Effector

実は魔法の箱!?ギターエフェクターの基本 〜歪み系・空間系編〜

ギタリストの足元に転がって(?)いる金属製の箱、スイッチやツマミが付いてて、足で踏んだりする箱。踏むと音が変わったりします。

そうです、それこそがエフェクターと呼ばれる魔法の(?)箱です。この記事では、エフェクターをカテゴリーごとに分けて、それぞれの効果について簡単に説明して行きます。

一度に全カテゴリーをご紹介すると、膨大な量になってしまうので、今回は歪み系と呼ばれるエフェクターと、空間系と呼ばれるエフェクターに絞ってご紹介していきます。



目次

歪み系

エレキギター用エフェクターの花形、歪み系エフェクターのカテゴリーです。

多くの方がイメージするエレキギターのサウンドは、これらのエフェクターやギターアンプなどで作られるオーバードライブやディストーションなどの歪みサウンドなのではないでしょうか?

市場に出回っているエフェクターの中で最も種類が豊富にあり、選択肢はそれこそ無限大です。また、それぞれのエフェクターの特徴が最も出やすいカテゴリーであり、常にギタリストの頭を悩ますところでもあります。

ちなみに、サウンドに関する『歪み』の読み方は『ひずみ』です。『ゆがみ』ではありません。これを間違えると恥ずかしい思いをすることになります。英語ではどちらもDistortionなんですけどね。

一言に歪み系と言っても、狙いとしている歪みの深さ、歪みを得るメカニズムなど、多くのバリエーションがあります。ここからは、各種歪みエフェクターについてさらに細分化してご紹介していきます。

オーバードライブ(OVERDRIVE)


チューブアンプのプリアンプ部を過剰に稼動(オーバードライブ)させた時の歪んだ音色を再現したエフェクターです。

他の歪み系エフェクターに比べて、ギターアンプの歪みに近く、ナチュラルな歪みを売りにしているものが多い印象です。

コントロールはGAINやDRIVEなどの歪みの深さを設定するツマミと出力音量を調整するVOLUMEなどのツマミ、音の明るさを調整するTONEツマミの3つで構成されているものや、TONEの代わりにHIGH/MID/LOWなどの帯域別に細かくコントロールできるものなどがあります。

主な使い方、使い所

ギターアンプをクリーントーンが得られるセッティングにしておいて、歪みサウンドが欲しいタイミングでエフェクターをONにするのが一般的です。ギターアンプのチャンネル切り替えのように使用するエフェクターですね。

現代の音楽シーンにおいては、むしろクリーントーンの時にOFFにするエフェクターと考えても問題ないと思います。

ディストーション(DISTORTION)


一般的にオーバードライブよりも深い歪みを得られる歪み系エフェクターです。オーバードライブとの明確な境界線は、一応メーカーごとに設定されていると思うのですが、かなり曖昧ですね。

元々の定義として、ギターアンプの回路に過大入力などの負荷を与えることを『オーバードライブ』、それによって得られるサウンドを『ディストーションサウンド』と呼んだことがはじまりなので、英語表記の段階では元から曖昧です。

コントロールはオーバードライブ同様に、GAINやDRIVEなどの歪みの深さを設定するツマミと出力音量を調整するVOLUMEなどのツマミ、音の明るさを調整するTONEツマミの基本的な3つで構成されているものや、TONEの代わりにHIGH/MID/LOWなど帯域別に細かくコントロールできるツマミが備わっているものなどがあります。

主な使い方、使い所

オーバードライブと同様に、クリーンセッティングのギターアンプに対して使用するのが一般的です。オーバードライブでは歪みの量が足りないときに使用するイメージです。

カテゴリの特徴として、オーバードライブよりもよくも悪くも潰れたサウンドに仕上がるエフェクターが多い印象があります。その結果、4度、5度、オクターブ以外の和音が綺麗に発音されない傾向が強く、開放弦などを使用したアルペジオ系のフレージングには不向きです。

ヘヴィメタルのようなザクザクとしたブリッジミュートサウンドが得たい場合は迷わずディストーションですね。

また、非常に深い歪みが得られる反面、歪みを深くすると音抜けが悪くなったり、線が細いサウンドになったりと弊害もあります。誰もが一度は陥る歪ませすぎの罠に注意ですね。

ファズ(FUZZ)


意外にも歪みエフェクターの原点となったエフェクターです。個人的なサウンドの印象としては、倍音(とそれに伴うノイズ)発生器というカテゴリーになります。ジミヘンがアメリカ国家を演奏したサウンドというイメージが非常に強いです。

サウンドの特徴としてはONにした途端にジリジリとしたノイジーな歪みが得られるといったものです。モノによっては元のギターがシングルコイルでも、ハムバッカーでもお構い無しにぐしゃぐしゃに歪ませてくれるので、ストレス解消になります。

また、通常得られないレベルで倍音が発生するので、ONにした瞬間耳につくハウリングが止まらなくなったり、音が潰れすぎて音程感がなくなる場合がありますが、個人的にはファズはそういうエフェクターだと思っています。

