DAWでの作業ではMIX作業を行うためのミックスウィンドウと、波形編集やロケーティングに使用する編集ウィンドウの2つの画面を行ったり来たりしながら行うことが多いと思います。
その際には、ショートカットキー(ProToolsでは⌘+Shift+- or ⌘+=)などで表示ウィンドウの切り替えを行うのですが、いちいち切り替えを行うのが不便なのと、編集ウィンドウの波形とミックスウィンドウを同時に確認したい時などには不便に感じることもあると思います。
さらに高解像度のプラグインを複数同時に開いたり(ProToolsではShift+クリック)すると、一枚のディスプレイでは作業領域が狭く、作業に支障をきたすことがあります。
そんな時に拡張ディスプレイがあれば、編集ウィンドウとミックスウィンドウを別々のディスプレイに表示されて快適に作業を行うことが可能になります。
今回は拡張ディスプレイを使用するメリットと、DAWユーザー向けにデュアルディスプレイ環境の組み方をご紹介していきます。
目次
デュアルディスプレイとは
デュアルディスプレイとは一台のコンピューターに2台のディスプレイを接続することを指します。
ディスプレイミラーリングでは同じ画面を双方に表示させて、講演会などの資料をPowerPointなどで読み進めるために使用しますが、DAWではミラーリングではなく表示領域の拡大に使用します。
表示領域が単純に2倍になることで、前述のとおりミックスウィンドウと編集ウィンドウを同時に表示されることが可能になり、快適性が向上します。
デュアルディスプレイの設定方法
MacOSではThunderboltやHDMI端子などにディスプレイが接続されると自動的に認識するので、[システム環境設定]から[ディスプレイ]を選択して設定を行うだけで使用可能です。
[ディスプレイをミラーリング]のチェックを外し、配置タブから拡張ディスプレイの配置を行います。ディスプレイの絵をドラッグするだけで簡単に配置を行うことができます。メインのディスプレイと拡張ディスプレイの解像度が違う場合には、高い方を下げて解像度を合わせることも可能です。
Windows環境でのマルチモニター設定は[設定]→[システム]→[ディスプレイ]から行うことが出来ます。出来ることはMacOSと同じで、それぞれのモニターの解像度設定と、配置をここで決めることができます。
デュアルディスプレイを縦に組むメリット
私はデュアルディスプレイを縦に組んで使用しています。意味もなく縦に並べている訳ではなく、DAWを使用する上で便利な要素が縦デュアルには多くあるという確たる理由があるからです。
ここからは、デュアルディスプレイを縦に組むメリットについてご紹介していきます。
デスクのスペース節約
デスク上のスペースは有限です。多くの場合DAW用デスクにはモニタースピーカーが2台置かれていると思うのですが、机の幅いっぱい位の間隔で置くことがおおいのではないかと思います。
一般的にディスプレイは2台のモニタースピーカーの間に置くことになりますが、ディスプレイを2台横に並べると、単純に横幅が2倍になります。もともとPC用のディスプレイは横長のものが主流で、ただでさえ長い横幅が2倍になってしまうためにデスクのスペースを圧迫してしまいます。
一方、縦方向にデュアルディスプレイを組む場合、デスクの横幅は長い方のディスプレイ分しか占有しません。ここが大きなメリットです。
また、ディスプレイをモニターアームで卓上に浮かせて配置すれば、デスクのスペースを更に有効活用することが出来ます。ノートPCを使用してDAWを使用する場合には、使わないときに浮いたディスプレイの下に収納することも出来ます。
私の環境ではストレージ類やThunderbolt-USB変換ドッキングステーションなどはデスクの下に格納していますが、そのように使用するのが難しい場合にはディスプレイ下のスペースを有効に利用することも出来ます。
センターポジションを取りやすい
ステレオ音場で音楽を聴くときにベストのポジションは2台のスピーカーの中央です。DAWでのモニタリングならなおさら中央で聴くことは重要です。
縦のデュアルディスプレイでは、キーボードのセンター、メインディスプレイのセンター、拡張ディスプレイのセンターが全て揃うので、リスニングポイントに気を使う必要がありません。自然にセンターを取れます。
ノートPCを使用している場合、横配置ではキーボードのセンターが取れずに操作が面倒になりますが、縦配置であれば全てのセンターが合っているため、不便に感じることもありません。
他の項目にも関わってくることですが、作業を行っている間ずっとセンターポジションをキープ出来ることは大きなメリットになります。
ノートPCを使って横向きにデュアルディスプレイを組むと、キーボードのセンターとモニタースピーカーのセンターが合わず、操作中のモニタリングにずれが生じます。センターでの操作をするために外付けキーボードを使用する手もありますが、完全に本末転倒になってしまいます。
視点の移動が楽
