drums3kai

Microphone

現役エンジニアが教える、ドラム録音にオススメのマイク〜第3回〜


ドラムの録音に使用するたくさんのマイクの、選定基準や、立てる位置・角度についての疑問を解消して行こうという企画の第3回です。

第1回はバスドラム・スネア、第2回はハイハット・タムタムの録音に適したオススメのマイクを紹介してまいりましたが、今回はシンバル類やドラムセット全体を録音するオーバーヘッドやアンビエントマイクに使用するマイクをご紹介していきます。

第1回、第2回記事はこちらをご覧ください。

当記事に直接いらっしゃった方はドラムセット全体の録音に関する考え方なども解説しているので、まず、上記リンクから第1回、第2回をご覧になることをオススメいたします。



オーバーヘッドにオススメのマイク

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オーバーヘッドとは読んで字のごとく、頭上からドラムセット全体を録音するためにセットするマイクロフォンです。立てる場所をしっかりと吟味することで、バスドラムを除くドラムセット全体がバランスよく録音できたりします。トップマイクやシンバルトップなんて言い方もします(本記事ではオーバーヘッドで統一します)。

このオーバーヘッドですが、他のキットに向ける近接集音用のオンマイクとは逆のオフマイクで集音を行います。オフマイクでは、サウンドの狙いをしっかりと決めてからセッティングしないと、全体のバランスが取れなくなる恐れがあるので注意しましょう。

まず、オーバーヘッドに使用するマイクの高さが非常に重要です。

低めにセッティングした場合には、相対的にマイクからシンバルが近く、マイクから皮モノが遠くなります。近くのシンバルに対してマイクプリのレベルを設定すると、距離減衰の影響で他のキットはあまり被らず、シンバルのためのオーバーヘッドマイク、という要素が強くなります。

この状態で録音されたオーバーヘッドは、他のキットのオンマイクと合わせてシンバルの音量をコントロールするトラックとして使用します。各キットの音や、シンバルの音がMIXの中でも前に出しやすいので、派手なドラムを作るのに向いています。

逆に高めにセッティングした場合には、相対的にマイクからシンバルと皮モノの距離が近くなります。低く構えた時と比べてマイクプリのレベルも上がり、皮モノもしっかりと集音されます。この状態では、ドラムセット全体を捉えるオーバーヘッドマイク、という要素が強くなります。

こちらのオーバーヘッドでは、後述のアンビエントマイクと合わせて、オーバーヘッド主体でMIXを組み上げ、各キットのオンマイクは定位感のコントロールに使用されます。バランスよく集音できていることが前提ですが、キット全体のまとまりがあるので、実際に耳で聴いているような自然なサウンドのドラムに仕上がります。

次にマイクの本数について考えて行きます。

ドラムセット全体のサウンドをキャプチャーする目的であれば1本でも構わないかも知れませんが、基本的にはステレオ感を出すために2本以上立てることが多いです。また、シンバル類のセッティングによってはライドシンバル用に別のマイクを用意することもあります。

1本のマイクのみで全体を集音する場合、ドラマーの背後からドラマー越しに集音することが多いように思います。こうすることで、ドラムを演奏する人間とそれを録る人間が共通の感覚を元に音づくりができます。

2本のマイクロフォンでステレオ感を出す場合に注意したいのが、被ってきた音の定位もオーバーヘッドのトラックに引っ張られることです。

多くの場合、スネアドラムはドラムセットに向かって右側に寄っているかと思います。しかし、2MIX内のスネアはセンター定位が基本です。見た目に左右対称のマイキングをして全体集音をすると、スネアの定位は右側(R側)に引っ張られます。後のEQで逃れることもできますが、せっかくの全体集音が無駄になってしまいます。

私の手法は、全体のシンバルの配置を録りこぼさないような水平位置に2本のマイクロフォンを設置し、2本のマイクがスネアと等距離になるように高さを設定する方法です。スネアの単音を貰って定位の確認を耳と目でも行います。シンバルの枚数が多かったりして等距離にセッティングすることが難しい場合には、割り切ってシンバル専用のマイクとして使用することが多いです。

また、フロアタム上方にシンバル群がありシンバル同士の干渉で下の方のシンバルが拾えない場合などには、無指向に設定したコンデンサーマイクをシンバルの間に突っ込んだりもします。これも経験則のケースバイケースですね。

 

AKG
C414 XLII


AKGのコンデンサーマイクロフォンC414はドラムだけでなく、アコースティック楽器全般、菅弦楽器、ボーカル、から楽器用アンプの集音までなんでもこなせるスーパーマイクです。

