PC/Mac

DAW用のPC/Macを更新する最適な手順と注意すべきこと

私ごとで恐縮ですが、この度仕事用のMacBook Proを更新しました。

以前使用していたモデルは2015年の15インチモデルで、今回新調したのは2019年の16インチモデルです。物凄い今更感がありますがAppleシリコン搭載の新型が噂されるこの時期に入れ替えたのはバッテリー膨張やMIX作業中に動作の重さに緊急性を感じていたことが原因です。バッテリーの膨張は深刻で、裏ブタを止めているネジが外れてしまうほどの膨張具合でした。

パワー不足感に関しては、UADシステムのDSPプラグインを主に使用しているため、マシンパワーはそこまで必要としていないのですが、Softube Console1使用時やアレンジ段階でのバーチャルインストゥルメントを複数起動するとCPU負荷もメモリ使用量も非常に多く、再生エラーが出ることもありました。

また、お仕事でPCを使用している方には共感をいただけるのではないかというポイントとして、最優先事項は安定動作です。ハイスペックな新型機は魅力ですが、どんなにハイスペックでも安定した動作をしてくれなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。

発売から時間が経っていて評価が荒れていない製品であれば、安定した動作をしてくれる可能性も高く、全くの新型機を導入するよりもリスクは小さいと考えます。AppleのCPU更新にはIntel CPU移行時のロゼッタに散々苦しめられた点も忘れてはいません。

いきなり余談が過ぎましたが、今回はDAW用のPC/Macを更新する際に注意すべきところを更新作業の段階に沿ってご紹介していきます。



DAW用のPC/Macを更新する前にすべきこと

mac2

まずは機器更新前に現在使用しているPC\Macでやっておくべきことをご紹介していきます。新しいマシンへのはやる気持ちを抑えてここを確実に抑えるようにしておきましょう。

なお、後ほど詳細に解説を行いますが、移行アシスタントなどの機能は使用せずに新規に環境を構築することを強くお勧めいたします。環境移行時のトラブルはほぼすべてこれが原因です。

各種インストーラーをまとめておく

使用しているアプリケーションやDAW、およびそのプラグインの最新版インストーラーをダウンロードして外付けドライブなどにまとめておくと移行がスムーズに進みます。

また、プラグインフォルダの中身やセッティング状況を保存しているライブラリのコピーも用意しておくと便利です。

私はiLokアクティベーションのプラグインを主に使用しているので、iLokアプリケーションのライセンスを確認しながら作業を進めます。近年では単体のインストーラーを配布しておらず、インストール用のアプリケーションを使用するパターンが増えているので、そちらについても確認しておきます。

中には機器ごとに個別の識別番号が入ったインストーラーを配布しているメーカーもあるため、そういった場合には新しいマシンでインストーラーをダウンロードします。インストールはしたものの使用していないアプリケーションやプラグインなどをこのタイミングで取捨選択するのもよいでしょう。

また、私はサンプリング音源を使用したバーチャルインストゥルメントの音源ライブラリを外部SSDに保存しているため、新環境でライブラリの再ダウンロードを回避しています。400GBの再ダウンロードなんて考えたくもないですから・・・。音源ライブラリは外付けドライブに保存することを強くおすすめいたします。OSドライブに保存している方はこの機会に外部SSDに移動させておくのがおすすめです。

HDDよりも高速なドライブにライブラリを置くことで読み込みが高速になるメリットや、今回のように環境移行時にライブラリを持っていけるメリットがあります。近年では外付けSSDドライブも入手しやすくなったので助かっています。

アプリケーションやプラグインのライセンスを確認しておく

iLokやUSB elicenserなどのドングルで管理されているライセンスは新環境への移行が簡単に行えますが、PC/Mac本体にライセンスを保存しているアプリケーションの場合はライセンスの移行方法も確認しておく必要があります。

ライセンスが現在のマシンに残ったままになってしまうと、新規マシンで使用できません。また、メーカーによってはアクティベーション上限に引っかかったり、ディアクティベーションせずにアンインストールを行うと、かなり面倒な手段を踏まないとライセンス移行が困難だったりします。私も以前やらかしたことがあります。

DAWなどの設定をメモしておく

メモと言っても手書きメモの必要は全くなく設定画面のスクリーンショットで十分です。設定ファイルをコピーして移行する方法もありますが、おすすめできません。DAW以外でも必要になりそうな設定画面などは片っ端からスクリーンショットを取っておきます。これは後で必ず役に立ちます。

Excelファイルなどにまとめて表を作るのもよいのですが、新環境ではOfficeアプリケーションよりも前にDAWをインストールするので、単純な画像ファイルが一番です。