これに関しては個人差もあるかも知れませんが、人間細かいものを注視するときには目だけでなく首から動きます。2つのディスプレイを見比べながら作業を行うDAWでは頻繁に細かいものを注視する視点を移動することになり、横方向に組むと首に負担がかかります。
縦方向であれば、余程画面に寄っていない限りは顎を軽くあげるだけで拡張ディスプレイに視点を移すことが可能で、首への負担は軽くなります。
また、頭部の両側に耳が配置されている以上、横に視点を移動している間はセンターポジションでのモニターが行えなくなる点も問題です。縦方向であれば、視点の移動中も常にセンターポジションでモニタリングを行うことが可能です。
作業領域の拡大
もちろんこれがメインの目的になります。メインディスプレイでバーチャルインストゥルメントを開きながら、サブディスプレイでMIDIエディタを開いたり、サブディスプレイに編集ウィンドウを常時開きながらミキサーとプラグインの操作をしたり、オートメーションを書いたりと、画面の表示領域が増えると作業がスピーディーに進みます。
ディスプレイ1枚のイメージがこちらです。
プラグイン自体のインターフェースが大きくて、閉じたり開いたりを繰り返さないとMIDIウィンドウが操作できません。
プラグインウィンドウで音色をエディットしながらMIDIエディターでノートを入力して行くには作業領域の不足を感じます。MIDIエディタ用にディスプレイ領域を確保するためにはバーチャルインストゥルメントのウィンドウをを一旦閉じるしかありません。
この状況をデュアルディスプレイ化すると以下のようになります。
↑こっちが上ディスプレイ、他のトラックやロケーションを確認する余裕もあります。
↑こっちが下ディスプレイ。全画面にMIDIエディタを表示して快適に作業を行うことが出来ます。人に寄ってはプラグインウィンドウと逆の方が作業しやすい場合もあると思いますが、どちらの画面になにを表示させるかも簡単に切り替えられます。
余談中の余談ですが、私はProToolsの起動中には[システム使用状況]ウィンドウを常に表示してCPUの動作状況を確認しています。また、MIX作業でUADプラグインを使用する際にはUAD Meterも合わせて表示してDSP使用状況をモニタリングしています。こうすることで、動作が怪しくなる前にフリーズやコミットなどを行い安定動作をさせることが可能です。
個人的には細かい作業をする画面は下、確認メインの画面は上と振り分けて使用しています。
バーチャルインストゥルメントに限ったことではなく、コンプレッサーを下画面で開きつつ、上画面でトラックの音量が大きくなるポイントにロケーティングする際や、ダブリングトラックのピッチ補正を行う際に2つのウィンドウを並べながらロケーティングもしたい際など色々な作業に応用が可能です。
これらは別に縦に組まなくても可能なことではあるのですが、前述のとおりセンターでモニタリングを行いつつ、視点の移動を最小限にするには縦にデュアルディスプレイを組んだ方が快適です。
縦のデュアルディスプレイ環境に必要なもの
ここまで縦に組むデュアルディスプレイのメリットについて解説を行ってきました。いかがでしょう。縦デュアルのメリットは伝わったでしょうか。
ここからは実際にデュアルディスプレイ環境を構築するために必要なものと選び方について解説していきます。
ディスプレイ本体
拡張用のディスプレイ本体を選ぶ際にはディスプレイサイズ、解像度、接続端子、VESAマウントの可否と重量について確実に確認を行います。その他、映像を観るのにも使用する場合やゲーム用のディスプレイも兼ねる場合には同時発色数やリフレッシュレートも重要な項目です。
ディスプレイサイズ
DAW用のデスクにモニタースピーカーが置いてある場合、ディスプレイのサイズはその間に収まる必要があります。デスクの端ギリギリにモニタースピーカーを配置するのも危険なので、少々のゆとりを持って選びたいところです。
ディスプレイのサイズはインチ表記で対角線の長さを表します。同じ縦横比のディスプレイの場合、16インチと32インチでは面積は4倍になります。
ディスプレイ解像度
画面解像度とは、画面に表示される画素数を指します。横の画素数*縦の画素数で表示されていることが多く、1920*1080などと表記されています。4Kディスプレイとは一般的に横の画素数が3840(≒4000=4K)であるディスプレイのことを指します。
ディスプレイサイズが小さい場合には、あまり高解像度のモニターを用意しても画面内の文字などの大きさが読み取れないレベルで小さくなってしまい、解像度を下げて使用するハメになったりします。実際に目の当たりにしたことがあります。
私の環境では、27インチでWQHD解像度(2560*1440)のモニターを使用していますが、表示サイズに問題を感じたことはありません。
接続端子
今使用しているコンピューターや搭載されているグラフィックボードの外部映像出力端子によって接続可能なディスプレイが異なります。
現行品ではThunderboltやDisplay Port、HDMIなどのデジタル出力端子が主流ですが、一部VGAなどのアナログ出力端子が備わっているものもあります。映像出力端子によっては変換アダプタなどが別途必要になります。
