どの世界にも専門用語というのはあるもので、別に難しい用語を使いたくて使っているわけではないのですが、モノを正確に伝えるためには専門用語を使った方が確実だったりします。
エレキギターに関する用語も例外ではなく、パッと見聞きしただけでは意味がわからなかったり、勘違いをしたままになってしまっている単語もあるかも知れません。
今回は、エレキギターに関する用語を10個ピックアップしてご紹介していきます。
勘違いしていた用語や知らなかった用語が解決すれば幸いです。
目次
ヒールカットとは
ギターのネックとボティの接合部をヒールと呼びます。この部分に厚みがあるとネックの振動がしっかりとボディに伝わり厚みのあるサウンドが出せるのですが、セットネックなどで、ボディとの接合部に厚みがあると、とてもじゃないけどハイフレットを押さえられません。
そこで、このヒール部分をカットして薄くすることで、ハイフレットでの演奏性を向上させる加工がヒールカット加工です。ヒールレスジョイントなどと呼ばれるのもヒールカットの一種だと考えて問題ありません。
ちなみにヒールカットされていないのがこの状態、四角いです。ネックとの接合強度的には、ジョイントプレートがあるこちらに分があります。
エルボーカット・ドロップトップとは
エルボーカットとは、ギターを構えたときに右利きの方の右肘が当たるボディの表面部分を斜めに削ることで、演奏性を高める加工です。慣れない方がエルボーカットのされていないテレキャスターなどを弾くとすぐに肘に痛みが走ります。
ストラトキャスター系シェイプのギターの曲線美を演出する加工の一つでもあり、演奏性だけでなく工芸品としての美しさも担っています。
ドロップトップもエルボーカットがされているエレキギターに行われる加工です。ボディトップ材とボディバック材を接着する際に、バック材の曲線に合わせてトップ材を曲げて貼り付ける方法で、非常に高度な加工技術を要します。
上の画像はエルボーカットがされていて、ドロップトップになっているギターです。材が曲がって貼られているのがわかると思います。
コンター(ボディ)とは
エルボーカットがボディ表面の面取りなら、コンター加工はボディ裏面の面取り加工です。
人間の胴体は曲線で出来ていますが、ギターは基本的には直線的に出来ています。そのため、演奏中にボディ上面があたり、演奏に集中できないこともあるでしょう。ギターを構える高さによっては、レスポールやテレキャスターは凶器となって人間の肋骨あたりを攻撃してきます。
日頃コンター加工がされているギターを使用していると忘れがちですが、人体に馴染むことも良いエレキギターの条件だと感じますね。
(セミ)ホロウボディとは
エレキギターのほとんどはソリッドギターと呼ばれる、ボディ内部に音響用の空洞を持たない構造ですが、アコースティックギターのように内部に空洞を持っているエレキギターも存在します。
この音響用の空洞をホロウと呼び、音響用の空洞を持ったボディをホロウボディと呼びます。
また、ホロウボディの中にセンターブロックと呼ばれる木の塊が入っていて、部分的にソリッドギター、他の部分はホロウボディという構造になっているエレキギターを特にセミホロウボディのギターというように呼んだりもします。
後述のセミアコ・フルアコなどいわゆる箱モノギターだけでなく、テレキャスターシンラインも構造的にはセミホロウボディのギターということになります。
一風変わったところで、一般的にはソリッドギターに分類されるTom AndersonのHOLLOW DROP TOPシリーズでは、バック材の表面側に音響用の溝が刻んであり、トップ材を貼り合わせた後の内部に音響用の空洞を持つ構造になっています。名称だけでなく、実際にHOLLOW構造になっているのですが表面から見ても全くわかりません。
また、GibsonのLes Paulシリーズも年代によってはバック材を数ヶ所くり抜いて音響補正をしているそうですが、こちらをホロウボディに分類することは基本的にはありません。
セミアコ・フルアコとは
それぞれセミアコースティックギター・フルアコースティックギターの略称です。