外部接続ポートを確認しておく

機器が変わればUSBポートなどの外部接続ポートの構成も変わります。DAW用マシンでは特にオーディオインターフェースやUSBドングル、外付けドライブや増設ディスプレイなど複数のデバイスと接続することが多く、ここは確実に確認をしておきたいところです。

環境の移行直後という経済的に厳しいタイミングで予定していない追加の資金投入は避けるべきです。出来る限り。

余談になりますがThunderbolt3規格はUSB規格の拡張機能を使用しているもので、最大伝送速度を出すためには、接続する機器と使用するケーブルの両方が規格に対応している必要があります。USB 3.0系と互換性のあるtype-cケーブルはパッシブケーブルと呼ばれ、Thunderbolt3規格で使用するためには長さの上限が0.8mと定められています。USB 3.0系との互換性がないアクティブケーブルではそれ以上の長さのケーブルがラインナップされています。

外部接続ポートの通信規格に関しては以下の記事をご参照ください。

現在着手している作業を完了させる

これ、意外かも知れませんがわれわれの世界では常識です。目の前に今使っているマシンよりもはるかにハイスペックな機器があるというのに旧型で作業をします。作業途中での環境移行は絶対に行いません。すべてのライセンスがiLok管理であったならば、もしかしたらやるかも知れませんが、リスクが高すぎます。

というのも、新環境での起動や各種チェックが万が一スムーズに進行しなかった場合、その間の修正依頼や追加案件などに対応することが出来なくなります。また、DAWやプラグインのバージョンが変わってサウンドが変化してしまう可能性もあります。

ご自身で宅レコを行っている方は自己責任のもとお好きなタイミングで移行してもよいと思いますが、外部とやり取りされている方は、納品が確実に完了した仕事の切れ目のタイミングで移行するのがベストです。

もちろん機器の故障などのトラブル時にはこの限りではありません。

必ず新規インストールを行う

先ほども軽く触れましたが、移行アシスタントを使用して移行作業を行うことは全くオススメしません。他社製の移行アシストアプリケーションでも同様です。OSのバージョンが同じでも絶対に使用するべきではありません。

理由は複数あるのですが、一番大きな理由は機器構成が違う環境に前環境を引っ張ってもうまく動くはずがないことがあげられます。

メーカーによってはインストール時に機器構成ごとに最適な構成のアプリケーションをインストールさせていることもあります。また、外部機器との接続の際のポート番号が新環境と噛み合わずに不整合が生じたり、ドライバの不整合、参照ファイルのパスなど一つでもズレてしまうと各種アプリケーションが起動できなくなります。

また、原因の特定も非常に困難です。ファイルのアクセス権もうまく引き継がれなかったり、など他にも各所で不具合が出がちです。

余談ですが、入れ替え前のMacのバッテリー交換ついでにApple StoreでCPUファンの回転数について聞いてみました。

Intel製CPUの発熱とMacBookProの内部スペースの狭さからProToolsなどの高負荷アプリケーションを使用するとCPUファンがかなりの高回転を見せること、新品購入したMacBookPro 2019でもランニングテスト中にCPUファンの高回転を確認したことを告げたところ、真っ先に「移行アシスタントを使用して移行を行いましたか?」と聞かれました。新規にインストールを行ったと答えると、「ならば仕様の範囲である可能性が高いです。」との回答でした。

つまり、CPUファンの制御などというWindowsで言えばUEFI/BIOSが司っている機器の根幹部分についても移行される可能性がある、ということを示唆されたと考えられます。一応、ご担当頂いたジーニアス様からは、高負荷アプリケーションを使用する環境では移行アシスタントの使用は非推奨とのことでした。なんてこった。

私も以前Firewireケーブル一つで環境が移行できる便利さに惹かれてiMac→MacBookProで移行アシスタントを使用した結果、なにもかもが全く上手く動作せず、結局膨大な時間をかけてクリーンインストールを行った経験があります。それ以来、MacOSでもWindowsでも機器更新の際には新規インストールを行うようにしています。

ドキュメント類や画像・動画・オーディオファイルなどは外付けドライブにいったん非難させてから新環境に移行しましょう。



新環境の構築

それでは、移行準備もばっちり整ったところで実際に環境を移行していきます。新規にインストールを行うので、移行というよりは新設と言った方が適切かもしれません。

作業する順を追って解説していきますので、はやる気持ちはまだ抑えておいてください。

OSの設定

まずはインストール直後の状態のOS環境を設定しておきます。OSアップデートなどはこのタイミングで行っておくのがベストです。画面解像度やDockやデスクトップなど、なにも追加でインストールしない状態で出来る設定をしていきます。

