別記事でも書きましたが、最近DAW用のMacBook Proを更新いたしました。
MacBook Pro15″ 2015mid→MacBook Pro16″ 2019に変わりました。理由は非常に消極的です。バッテリーの膨張・性能低下とCPUパワー・メモリ容量不足です。Appleシリコンまで待ちたかったのですが、断腸の思いで更新です。状況が許してくれませんでした。
今回は移行に伴うあれやこれを備忘録的に書いて行こうと思います。
目次
以前の環境
まずは以前の環境をご紹介していきます。Mid 2015のMBP、CPUとメモリを増設したCTOモデルです。
プロセッサは第4世代Intel Core i7で、正確な型番だとCore i7-4980HQってやつです。4コア8スレッドでマルチ2.8GHzシングル3.9GHzですかね、ターボブースト時には4.0GHz動作です。ラップトップ用のプロセッサでTDP47W。いまだ多くのアプリケーションの推奨動作環境内に入っているCPUで、ブラウザなどの普段使いなら現在でも全然ストレスなく使えるスペックです。
詳細なスペックは以下から見れます。
ですが、DAWの使用という点で考えると高負荷なプラグインを多用する用途だとパワー不足が目立つことが多くなってきました。メモリに関してもDDR3 1600MHzの16GBでは速度容量ともにDAWマシンとしては厳しいところですね。近年のプラグインはネイティブ動作ながらに高性能なものが多くなったものの動作が重いものも増えています。バーチャルインストゥルメントも展開にメモリ容量を多く使うものも多いです。
まぁ、6年前の22nm時代のプロセッサ搭載モデル相手になにを言っているのか、というところではあるのですが、逆に6年前のラップトップ最上位だからこそここまで粘ってこれたことも事実です。
現在の環境
前述のとおり、断腸の思いです。発売から時間が経っているので動作の安定性という点では非常に信頼できるのですが、問題はタイミングですよね。恐らく、ここからサードパーティー製のアプリケーションがIntel CPU/apple CPU両対応→apple CPUのみに対応と段階的に移行していくことが想定されるこのタイミングです。少なくとも4年はしっかり使いたいです。お願いします。
先代の5年後のモデルなので、各部かなりのパワーアップがなされています。
プロセッサは第9世代Intel Core i9で型番はCore i9-9980HKです。8コア16スレッドでマルチ2.4GHz、シングル4.5GHz、ターボブースト時には5.0GHzで動作するようです。TDPはほぼ変わらず45Wですね。14nmプロセッサなので数値以上に性能差があります。世の中には第11世代が出ていますが以前の世代間のような爆発的な性能差はないそうです。
詳細なスペックはこちらから見れます。
5世代違うものを比べるのも無意味ですが、体感上の動作もかなりスピーディーになっています。メモリも32GB載せています、DDR4 2667MB(appleは切り上げ表記なのですかね)と速度も向上しています。グラフィック性能もパワーアップしているみたいですが、ノートパソコン用のGPUに過度の期待は禁物です。グラフィック性能が必要な方は大人しく外部GPUを検討しましょう。
事前準備
事前にはDAW環境やその他アプリケーションのライセンス確認やインストーラーの準備なんかをサクサクっとやって、周辺機器の動作環境なども確認しました。
基本的にMacは世代を跨いでも互換性が保証されやすいので、あまり心配はしていませんでした。互換性が保証されやすい理由は、機器のバリエーションが少ないからです。詳しくは以下の記事に書いてあるので興味があったらご一読ください。
そんな事前準備も外部接続用ポートについて考えたときに暗雲が立ち込め始めます。
外部接続用ポート
以前使っていたMacBook Proの外部接続用ポートはUSB3.0×2とThunderbolt2×2、HDMI端子とSDカードリーダー、イヤホンと充電用端子。という構成でした。当然周辺機器もそれに合わせてそろえてあるので、DAWでの作業中は下表のように接続していました。
Thunderbolt2-1 | Universal Audio Apollo8p | →Universal Audio UAD Satellite |
Thunderbolt2-2 | OWC Thunderbolt 2 Dock | →別表 |
USB3.0-1 | Softube Console 1 Hardware | |
USB3.0-2 | データ受け取り用ドライブなど | |
HDMI | 拡張ディスプレイ |
OWCのThunderbolt 2 Dockから先は下表の感じです。
Thunderbolt2 | GDRIVE HDD | REC用 |
USB3.0-1 | iLok | |
USB3.0-2 | USB eLicenser | |
USB3.0-3 | ライブラリSSD | |
LAN | Avid Artist Mix |
更新後のMacBook Proの外部接続用ポートはThunderbolt 3が×4、イヤホン端子、以上・・・。
これはかなり困ってしまいました。暗雲もやもやです。
Thunderbolt 3対応のドックはほぼ必須。Thuderbolt 2への変換も必要だし、そもそもThunderbolt 3ポートの一つは充電機で埋まる。本体直結は諦めて以下のようにプランニングしました。
Thunderbolt3-1 | USB給電器 | |
Thunderbolt3-2 | OWC Thunderbolt 3 Dock | →別表 |
Thunderbolt3-3 | Universal Audio apollo8p | →Universal Audio UAD Satellite |
Thunderbolt3-4 | REC用SSD |
Thunderbolt 3 Dockは以下の感じです。
Thunderbolt3 | GDRIVE HDD | データ置き場 |
USB3.1-1 | iLok | |
USB3.1-2 | USB eLicenser | |
USB3.1-3 | ライブラリSSD | |
USB3.1-4 | Softube Console 1 Hardware | |
