以前の記事で、カット用のEQについてご紹介しました。
個人的には、カットにはデジタル系の癖のないEQを使用するのがベターだと考えているのですが、『癖がない』ってどういうことなんだろう、と考えて、簡単な検証を行ってみました。
検証内容は、5種類のEQを使用して同一のフィルターカーブでカットEQを行い、RTAで測定した結果を視覚的に比べて見る、という聴覚に全く頼らないものです。
実際に使用するRTAでも結果は変わってくると思うのですが、今回は『メーターの追従速度が遅くて画像が取りやすい』といった一点でfabfilter Pro-Q2をアナライザーがわりに使用しています。
目次
検証方法
一定レベルのホワイトノイズをProTools標準のSignal Generatorを使用して出力し、オーディオトラックに録音。
録音したオーディオトラックに各EQをインサートし、カットEQを設定。
マスタートラックにfabfilter Pro-Q2をインサートし、RTAにて測定。
という簡易的かつ単純なものです。
ちなみに可聴帯域外のグラフがせっかく表示できるので、96kHzサンプリングで測定しています。
ちなみに元のホワイトノイズのグラフがこれです。
ここに、以下の4つのEQ、フィルターを設定します。
- HPF 100Hz 18dB/Oct
- LPF 10kHz 18dB/Oct
- 1kHz -18dB Q=10
- 4kHz -18dB Q=2
実際に使用する場合はこんなに極端なEQは設定しないと思われるので、実使用上の評価は下せませんが、このくらい極端にEQしないとグラフに現れなかったので、止むを得ずこんな数値になっております。ご了承ください。
Pro-Q2のRTAメーターは以下の画像を参考に読んでください。
では、実際に各EQを比較して行きます。
Avid EQ III
ProToolsユーザーのド定番、標準のEQ IIIです。標準EQだからと言って手抜きもなく、正確にカットしてくれる優秀なEQですね。
こちらの画像の設定でRTAをかけたものが以下の画像です。
1つ目なので、比較もなにもあったものではないのですが、1kHzのカットはかなり正確なQでカットできている印象ですが18dBには切り足りていないですね、誤差もあるとは思いますが。
4kHzのカットとLPFが相互干渉しているのか、4kHz付近の山が崩れてしまっています。LPFも18dB/Octとして作用していない印象を受けます。
HPF/LPFはフィルターのかかりが結構なだらかなのかな、という印象を受けます。
Sonnox Oxford EQ
個人的になんにでも使うプラグイン代表のOxford EQです。UIが改善されて、高解像度ディスプレイでも見やすくなったのが嬉しい限りです。
余談ですが、SonnoxのEQでは、Qは左に回すと狭くなります。以前のYAMAHAのミキサーなんかも左にいくほどQが狭くなる仕様です。たまに、現行のYAMAHAのようにQの作用が逆のミキサーを使用すると戸惑ってしまったりします。
さて、上記画像でのRTA結果がこちらです。
1kHzあたりのQカーブが崩れています。逆に4kHz付近は綺麗なQでカットできている印象です。
LPFとの干渉が最小限に抑えられている、と考えて良さそうです。
Waves Q10
カットEQのロングセラーモデルです。Q=100までの正確なカット・ブーストが売りのEQですね。
細かい帯域内で、細めのQで数点カットしても、破綻しないEQという印象があるのですが、実際の測定結果を見て行きましょう。
HPF/LPFのスロープが設定出来なかったのですが、グラフを見る限り12dB/Octのようです。
表示よりもQが広いような印象を受けました。1kHzの溝の幅もそうですが、4kHz付近は結構広めに削れていますね。
また、GAINも1kHzは少し切れすぎで、4kHzは少し切れ足りないかな、という結果でした。カーブを見ていると、4kHzのQ=2が1kHzに干渉しすぎている気がします。そのわりには1kHzの溝の高音域側のカーブが綺麗すぎるのが悩ましいところです。
Fabfilter Pro-Q2
近年流行りのPro-Q2です。多機能な上にUIもわかりやすく、徐々に使用頻度が高まっています。
測定に使用しているのもPro-Q2なので、今回の中では有利かな、という感じですが、測定結果は以下の通りです。
まず、LPFの効き始めが非常に鋭角ですね。ここまでの他のEQでは、10kHzの段階からかなり落ちていましたが、8~9kHz付近への影響が非常に少ないLPFです。100Hz付近もよく見ると非常に鋭角的なカーブでフィルターがかかっています。
カットEQを見ていくと、ちょっとGAIN的に切れすぎな印象もうけますが、4kHz付近がQ=2に近い綺麗なカーブでカットできています、。逆に1kHz付近はカーブは綺麗なものの、少し切り足りない印象です。
McDSP FilterBank
FilterBankにはE606というコンフィギュレーションがあるのですが、Q幅があまり狭くできないので、F202とP606を組み合わせて使用しています。
また、P606のGAIN値の加減が-15dBだったので、-15dBで測定しています。
F202は結構好きでガンガン使用しているEQなので、測定結果が楽しみです。
F202のフィルターカーブ、さすがの一言ですね、今回はPEAKを設定せずにかなりなだらかに作用させましたが、概ねF202のUI通りのカーブで落ち込んでいっています。
P606でカットした付近も概ね良好ですが、1kHzの低域側の山があまり綺麗に出ていないのが気になります。どちらかというと広めのQでカットするのに向いたEQと言うことができるのではないでしょうか。
3行でまとめると
- カットには癖のないEQを!
- 試して見たら意外と個性があった!
- 実際には耳を使ってMIXを!
最後に
測定も簡易的なもので、よく使うEQプラグインを比較して見ました。
どれを使うか、感覚に頼っていたのですが、こうして並べてみると意外と違うものですね、今回の中ではPro-Q2とFilterBankが綺麗に切れた印象でしたが、どれも使いやすいEQで大変オススメです。
EQ選定に迷っている方は普段使いのEQを測定してみたりするのも面白いかも知れません。活かせそうなことがあれば参考にしてみてください。
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