細かい部分は個人の好みの問題なので、特におすすめの設定などはありませんが、わたくしはこの段階でSiriやコルタナに別れを告げたり、MacOS標準のファンクションキーに割り当たっている機能をOFFにしたり、画面解像度を最大にしたり、していきます。

そして、ここから複数回出てくる作業として、OSの初期設定が終わったら新規にバックアップを作成します。この復元ポイントを使用することはまずありませんが、念のためOSインストール直後の状態の復元ポイントを作っておきます。

ブラウザのインストール

各種インストーラーの追加ダウンロードやライセンス認証などのためにwebブラウザアプリケーションをインストールします。

個人的な好みとしてWindows/Mac/iOS/Android OS全てで同期できるChromeを使用していますが、基本的になんでもかまわないと思っています。プラグインメーカーのマイページにログインするためのユーザーネームやパスワードを記憶する自信が無いのでChromeに頼っている部分もあります。

以前はSafariだとデザインが崩れたり、読み込めないWebページも多かったですが、今はほとんどのページが対応していると思います。

DAW本体のインストール・設定

事前にダウンロードを行っていたインストーラーが最新版であれば、そのインストーラーを実行してDAW本体をダウンロードします。iLok License ManagerやeLicenser Control Centerなどのライセンス管理アプリケーションや使用するオーディオインターフェースのユーティリティソフトやドライバ類なども同時にインストールしておきます。

今後の項目もそうなのですが、インストーラーはMacOSであれば右クリックメニューから[開く]を選択、Windows OSであれば[管理者として実行]で実行します。

また、Windows OSではインストーラーなどが含まれるZIPファイルをダブルクリックしたときの動作が標準では[閲覧]になっています。そのままインストーラーを走らせるとトラブルのもとになるので、必ず右クリックメニューから[すべて展開]を選択し、フォルダに展開してから実行を行うようにしましょう。

インストールが完了したら、OSを再起動してからこの最小構成でDAWを起動します。無事に起動出来たら事前に準備した設定画面のスクリーンショットを使用して設定を復元していきます。最小構成での起動~設定に成功したら、動作チェックとして無入力で構わないので録音と標準プラグインのインサートを行っておきます。

このタイミングで設定を見直してみるのもよいでしょう。以前のバージョンのものですが、ProToolsの設定に関する記事が以下になります。併せてご参照ください。

ここまで来たら再度バックアップを作成しておきます。このバックアップはDAWが最小構成で起動出来た状態のバックアップとなり非常に有用です。この後の作業でDAWが起動不可能になった場合に最低限起動出来る状態に戻すことが出来ます

DAWで使用するプラグインのインストール

DAW単体での起動と簡単な動作チェックをパスしたら普段使用するプラグインをインストールしていきます。事前に用意したインストーラーを使用する場合には確実に現在のバージョンと同じであることを確認しておきます。面倒ですが、すべてをダウンロードするよりも楽なはずです。

私は、随時起動確認とバックアップを挟みながら段階的にインストールを行います。例えばWavesプラグインのインストール→DAWの起動確認→Sonnox/McDSP/Fabfilterのインストール→確認→バックアップ・・・、といった感じです。こまめに確認を挟むことで万が一DAWの起動が出来なくなった際に原因の特定が容易になります。

また前述のとおり、音源ライブラリを外部SSDに保存していれば、ライブラリの再ダウンロードを回避できます。

全てのプラグインのインストール→動作確認が終了したらバックアップを作成します。このバックアップはPC/MacにDAW関連のアプリケーション・プラグインだけをインストールした段階では正常動作していたという復元ポイントになります。私はTime Machineだけではなく、この状態のOSドライブを別のHDDに丸々バックアップしています。最重要の復元ポイントです。

その他のアプリケーションのインストール

Office系アプリケーションや普段使いのアプリケーション、便利系アプリケーションや各種ドライバなどをインストールしていきます。また、全環境から外付けドライブなどに移行した画像やオーディオファイルなどもこのタイミングで戻します。

こちらも全てインストールが終わり、動作の確認が取れたらDAWの起動確認・動作確認を行います。

万が一DAWが起動できなくなった場合は先ほど作成した復元ポイントに戻ってその他アプリケーションを一つずつインストールして、DAWが起動出来なくなる原因を特定していきます。

ちなみに私は以前、プリンタのユーティリティソフトと水面下でドライバ競合が発生していてDAWが起動出来なくなったことがありました。プリンタユーティリティソフトとドライバをアンインストールをしたのですが、どこかに不使用ファイルが残ってしまい結局バックアップから復元することになりました。

必要なアプリケーションの起動・動作とDAWの起動・動作が確認出来たらバックアップを取ります。このバックアップは普段使いの最初のバックアップという位置づけです。ここまで来ればまずは安心ですね。