これもコントロールは他のものと同様、GAIN、VOLUME、TONEが一般的ですが、オーバードライブやディストーションと比べてメーカー独自のコントロールになっているものが多いですね。

主な使い方、使い所

正直なところ、現代音楽で使用する歪みとしては一般的ではありませんが、ここぞ、というタイミングでONにすることでサウンド面での個性が十分に発揮できるエフェクターです。

また、使用するファズやセッティングによっては、ギターを弾いている、いないに関わらず常にファズ自体が発振してハウリングのようなサウンドや、ノイズの嵐を演出してくれます。そのため、ノイズミュージックと呼ばれるジャンルのギタリストが多用しているイメージがあります。

ブースター(BOOSTER)


正確にいうとブースターは歪み系エフェクターとは原理も構造も違うのですが、用途別にカテゴライズするとこのカテゴリーになります。

ブースターはエレキギターの出力信号を増幅(ブースト)するエフェクターです。

出力信号をブーストすることで、後段の歪みエフェクターやギターアンプに過大入力を引き起こし、結果として歪みを深くすることが可能になります。また、シングルコイルピックアップの音を太くするために使われたりすることもあります。

クリーントーンにも使用することがあり、サウンドに張りを与えてくれます。

ブースターという名目で発売されているエフェクターの他にも、オーバードライブをブースターとして使用したり、ブースター機能を持ったバッファーエフェクターや後述のイコライザーなど、基本的にON/OFFで出力レベルを変更できるエフェクターは全てブースターとなり得ます。

コントロールはLEVELツマミだけのシンプルなものから、TONEツマミも備えているものや、原音にブースターの回路を通ったサウンドをMIXして行くようなものまで様々です。

主な使い方、使い所

現在の歪みサウンドよりも深い歪みを得たい時にONにする使用法が一般的です。元の歪みが深ければ、歪みの前段でブーストしてもほとんど音量は上がりません。

曲調により切り替えることもあれば、バッキングの歪みサウンドから、リードプレイ時のサウンド用にゲインアップさせるために使用します。特に真空管ギターアンプをブーストしたサウンドは太くコシのあるサウンドに仕上がることが多く、アンプで歪ませるギタリストの強い味方です。

また、オーバードライブ、ディストーションなどの他の歪み系と併用するときには、他の歪み系よりも前段に接続することで、歪みの深さをコントロールできるのはもとより、後段に接続することで、単純なボリュームアップ(+若干の倍音付加)用のエフェクターとして使用することも可能です。

プリアンプ(PRE AMP)


これも厳密には歪み系エフェクターではないのですが、用途としてはこのカテゴリーに該当するエフェクターです。マルチエフェクター内蔵など大型のものだとラックマウントサイズになっていたりしますね。

プリアンプとは、ギターアンプ前半部分でサウンドを決定づける回路(=プリアンプ)を抜き出したものです。真空管アンプなどの回路を電気的にシミュレートしたものや、実際に真空管を使用したものもあります。クリーンと歪みの2チャンネルやそれ以上の多チャンネルを採用しているものや、ラックマウントタイプではMIDIペダルボードで切り替え可能なデジタルコントロールになっているものが多いです。

「アンプという名前がついているのは、なぜ?」と思われる方のためにざっくり説明すると、ギターアンプはサウンドを作るためのプリアンプ部と、音量を決めるためのパワーアンプ部に別れています。本来はアンプとは信号増幅回路全般を指す単語なので、ツマミ一つとっても、そこから接続されている回路内にアンプは存在するのですが、回路の話になると、サウンドの話から大きく脱線してしまうので、今回は控えさせていただきます。

コントロール類は実際のアンプのツマミのようにGAIN、EQ、CHANNEL VOLUME、MASTER VOLUMEなどとなっているものが多く、アンプと同様に使用できます。

また、近年ではかなり小型のものもありますが、他の歪みエフェクターよりも大型のものが多く、電源も専用のものが必要だったりします。

主な使い方、使い所

基本的には常時ONにして、チャンネルの切り替えでサウンドをコントロールするタイプのエフェクターです。

他の歪みエフェクターと違い、ギターアンプのリターン端子に接続することで本来のサウンドを得ることができます。

また、パワーアンプ単体機と組み合わせることで、アンプヘッドとして使用することも可能です。ペダルボードに収まるコンパクトエフェクターサイズのパワーアンプもあるので、エフェクターケースの中に小型のギターアンプを持ち歩くことも可能です。その場合は、楽器用シールドではなく、スピーカーケーブルを使用して、パワーアンプとギターアンプ用のキャビネットに接続する必要があることに注意してください。



空間系

空間系だけでなく、モジュレーション系などとも呼ばれるカテゴリーです。

その名の通り、エレキギターのサウンドに広がり感を加えたり、音を揺らしたりするエフェクターがここに属します。歪み系エフェクターと併用する際の接続順は歪みの後ろに持ってくるのが一般的です。

コーラス(CHORUS)


原音に100分の1秒(10ms)程度のディレイがかかった音を付加することで、ギターサウンドにうねりや広がりを与えるエフェクターです。このディレイのタイムを周期的に動かすことで、音程や音像を揺らしサウンドに広がり感を与えます。