ネーミングが非常に紛らわしいですが、アコースティックギターではなく、エレキギターです。セミ〜はともかく、フル〜と言っているのに、アコースティックギターとして扱われることはありません。エレアコの方がよっぽどアコースティックギター的な構造をしています。違和感を感じずにはいられませんね。
フルアコは、フルにアコースティックの響きを活かした(エレキ)ギター、エレアコは、エレ(クトリックな増幅回路を持った)アコースティックギターという感じで無理やり消化しています。
ボディトップ・ボディバックとは
エレキギターのボディの中には、単一の木材で出来上がっていないものもあります。
アコースティックギターに習い、音響的に2つの木材のいいとこ取りをしようという試みで、ボディの体積の大多数を占める裏側のバック材と、トップ材と呼ばれる薄く削った別の木材を貼り合わせているギターもあります。この時の表面側の材をボディトップ材、裏側の材をボディバック材などと呼びます。
ボディの水平方向ではなく、垂直方向に複数の材を組み合わせている、2ピース構造や3ピース構造とは別物なので注意しましょう。
バック材は、アルダー、マホガニー、アッシュ、バスウッドなど様々ですが、トップ材の多くはメイプルが使用されています。近年では、コア材やエキゾチックウッドと呼ばれる、木目に特徴があり、いままであまりギターに使われて来なかった材が使用されています。
多くの場合、バック材はトップ材よりも軽量で、鳴りの弱さや芯の無さをトップ材の重量のある堅木で補っている構造になっています。オールメイプルのギターなんて見たこともないですが、恐ろしく重いことが想像できます。
また、Zematice製のギターのトップ材を金属と言っているのは聞いたことがありませんが、バック材(?)との結合強度はともかく、硬い材をトップに持ってくる点で理にかなっています。
〇〇メイプルとは
メイプル材は木目や部位によって様々な名前がついています。これらの材は1本のメイプルの木から取れる量に限りがあり、美しい木目方向に切り出す技術も必要なために大変お高くなっています。
以下に紹介する〇〇メイプルは基本的には木目についての呼び方で、メイプル材そのものはハードメイプルとソフトメイプルに分けられています。トップ材にはソフトメイプルが使用される場合もありますが、ネック材にはまずハードメイプルが使用されています。
キルトメイプルとは
キルトメイプルは高級ギターのトップ材によく用いられ、その美しい杢が特徴の材です。葉っぱが重なっているようにも見える杢の1つ1つをリーフと呼び、切り出す位置、角度によって個性的な杢が現れます。
また、この杢は主にソフトメイプルに出る杢で、ハードメイプルにはあまり現れないそうです。そのため、ハードメイプルのキルト材は非常に高価です。
その杢の美しさは絶品ですが、同時に材の価格も超高級です。シースルーラッカー塗装に浮かぶキルトメイプルは高級ギターの証と思って問題ありません。
余談ですが、ボディの表面が真ん中が高く、両サイドが下がっていてアーチ状になっているものをアーチトップと言います。
フレイムメイプルとは
フレイムメイプルもギターのトップ材によく使用されます。虎の縞模様のような外観からトラ杢と呼ばれる杢が特徴で、キルトメイプルとはまた違った美しさをもっています。
こちらはハードメイプルからも出る杢で、ネックにトラ杢が出ているギターもあります。
個人的にはメイプル材のなかで最も美しいと感じる材です。バリトラって表現も好きだったりします。
バーズアイメイプルとは
ハードメイプルから取れるため、ネック材よく使用されます。逆にボディ材としてはあまり目にしないですね。
高級な材なのですが、この模様、苦手な方はとことん苦手なのではないかと思います。
クオーターソーンメイプルとは
クオーターソーンとは、杢の名前ではなく、木の切り出し方の種類です。柾目取りをした材のことをクオーターソーン、板目取りをした材のことをフラットソーンと呼びます。
主にネックに使用される材で、ヘッドやネックがクリア塗装のギターであれば、木目を見れば判別可能です。ネックの表面と裏面に対して垂直に木目が出ていればクオーターソーンです。画像では少しわかりづらいですが、等間隔にならんだ木目が見て取れます。