LAN | Avid Artist Mix | |
Display Port | 拡張ディスプレイ |
いざ実装
外部持ち出しレコーディングにも可能な限り同じ環境で対応するためにUSB type-C接続のSSDをメインのレコーディングドライブにしてGDRIVEのHDDは作業完了データの置き場にします。いつかはレコーディングドライブをSSDにしようと考えていたので良いタイミングと思います。
必要になった変換は、Thunderbolt 3⇔Thunderbolt 2変換が2個、外部レコーディング時に持ち込みUSBメモリやiLok接続用のUSB type-Cハブが1個。入れ替えに必要なケーブルはThunderbolt 3対応アクティブケーブルが1本、Mini-DP⇔Display Portが1本。というところでしょうか。使用している拡張ディスプレイがDisplay Portに対応しててよかったです。DP→HDMIは安定しない印象があります。
これらに加えてOWCのThunderbolt 3 Dockです。めまいがしてきました。当初はThunderbolt 3⇔Thunderbolt 2変換を使用してThunderbolt 2を続投させるプランだったのですが、拡張ディスプレイが認識されず、外付けHDDも回りっぱなしになってしまったため泣く泣く追加で入れ替えました。
apollo側でトラブらなくて本当に助かりました。あちらはThunderboltポートを交換することでThunderbolt 3コネクタを実装することが出来るのですが、出来れば避けたい価格設定です。私の環境ではUAD Satelliteもぶら下がっているために最悪2枚必要になります。
ここから地獄のインストール作業や、ひやひやしながらのランニングテスト・ストレステストを行いましたが、ハードウェア面でもソフトウェア面でも目立ったトラブルもなく更新が完了しました。2日位かかったかな・・・。
先代の行方
先代の2015MBPはApple Storeに持ち込みオールチェックを依頼しました。結果、バッテリーの経年劣化以外に大きな問題はなかったので、バッテリー交換をお願いしました。バックアップ機としては少々型が落ちすぎた感もありますが、何においても冗長性は重要です。重いセッションは無理でも簡単なオーディオ編集は可能ですから。
また、バッテリーが復活したので気軽に持ち出せるラップトップとしても運用していこうと思います。
どれだけスペックアップしたのか?
ここまでだとただの日記になってしまうので、5世代を超えたベンチマーク対決をしてみようと思います。不毛なことはわかりきっているのですが体感だけではなく、数値で見て安心したいというのもあります。
実使用上では、拡張ディスプレイの描画がカックカクになる規模のセッションをストレスなく走らせることが出来たので相当のスペックアップをしているのは事実なのですが、ベンチマークアプリケーションを使用してしっかりとみていきます。
しっかりと言っても細かいところまでいろいろ見るわけではなく、簡易的にCINEBENCH R23を回して結果を見ていきます。
マルチコアスコア
CINEBENCHでは純粋なCPUスコアを比べることが出来ます。ゲーム用のベンチマークなどではグラフィック性能に重きが置かれてしまうので、実使用上で必要な部分以外のところでスコアの差が出てしまうことを懸念してこちらを選びました。
測定条件は共通、バッテリー接続で再起動を行って起動プロセスが落ち着いたところで確保されているメモリを解放した直後に回しています。
まずは、MBP2015のマルチコアスコアから見ていきます。
マルチコアスコア3655点でした。第11世代の最新Intel CPUのCore i7-1165G7に迫っています。と言っても1165G7は省電力モデルのCPUなので比べるのは少々酷です。TDPも全然違います。
では更新後のMBP2019で回していきます。
8828点でした。ダブルスコア以上ですね。まぁ、CINEBENCHでは能率的に全コアを使用しているので、実際にDAWを走らせたときは2倍以上の差は付かないと思います。
数世代前のXEONとか、Ryzenの第一世代と同レベルと考えると非常に悲しくなります。
参考までに動画編集などに使用しているWindowsマシンのベンチ結果が以下になります。搭載CPUはIntel Core i9-10900Kです。定格です。
14258点でした。デスクトップ機と比べること自体に無理があるのですが、Macも機器構成を自分で選べたらよいな、と思ってます。実現することはないと思いますが・・・。
シングルコアスコア
DAWは常にマルチコア動作を行うわけではなく、一つのトラックの処理は一つのコアで行ったりとシングルコアスコアも重要になってくるようです。
2019は8コア、2015は4コアなのでスコアの差はそんなに大きくならないような予想が付きますが、実際に回してみます。
まずは2015から。
866点でした。16コアの第1世代スレッドリッパーにも負けてしまいました。悔しいです。
続いて2019を見ていきます。
1182点、たぶんかなり強いです。がダブルスコアには全然なりませんでした。
マルチコア処理が2.4倍、シングルコア処理が1.3倍程度高速になったと考えられるということですね。
Windowsデスクトップはこんな感じです。
1319点でした。一応第10世代のコンシュマー向けハイエンドCPUのCore i9-10900K相手にかなり迫った性能ということがわかります。8コアと10コアの差はありますが、シングルコアなら戦えます。
☆まとめ☆
- 計画的に更新をするのがベスト
- バックアップマシンは大切
- 端子類変わりすぎ
最後に
今回は完全に私事のMacを買い換えたっていうお話でした。
まだ本格的なMIX作業などをしていないので、漠然とした感じですが、過去セッションを走らせてみた感じは非常に良好です。
実はDAWでのMIXは使い方さえ間違えなければ、超ド級PCではなくても問題なかったりします。アプリケーションやプラグインがアップデートで重くなったときのためや長く使うためにハイスペックなマシンを選んでいますが、実際にはそこまでのスペックは必要ないのかも知れない、と思い始めています。
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