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MIX師必見!MIXの基礎講座その2〜オケとボーカルのMIX2〜

前回に引き続き2MIX状態のオケとボーカルのMIX方法についてご紹介していきます。

今回はボーカルトラックの下処理について解説していきます。下処理を怠ると後の段階で苦労をすることが多いので、しっかりとやっておきましょう。

前回記事をご一読いただいてからこちらの記事をお読みになることをおすすめいたします。




目次

ボーカルトラックの状態を確認する

まずはボーカルトラックのオーディオデータを確認していきます。

コンプレッサーやEQをかけていない素の状態のトラックが理想的です。過度にコンプレッションされている素材はMIXに大変苦労します。素のデータが手に入るようであれば入手してください。

ボーカルトラックをソロで確認しながら、レベルオーバーで歪んでしまっている部分はないか、背景で鳴っている雑音が多く含まれている部分はないかを重点的に確認します。

クライアントから送られてきたデータに歪みや雑音の混入が多い場合は、作業を行う前に必ず指摘して可能であればトラックを差し替えてもらいましょう。指摘を行わずにMIXを納品してしまってからクレームに発展した場合、最悪こちらの責任になります。

クライアントさんにも勘違いされている方が非常に多いですが、上記のような録音段階でのミスやトラブルはMIXでは取り戻せません。クリップ除去プラグインで部分的に取り除くことも不可能ではないのですが、元の波形がわからない以上、復元することは不可能です。

また、クライアントが宅レコアーティストの場合、録り直してもらった方が良い結果に繋がる場合が多いです。そのときに、録音時のレベルが高すぎることやエアコンの音が入ってしまっていることなどを教えてあげましょう。

ボーカルトラックの下処理

本来はMIXエンジニアの仕事では無かったのですが、近年ピッチ、発音タイミングの補正もエンジニアが行うことが多いです。

ピッチの補正

近年、録音段階では歌のノリや前後との繋がりを重視してピッチは修正することを前提にしたレコーディングが多いです。

ボーカルは他の楽器類と違い、長時間レコーディングを行うと声質が変わって来てしまうので、短時間で録り切る必要があります。また、スタジオの使用可能時間にも限りがあります。そのときに優先する度合いがノリやパンチイン前後の繋がりの方が高いということで、ピッチを外しまくったテイクでもよいということではありません。

私はこの行程は必ずしも必要とは考えていませんが、全体の流れとしてはやむを得ないといったところでしょうか…。

補正プラグインは動作が重いので、補正が終了したら別トラックに書き出して、補正用のトラックはOFFにしておきます。

発音タイミングの補正

最近のピッチ補正プラグインは発音タイミングの補正も同時進行で行えるものが多いです。リズムから大きく逸脱している部分は補正を加えておきましょう。

あまりにもキッチリ補正してしまうと、歌のノリ、タメと言ったものが台無しになります。やり過ぎには注意しましょう。

プラグインエフェクトでの下処理

突然ですが、素材それぞれに適切な下処理を行うことで、完成品もいい仕上がりを見せるという点で、料理とMIXは似ています。

まずはインサートエフェクトを使用して、ボーカルトラックに適切な下処理をしていきましょう。

インサートエフェクトの順番

insert

これには諸説ありますが、ZAL的ボーカルトラックへの下処理では以下の順番にプラグインをインサートします。

1.テープエミュレーター

Studer-a800

使用しないことも多いですが、小型のオーディオインターフェースなどを使用して録音した素材はサウンドが角ばっていることが多いです。その角を適度に丸めてくれるのがアナログテープのエミュレーターです。

トラックの一番最初にインサートすることで、以下のエフェクト処理がスムーズにいくことが多いです。

2.ディエッサー

DeEsser

録音したボーカル素材の歌詞に注目して聴いてみてください。主にサ行やシャ行、ザ行(s-, sh-,z-)の音で、過剰に高域が出ているのが確認できると思います。

これを歯擦音(しさつおん)といい、残したままにしておくとボーカルトラックをコンプレッションして音量を稼いだときに非常に耳障りなサウンドになってしまいます。

この歯擦音の帯域だけにコンプレッションをかけて、耳障りな部分を取り除いてくれるのがディエッサーです。深くかけすぎると歌詞が聴き取りづらい抜けないサウンドになるので、サ行の音のみにかかるように調整します。

コンプやEQの後ろにインサートする方法もありますが、以後の処理をスムーズにするために先にインサートするのがZAL流です。

ちなみに、ニュース番組のアナウンサーの声などを意識して聞くと、民法各局よりもNHKの方が歯擦音の成分が多い気がします。ニュースなど報道系では耳に優しいことよりも内容を聞き取りやすいことが優先されるため、このような処理になっているのでしょう。

3.カット用EQ

EQ-CUT

特定帯域が出っ張っていたり、不要な低域が残ったままだとコンプレッサーをかけたときに不要な音に反応して過度にコンプレッションをしてしまいます。

ここの段階ではブーストを行わず、100Hz〜140Hz程度のハイパスフィルターと200Hz〜400Hz辺りの声のこもり成分を取り除くのみにとどめます。

4.コンプレッサー

la-2a

ここでやっとコンプレッサーをインサートします。前段階までで不要な帯域がすっきりしているので、狙ったサウンドのみにコンプレッションがかかます。

ZALは、ボーカルトラックのフェーダー位置を0に置いて、サビのサウンドをコンプレッションした際のレベル合わせを行うことが多いです。大抵の曲はサビが一番声量が大きくなるため、AメロやBメロに合わせておくとサビでオーバーコンプになることが多いからです。

5.ブースト用EQ

1073

今の段階ではまだインサートしておくだけにします。通しただけでサウンドが変わる傾向のものが多いため、フラット設定でもこの段階でインサートしておきます。




3行でまとめると

  • 受け取ったデータは必ず確認!
  • まずは下処理をしっかりと行う!
  • コンプレッサーの前に不要帯域を処理する!

最後に

今回はボーカルトラックの下処理についてでした。料理でもMIXでも下処理は大事です。ここを適当にやってしまうと後が本当に大変です。逆にここさえしっかり押さえておけば、あとは混ぜるだけ状態になります。

次回から実際に2MIXを作る段階に入っていきます。

 

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