フラットソーンに比べて強度を稼ぐことができますが、一本の木から取れる本数が少なくなるため、主に高級ギターに使用されます。
当然価格もフラットソーンに比べて高級です。
ピエゾピックアップとは
主にエレアコに使用されるピックアップで、ブリッジの下に装着されます。
一般的なエレキギターのピックアップは弦振動を、磁石とコイルでできたマグネットピックアップで拾い電気信号に変換していますが、ピエゾピックアップは圧電素子を用いて楽器そのものの振動を電気信号に変換しています。
そのため、金属弦以外の振動を拾うのにも使用することが可能で、ピエゾピックアップを搭載したガットギターもあります。
(アップ)リセスとは
シンクロナイズドトレモロでアームアップをする場合、ブリッジ後方を浮かせたセッティングにしなくてはなりません。こうすることで、ブリッジをボディエンド側に倒すことが可能となり、アームアップをすることができるようになります。
フロイドローズトレモロはロック機構を持つためにシンクロナイズドトレモロユニットよりもボティ表面側に大きく、ボディエンド側に長いため、ブリッジ後方を浮かせても十分なアームアップが不可能です。また、ボティ表面に取り付けると弦がボディから大きく離れたセッティングになってしまいます。
現在ではほとんどの場合、フロイドローズトレモロ型にボディを掘り下げて、そこに設置する方法が取られています。この掘り下げる工程をリセス加工、アームアップを可能にするために、ボディエンド側に広げて掘り下げることをアップリセスと呼びます。
スケールとは
スケールには文脈から判断可能な2つの意味があります。用途が大きく異なるので混同することはないのですが、思わぬ誤解を避けるために注意しましょう。
スケール(ギター本体)とは
ギターのナットからブリッジ(サドル)までの距離をさします。代表的なスケールは、ストラトキャスターなどのロングスケール(≒648mm)、レスポールなどのミディアムスケール(≒628mm)ですが、666mmや638mm、弦ごとに異なるスケールが適用されているマルチスケールなど様々なスケールがあります。
スケールはサウンド面以上に演奏性に直結する要素となるので、楽器を購入前に確認しておいた方がよいでしょう。
スケール(音楽理論)とは
音楽的な音の並び、組み合わせのことをスケールといいます。
詳しくは理論の専門家の方にお任せしますが、代表的なものを以下に紹介します。
Cメジャースケール(Cアイオニアンスケール)
なんか文字にすると大層な印象を受けますが、幼稚園生でも感覚的にわかるスケールです。
C(ド) D(レ) E(ミ) F(ファ) G(ソ) A(ラ) B(シ) {C(ド)}
で構成されています。ピアノの白鍵の音をドから並べていったものです。成り立ち的には、Cメジャースケールの音を白鍵に割り当てていったのだと思われますが、現代に生きる我々にはどちらが先でも問題ありません。
Aナチュラルマイナースケール(Aエオリアンスケール)
メジャースケール(長調)を明るい印象のスケールとするなら、こちらのマイナースケール(短調)は暗い印象のスケールです。
A(ラ) B(シ) C(ド) D(レ) E(ミ) F(ファ) G(ソ) {A(ラ)}
で構成されています。ピアノの白鍵をラから並べていったものです。構成音はCメジャースケールと同一です。本筋から外れるので、詳細な説明は割愛させていただきますが、気になる方は『ダイアトニック・スケール』や『チャーチ・モード』で調べてみるとご理解いただけると思います。
3行でまとめると
- 意外と誤解している言葉もあるかも!
- トップ材はサウンドにも影響大!
- 正直バーズアイは苦手っていう人、挙手!
最後に
さて、今回はエレキギター関係のいまさら聞けないワード10選をお届けしました。
箱モノギターの名称に関しては間違えないように注意しましょう。ちなみに、フルアコはストロークで鳴らすとアコギのような大音量を発します。
バーズアイ好きな方には申し訳ないのですが、私はあれが鳥の眼にはとても見えません。
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