VESAマウンドの可否と重量
VESAマウントとは、ディスプレイの裏側にモニタースタンドやモニターアームを取り付けるための規格でネジ穴の間隔について定義されています。PC用のVESAで最も一般的な使用は100mm*100mmで、ディスプレイとモニタースタンドなどの両方がVESA規格に準拠していれば取り付けが可能です。
また、モニターアームを使用してディスプレイを浮かせて設置する場合には、モニターアームが支えられる重量に限りがあります。ディスプレイの重量も忘れずに確認しておきましょう
オススメのディスプレイ
小さいディスプレイだと作業スペースをあまり確保出来ず、逆に大きすぎるとモニタースピーカーと干渉して設置が困難になる、なんともバランスが難しいところではあります。
一般的なデスクのサイズは横幅100cmから120cm程度で、モニタースピーカーの設置にデスクの両端から25cmずつ余裕を持たせることを考えると、適切なディスプレイサイズは横幅が45cm〜65cm程度のものになるでしょう。対角表記のディスプレイサイズに当てはめるとおおよそ19インチ〜27インチサイズ程度でしょうか。
解像度に関しては高いものを下げて使用することは可能ですが上げることは出来ないので、後悔しないものを選びたいところです。
前述の通り私の環境では27インチのWQHD(2560*1440)解像度なので、本記事の画像を参考にしていただければと思います。MacBookProは15インチです。個人的には24インチ位まではフルHD(1920*1080)でも問題ないと思いますが、27インチ以上のディスプレイではWQHD以上の解像度のものの方が使いやすいと思います。
チラつき防止機能なども長時間集中して画面を見ることが多いのであると助かりますね。
接続端子については、それぞれの環境によって必要な端子が変わってくるのでご自身の環境をご確認ください。最近のディスプレイはHDMIとDP両方の端子を備えているものが多いです。また、モニターアームを使用する場合はVESAは不可欠です。
モニターアーム
ディスプレイにはディスプレイスタンドが標準で取りつけられていますが、縦にデュアルディスプレイを組む場合には、付属のスタンドでは高さが足りないため、モニタースタンドの下に嵩上げ用の別のスタンドを挟むか、モニターアームを使って浮かせて設置することになります。
スタンドを設置すると、モニター下のスペースがあまり有効に使えなかったり、ディスプレイが不安定な状態になりやすいので、ここではモニターアームをオススメします。
モニターアームには色々な種類がありますが、ディスプレイの移動をあまりせずに使用することが多いDAW環境では強度の面からも稼働部分が少ないストレートタイプの物がオススメです。
モニターアームを選ぶ際にはデスクとの固定方法もしっかりと調べておきましょう。デスクの端からベース部分のスペースを確保出来ないと私のようにデスクを加工するハメになります。
オススメのモニターアーム
DAW用のデスクはスペースの制約が大きく、また、可能な限りディスプレイ下のスペースを有効に活用するためにも出来るだけデスクの奥の方に浮かせて配置可能なモニターアームが望ましいです。
私の環境でもそうなのですがデスクの裏側にはスペースがない場合が多いので、可能な限り奥行きが短く調整可能なストレートタイプのアームを使用するのがよいでしょう。
接続用のケーブル
PC本体と拡張ディスプレイ接続にはケーブルが必要です。接続端子によって必要なケーブルが変わって来るので環境に合ったものを選びましょう。
また、モニターアームを使用する場合には、ケーブルを綺麗にまとめるためにアームに沿ってケーブルをはわせます。そのため、PC本体とディスプレイまでの直線距離分の長さでは全然足りない、ということになりかねないので注意が必要です。
また、ディスプレイに付属の電源ケーブルも場合によっては電源タップなどから直接届かない場合があります。IECイントレットを備えたディスプレイであればケーブルのみを入れ替えることも可能ですが、専用アダプターを使用するモデルのディスプレイの場合には電源を延長する必要が出てくる可能性があります。
☆まとめ☆
- 作業スペースを広げて効率アップ!
- 縦デュアルはセンターをキープ可能!
- 浮かせて配置することで下のスペースを有効利用!
最後に
今回は縦型デュアルディスプレイを組んでDTMでの作業効率をアップさせる方法についてご紹介してきました。
いかがだったでしょうか。この便利さが伝わっていれば幸いです。
私も長いこと縦型デュアルディスプレイ環境で作業をしていますが、完全にこの環境に慣れてしまっているのでシングルディスプレイに戻れる気がしません。人間は道具や環境によって便利さに慣れてしまうと、それらが無い状態を非常に不便に感じると言いますが、私の場合もまさにその通りになっています。
現在シングルディスプレイでウィンドウ切り替えをしながら作業をしている方は是非、この縦型デュアルディスプレイ環境を試してみてください!
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