中でも高域の情報量が豊富で、倍音を綺麗に録ってきてくれるので、ドラムのオーバーヘッドマイクにも非常に適しています。

高級機の分類に入るコンデンサーマイクですが、実際に使用すると使いやすさに気付く系のマイクとなっています。

まずは単一指向性モードのf特です。

c414_wc_f

ほとんど変わらないですが広い単一指向性(ワイドカーディオイド)のグラフです。

c414_od_f

最後、こちらが無指向性です。その他の指向性についてはドラム録音では出番が少ないので割愛しますが、指向性を切り替えることによってマイクのキャラクターも少しですが変わってきます。

どのモードでも1kHzより上のコンコンした部分が若干落ちていて、高域がなだらかに上がっています。

見た目の平べったさと、ワイドカーディオイドのおかげで、ドラムセット全体の録音時に心理的な安心感をもたらしてくれるマイクです。実際見た目の平べったさは指向性に与える影響はないのですが。ショックマウントが付属してくるので、高い位置に設置するオーバーヘッドでもマイクスタンドの振動ノイズの影響を心配する必要がないのも良い点です。

高域のピークがシンバルのきらびやかさをキャプチャーするのに非常に適していて、自然に派手めなシンバル音を拾ってくれます。また、1kHz以下もほぼフラットに伸びてくれているので、ドラムセット全体を録るオーバーヘッドとしても非常に優秀なマイクロフォンです。

 

AKG
C480B COMB ULS/61


こちらもAKGのコンデンサーマイクC480です。ハイハットの項でもご紹介させていただきましたがオーバーヘッドに使用しても、とても優秀なマイクロフォンです。

c480_f

C451やC414に比べてフラットな特性で、色付けなくドラム全体を集音可能なため自然なサウンドを得るのに適しています。シンバルを近めから集音しても、高域に色付けがないため、ピークが不快になることもなく使用できます。

 

SHURE
SM57


基本的にオフマイクにはコンデンサーマイクが有利なのですが、SM57、いけちゃいます。ハイハットの項でもご紹介しましたが、オフ気味でもしっかりと集音可能です。

sm57_f

f特的にもちょっと全体のキャプチャーを狙うのは厳しい部分もありますが、シンバル用として使用するには問題のない性能です。

5kHzあたりのピークを均して、ハイエンドを足してやるようなEQ処理をすることで、かなりガッツのあるシンバルが出来上がります。慣れるまではこのあたりから攻めた方がいいのかも知れません。

例によって、狙いはしっかりと持ってから使うことを推奨いたします。



アンビエントにオススメのマイク

drums5

アンビエントとは、直訳すると環境・雰囲気となりますが、おそらく日本語にうまく当てはまる言葉がないためでしょう。どちらかというと、残響とか部屋鳴りを集音するために、ドラムセットから離して立てるマイクのことを指します。天然のリバーブと考えるとわかりやすいかも知れません。

当然オフマイクになるので、定位感はぼやっとし、個々のキットにフォーカスすることはできませんが、その場所で実際に聞こえているサウンドを拾うことができるマイクです。また、オンマイクよりもドラムセットの一体感が録れるセッティングになっています。

使用するスタジオの部屋鳴りがあまりにデッドだと、ただのオフマイクになってしまうので注意が必要です。逆に部屋が鳴りすぎている場合にはワンワンになります。

建て方は、ドラムセットの前方、3m〜5m位の位置、オーバーヘッドよりも高い地点に設置することが多く、エンジニアによってモノラルだったりステレオだったりします。ざっくりしすぎ、というツッコミもごもっともですが、スタジオの広さや天井の高さによるところが大きいのでこのような表現になってしまっております。

実際には、音を聴きながら場所を探していくことが多いです。スタジオ常駐の慣れたエンジニアさんは、そのスタジオのいいポイント、みたいなものを知っているので、いきなりピンポイントに立てに行ったりしてますね。

マイクの本数について、空気感という意味ではステレオにした方が広がりが出るのですが、その場で鳴っているドラムの臨場感、パワー感みたいなものを表したい場合にはモノラルの方が適しています。

MIXの手法にもよるのですが、このアンビエントマイクで集音したアンビエンストラックを1176コンプのスイッチ複数押しモードなどでぐちゃぐちゃに潰すこともあります。そうすることで、ドラム全体と残響成分を含めて歪みの中で音が混ざって一体感のあるドラムが出来上がります。この場合、アンビエントはうっすら足す程度です。