コーラスにはデジタル回路を使用したデジタルコーラスと、BBDと呼ばれる回路で信号をバッファ→解放と繰り返し、実質的に回路長をコントロールすることでディレイをかけ、コーラスに使用するアナログコーラスに分けられます。

デジタルコーラスは冷たいクリアな音色、アナログコーラスは暖かいマイルドな音色が特徴です。

一般的なコントロールはディレイタイムを動かす周期をコントロールするRATEやSPEED、ディレイタイムを動かす深さ、幅をコントロールするDEPTHなどのツマミがついています。ディレイ成分の音量をコントロールするLEVELや、全体の音質をコントロールするTONEなどが備わった機種もあります。

主な使い方、使い所

主にクリーントーンのサウンドに広がり、音の揺らぎ、音の厚みを加えるために使用されます。

歪みサウンドでのリードプレイに厚みを加える目的で使用されることもありますが、歪みでのバッキングでは音が濁ってしまうためあまり使用されません。

代表的な例をあげると、Paradise city / Guns N’ Rosesのイントロ部分のクリーンアルペジオが非常に印象的なコーラスサウンドですね。

フランジャー(FLANGER)


コーラスと同様に、原音にディレイがかかった音を付加することで、ギターサウンドにうねりや広がりを与えるエフェクターです。ディレイのタイムを周期的に動かすことで、音程や音像を揺らしサウンドに広がり感を与えます。

コーラスとの明確な線引きはないのですが、エフェクト音をエフェクトの入力に戻すフィードバック回路を搭載しているものが多いため、コーラスよりもかかり方が派手で、効果も大きいのが特徴です。

動作モードを切り替えることで、コーラスとフランジャーが一台の中に収まっているエフェクターも存在します。

コントロールは周期を決めるRATE、エフェクトの深さを決めるDEPTHのみのシンプルなものから、ディレイのフィードバックとディレイタイムに相当するRESONANCEとMANUALなど多くの操作子が備わった機種もあります。

主な使い方、使い所

クリーントーンにかけると深いコーラスのような雰囲気なのですが、歪んだサウンドに使用するとジェット機のエンジン音のような効果が発生します。

ロングトーンに使用してわかりやすいフランジ効果を得るのもよし、Ain’t Talkin’ Bout Love / Van Halenのように常時踏みっぱなしでリフを刻むもよし。使う人のセンスが問われるエフェクターですね。

 

フェイザー(PHASER)


元々はハモンドオルガンなどで使用するロータリースピーカーのシミュレートを行うエフェクターの予定だったのですが、出来上がってみたらロータリースピーカーっぽくなかったので、別の用途に使ってしまおう、という話だったと思います。

原音に位相を周期的にずらした音を加えることで、独特の揺らぎ感を演出することが可能なエフェクターです。

コントロールはRATE、DEPTHなどのおなじみなものから、フランジャー同様にRESONANCEが備わっているもの、多段フェイザーの動作段数を決定するSTAGEなど様々です。

主な使い方、使い所

ファンキーなカッティングと言えば、このフェイザーサウンドが浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

拙い擬音で申し訳ないのですが、フランジャーを『ジョワーン』だとしたら、フェイザーは『キョワーン』というイメージです。

Killer Queen / Queenのカッティングギター、ピアノにもフェイザーは使用されています。単調なスタッカートの4分音符でもフェイザーの効果で毎回表情が変わるため、単調さを感じない効果が得られていますね。

トレモロ(TREMOLO)


音量を周期的に変化させることで、揺れを演出するエフェクターです。ビブラート(Vibrato)と混同されることも多いエフェクトですが、ビブラートは音程を周期変化させるエフェクターです。ギターのトレモロアームと同じ効果があるのはトレモロエフェクターではなく、ビブラートエフェクターという紛らわしい構図です。注意しましょう。

コントロールはRATEとDEPTHが中心です。トレモロの波形をコントロールできる機種ではナチュラルな正弦波風の変化から、ゲーターやキルスイッチを使ったかのようなトムモレロ奏法、スイッチング奏法的な強烈なサウンドまで、幅広く設定可能です。

主な使い方、使い所

クリーントーンのアルペジオなどによく使用されています。

近年では、シューゲイザーなどのジャンルで、歪んだコードストロークやロングトーンにかけたり色々な方向性で使用されています。

Walcome Home (Sanitarium) / MetallicaのイントロやAメロバックの美しい響きのアルペジオにも使用されていて、心地よい揺れ感を演出しています。




3行でまとめると

  • 一言に歪み系といっても種類は多い!
  • 一言に空間系といっても種類は多い!
  • 実はディレイによっていろんな効果を作っている!

最後に

さて、今回は歪み系エフェクターと空間系エフェクターを簡単にご紹介してきました。今後、個別に深く紹介していければな、と思っています。

特に、歪みサウンドはギタリストが一番こだわるところと言っても過言ではないでしょう。理想のエフェクター探しの旅は永遠に終わらないのだと感じています。

 


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