてしまうことがあります。

ボーカルのサウンドが決まったらフェーダーオートメーションを使用して、各パートでのボーカルの音量を調整していきます。サビのボーカルトラックをフェーダー0dBでバランスを取っている場合、AメロやBメロではフェーダーを持ち上げるオートメーションを書くことが多いでしょう。この際、オートメーションの継ぎ目を必ず確認し、不自然にならないように調整しましょう。

また、コンプレッサーで追いきれない部分的な大入力に関しては、フェーダーを下げる方向のオートメーションを書いておくとMIX全体の音量差を抑えることができ、結果的に仕上がりの音圧をあげることができます。

4.空間系エフェクトを使用して広がりを出す

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ボーカルMIXの仕上げにボーカルトラックにディレイ、リバーブなどのエフェクトを施していきます。ボーカルトラックはプレート系のリバーブと相性が良いので、お使いのリバーブにプレート系のプリセットがあれば、それを元にしてエディットして行くのがよいでしょう。

バラードなど、比較的スローテンポな楽曲にはディレイも合わせてを使用するのも効果的です。

慣れないうちは深くかけすぎてしまう傾向あるので、センド値を控えめな値から調整するようにしましょう。リバーブタイムについても長すぎないものを使用するようにした方がMIXはすっきりします。

リバーブの種類やセンドエフェクトの使用方法については以下の記事もご参照ください。

[clink url=”https://zzstylesound.com/reverb-type/”]

[clink url=”https://zzstylesound.com/plugin-effect-routine/”]

5.2MIXをチェックする

この時、可能であれば2MIXを一回バウンスして、ポータブルプレイヤーやミニコンポなどいろいろな再生機器でチェックしてMIXの問題点や修正すべき点をメモしていきます。

今度は先ほどメモした部分を修正した2MIXを作成し、同様にチェックします。この作業を時間の許す限り繰り返していきましょう。自分が納得できるMIXに仕上がったらマスターデータをバウンスします。

文章にすると短いですが、一番時間のかかる作業行程になります。行き詰まったら、セッションデータを複製して別セッションで一からMIXしてみるのも効果的です。

(6.マスタリングをする)

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実際にはMIXとマスタリングは全く別行程の作業ですが、ある程度音圧を稼いで音量差を均した状態での納品をする必要がある場合、マスターデータとは別にマスタリングしたデータも作成していきます。

先ほどの行程でバウンスした2MIXのマスターデータをマスタリング用の別のセッションに読み込んで、マスタリングを行なっていきます。あくまで簡易的なもので良い場合は、マスタリング用統合プラグインのプリセットから少し調整するだけでも良いでしょう。

この行程後にもMIXの仕上げ時同様、チェックと手直しを繰り返します。




3行でまとめると

  • しっかりと下処理をしてからMIXを!
  • 何度も繰り返しバウンスして確認を!
  • MIXを修正するときは思い切って1から始めるのも手!

最後に

今回はオケとボーカルのMIX第3弾でした。このシリーズはこれで完結のつもりです。

主役になる声を聴かせてやるには声が大きければよいのですが、オケから完全に浮いてしまっていては元も子もありません。今回の記事を参考にしてオケに自然に馴染んだボーカルMIXを目指してください。

 

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