3行でまとめると

  • 移行アシスタントは使わない
  • 各段階でしっかりバックアップを取る
  • 周辺機器との互換性も考える

最後に

今回はDAWで使用するマシンを更新する際の方法について解説してきました。

最大の注意点はやはり、前環境を無理やり引っ張らないことです。

移行アシスタントは用法をしっかりと考えれば非常に便利な機能だとは思うのですが、環境が違うマシンに別のマシンの設定を持ってきても上手く行かないことは用意に想像できます。

バックアップで復元ポイントを複数作成しておくことも非常に重要です。バックアップがなかったために再インストールするハメになっては目も当てられません。

手間がかかることは多いですが、マシンのスペックアップで作業が快適になったり、製作モチベーションの上昇につながったりと良いことの方が多いので、今回の記事を参考に良いDTMライフを送っていただければ幸いです。

 


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POSTED COMMENT

  1. freaky より:

    記事参考になりました!
    データ移行はやめようと思います!
    プラグインを新たにインストールはわかるのですが、
    オリジナルのプリセットはどの様に新Macのプラグインに移行しましたか?

    • ZAL より:

      freaky さん

      コメントありがとうございます。
      参考になったようで幸いです。

      プラグインのプリセットはフォルダごとUSBに避難させて、
      新Macの同じ階層のフォルダに上書き保存しました。
      旧マックで同じバージョンのプラグインでテストをしていたのもあり、動作に問題はありませんでした。

      • freaky より:

        やっぱりそうですよね!
        フォルダごと外付けに保存します。
        ありがとうございました!

      • freaky より:

        度々すいません、最後の質問よろしくお願いします。
        プラグインのファイルは
        内蔵SSDもしくは外付けSSDどちらが良いかという質問です。

        1.Kontaktで動くGuitar RigやHeavyocityのDamage等の
        プラグインのファイルは全てフォルダごと
        (Samples/Instruments/Multis/Snapshots/Documents/Multis等)
        外付けSSDに移動がよろしいでしょうか?

        2.移動/ライブラリ/Audio/Plug-Insにある、VST,VST3,Componentsファイルも
        外付けでよろしいでしょうか?

        3.大容量のプラグイン(Komplete等)をインストールする場合、
        外付けSSDにインストールしても問題無いでしょうか?
        それともプラグインのインストールは
        まずは内蔵SSDに保存し、外付けSSDに移動が良いでしょうか?

        お忙しいところすいません、
        よろしくお願いします!

        • ZAL より:

          freaky さん

          ご返信ありがとうございます。
          ご質問の件に関しまして、私の環境での配置例などに基づいてお答えさせていただきます。

          まず、前提として、プラグイン本体のファイルは全てデフォルトのAudio/Plug-insフォルダのまま使用するのがよいです。
          この保存場所を変えるとDAWでの読み込みに時間がかかったり、最悪プラグインが正常動作しない場合があります。

          プラグイン本体のファイルサイズは大きくないため、本体SSDを圧迫する原因にはならないかと思われます。

          1.Kontaktで動作する「音源プラグイン」の「サンプル」はサイズも大きくなるので、
           外付けSSDなどに移すのが使いやすいかと思います。

           逆に、Guiter Rigなどのエフェクトプラグインは上述の通り、Mac本体上においておくのがよろしいかと。

          2.私は複数DAWを使用するので、Audio/Plug-insフォルダごとUSBメモリに避難させて移行しました。
           実際に使用する場合には最初に述べた理由で本体ライブラリ内に置いて使用した方がよいと思います。

          3.NI社のKOMPLETEなどの大容量サンプルライブラリを備えたプラグインバンドルは、
           基本的に「プラグイン本体」と「サウンドライブラリ」に分かれています。

           容量が大きいのは「サウンドライブラリ」側なので、本体プラグインフォルダに「プラグイン本体」、
           外付けSSDに「サウンドライブラリ」と配置すると、本体SSDの容量を無駄なく使えると思います。

           KONPLETEなどはインストール時にライブラリフォルダを指定できたかと思います。
           もし、本体に保存してからライブラリフォルダを移動する場合には、
           プラグイン側でも参照するフォルダを指定しなおしてあげる必要があります。

          • freaky より:

            ZALさま、
            ご丁寧にありがとうございました!
            とても分かりやすく疑問がすっきりしました!
            DTMのファイルのマネイジメントに関してネットで探し回ったのですが解決できずにいました。
            本当に助かりました!
            お仕事頑張ってください!

          • ZAL より:

            freaky さん

            お役に立てたようで安心しております。
            また、励ましのお言葉ありがとうございます。

            今後ともよろしくお願いいたします。

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