逆に、綺麗に録ったアンビエンスとオーバーヘッドを主体にMIXを組み立て、オンマイクは定位感を足すだけ、という手法もあります。これに関しては色々とやってみて目的にあったものを見つけて行くのがよいでしょう。手段は持っていて損になることはありません。

また、ドラム録音に置けるアンビエントマイクに関しては、MIXでの使い方が非常に幅広く、目指すサウンドもまた様々です。そのため、確実にこれ、といったオススメマイクは存在しません。オフマイクになるので、ラージダイアフラムのコンデンサマイクが好まれる傾向にありますが、潰して使う前提の場合ダイナミックマイクの方がうまくいったりしちゃいます。

以下、ご参考までにどうぞ。

 

AKG
C414 XLII


全帯域満遍なく録れる上、高域が抜けてくるのでアンビエントマイクにも向いています。綺麗なサウンドでアンビエントを録りたい場合にはこちらがよいんじゃないでしょうか。

無指向性(全指向性、同じ意味です)にセッティングしてスタジオの天井近くに設置すると、本当にナチュラルに部屋全体のサウンドを拾ってきてくれます。なんでも、無指向性のマイクを使いこなせると一流エンジニアと言われるそうです。なかなかにハードルが高いですね。ちなみに、無指向性では近接効果は発生しません。

 

NEUMANN
U87Ai


ちょっと反則なような気もしますが、U87もアンビエントマイクによく使用されています。C414に比べると高域が落ち着いているので、素朴な(?)感じに全体が取れます。

u87_c_f

u87ai_omni_f

上が単一指向性で、下が無指向性のf特です。U87もボーカルマイクと言いながら、何にでも使われているマイクロフォンですね。ものすごく綺麗なグラフが特徴的です。

HPFの作用点が意外と高いのが悩ましいところですね。

 

SHURE
SM58-LCE


これも反則のような気がしますが、実体験で面白い録れ方をしたのであげてみます。

元々はブース内との交信用にブース側に常設で仕込んであったマイクなのですが、どうせマイクプリに立ち上がってるなら録っちゃおう、というところから始まったものです。決して鳴りが良い場所にセッティングされていたわけではないのですが、アンビエントマイクとして必要十分な活躍をしてくれました。

sm58_f

リバーブの送りにHPF/LPF入れるのと同じ感覚と言うんでしょうか、いい感じに上下が切れていて扱いやすい感じにまとまりました。

偶然の産物だと思うので、積極的に真似はしても責任は取れませんが、リハーサルスタジオでレコーディングをする際には無料レンタルである場合も多く、オススメできます。

余談ですが、最近のリハーサルスタジオはリハーサルの一発録り用に天井にコンデンサーマイクが仕込んであったりします。それをアンビに使ってしまうのも面白いんじゃなかと思います。



☆まとめ☆

  • シンバル狙いのオーバーヘッドは低く設置!
  • 全体狙いのオーバーヘッドは高く設置!
  • アンビは全体+響き感を得られる位置を探す!

 

最後に

さて、第3回まででドラムセットにマイクを立てて集音する、といった部分の紹介は終わりです。経験則によるものが大きいので、実際にやってみることが重要ですね。とくに、オーバーヘッドやアンビエントはほしいサウンドの狙いが無いと立てる位置や本数すら決められないので、事前にしっかりと打ち合わせたり考えたりすることが重要です。

さて、3回に渡ってお届けしてまいりました、ドラムのレコーディング時のマイクについての記事、皆様のお役に立てる内容だったでしょうか?

どうしても文章だけで全てをお伝えすることが難しいので、わかりづらい内容になってしまっていることかと思います。今回まででご紹介してきたマイクは私が現在も全て現場で使用しているマイクロフォンたちです。同じものを使い続けることで、サウンドの癖もインプットできますし、少しの異変にも気づけるようになります。

皆様も長く付き合える、お気に入りのマイクに出会えることを願っています。

次回は第4回として、ドラムレコーディングのおまけ編をお届けいたします。

 


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ZAL

 

 

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ZALのプロフィール

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お仕事:フリーランス音響エンジニア、
    作編曲家、ギタリスト、たまにDJ
    基本的に音楽関係なんでも屋さん


 趣味:最近もゲーム


いままで個人ブログの経験はなかったのですが、
プロの音響エンジニアならではの視点で、
解説やレビューをしていきます。


エレキギター内部の配線やパーツにも明るく、
内部配線やパーツの選定によって狙ったサウンドを
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