ギタリストの足元に転がって(?)いる金属製の箱、スイッチやツマミが付いてて、足で踏んだりする箱。踏むと音が変わったりします。
そうです、それこそがエフェクターと呼ばれる魔法の(?)箱です。この記事では、エフェクターをカテゴリーごとに分けて、それぞれの効果について簡単に説明して行きます。
一度に全カテゴリーをご紹介すると、膨大な量になってしまうので、今回はダイナミクス系・ピッチ系・フィルター系・残響系と呼ばれるエフェクターの4種に絞ってご紹介していきます。
歪み系・空間系エフェクターについては下記リンクをご参照ください。
目次
ダイナミクス系
ギターに限らず、音の強弱のことをダイナミクスと言います。曲の中で音の大きな部分と小さな部分の差が大きいことを『ダイナミックレンジが広い』、逆に差が小さいことを『ダイナミックレンジが狭い』ということもあります。
ダイナミクス系エフェクターとは、入力音のダイナミックレンジを広げたり、狭めたりするエフェクターのことを指します。
接続順は、特殊な効果を狙わない場合、エフェクトの先頭に繋ぐのが一般的です。
コンプレッサー(COMPRESSOR)
コンプレッサーとは、入力信号の強度がある一定の値を越えると、それ以上の信号を一定の割合で圧縮して、実際よりも小さい信号として出力するエフェクターです。
この境目となる値を閾値(しきいち)=Threshold(スレッショルド)と呼びます。閾値は漢字よりもひらがな表記(=しきい値)の方が一般的かも知れません。また、圧縮する割合のことをRatio(レシオ)と呼び、4:1のように表します。
ギターの出力信号強度は弦を弾いた瞬間が最大で、その後なだらかに減衰していきます。この弾いた瞬間の立ち上がりをAttack(アタック)、減衰はしているけど余韻が続いている間をSustain(サスティーン)、音が聞き取れなくなるところまで小さくなる時の落ち際をDecay(ディケイ)とそれぞれ呼びます。
コンプレッサーを使用し、アタックを圧縮した状態で全体の音量を上げることで、サスティーンが長く続く効果が得られたり、逆にアタックには作用させず、サスティーン部分を圧縮することで立ち上がりを強調したり、といったことが可能になります。
コントロールは出力信号の大きさを決めるLEVELツマミの他に、上記のThresholdとRatioをコントロールするものから、Attack、Sustainもコントロール可能なもの、感度をコントロールするツマミが1つのものなどいろいろあります。
主な使い方、使い所
クリーントーンの音の粒を揃えるために使用したり、クランチトーン時にアタックを強調するのに使用することが多いです。
逆に、深く歪んだサウンドでは、元々ダイナミクスが出辛いのであまり使用することはないです。
また、コンプレッサーを使用することで、音のツブが揃い、後段の空間系が綺麗にかかるメリットがあります。コンプレッサー、コーラス、ディレイをかけたクリーントーンのアルペジオはド定番の取り合わせの一つです。
ノイズゲート(NOISE GATE)
コンプレッサーとは逆に、しきい値以下の信号を減衰させることで、ダイナミックレンジを広げるエフェクターです。
ギターを弾いていない間にもアンプから出力されてしまうノイズを抑える効果などが得られます。
また、圧縮時の比率を設定可能なエキスパンダーというエフェクターもありますが、ギター用のエフェクターでは境界が曖昧なため、ノイズゲートの紹介に兼ねさせていただきます。
コントロール類はコンプレッサーと似ていて、Threshold、Decayやモード切り替えスイッチが備わったもの、減衰させる度合いが設定可能なものなどがあります。
主な使い方、使い所
一般的には読んで字の如く、ギターにつきまとう各種ノイズの対策に使用するエフェクターです。
ギターのノイズ取りのような消極的な使用方法以外では、ギターサウンドの余韻を不自然に切るような使用方法があります。ブリッジミュートを使用した高速リフなどには効果覿面で、音の立ち上がり部分以外をガツっと下げてくれます。
これにより、自然には絶対に得られないタイトなサウンドを作ることができます。
この場合、Thresholdを高く設定しすぎると、弾いているのにギターの音が出ない可能性があるので、注意が必要です。
ピッチ系
このカテゴリーのエフェクターは入力信号の音程を検出し、その音程を変化させるタイプのエフェクターです。
原音そのものの音程を変化させるものから、原音に音程を変化させたエフェクト音を付け加えるものなどがあります。
オクターバー(Octaver)
一般的には、入力音に1オクターブ下の音を付け加えて出力するエフェクターです。モデルによっては2オクターブ下の音や、オクターブ上の音を加えられるものもあります。
以前は歪んだ音の音程検出が苦手だったり、和音には対応していなかったりしたのですが、近年のモデルではどちらも問題なくこなせるものもあります。
また、エフェクト音に若干の歪みを付加できたりするモデルもあり、音の厚みを出すのに有効に作用します。
コントロールは原音の出力をコントロールするDRYなどのツマミと、オクターブ下の音量をコントロールするOCTなどで構成されます。
主な使い方、使い所
リードプレイなどの単音プレイ時にサウンドに厚みを出すために使用するのが一般的です。
また、低音弦でのリフプレイに使用することで、音程的にはバリトンギターと同じ音域を出すことができます。この状態でベースとユニゾンプレイをすると、3オクターブ合わさって壮大な厚みのある演奏となります。
ピッチシフター(Pitch Shifter)
入力音の音程を検知して、入力信号の音程を変化させて出力したり、音程を変化させた音を付加してハモリを生成してくれるエフェクターです。
ピッチシフト機能を使用することで、レギュラーチューニングのまま、ワンタッチで半音下げチューニングや全音下げチューニングなどで演奏することが可能となります。
ハーモニー生成については、2声ハーモニーのモデルが一般的ですが3声以上のモデルもあります。
主な使い方、使い所
ハーモニー生成エフェクターとして、ギター一本でツインリード的な使用方法をとるのが一般的ですが、クリーンサウンドでのアルペジオ時に使用しても面白い効果が得られます。
ピッチシフト機能については、前述の通り、チューニングの変更を行わず、出音のみチューニングを変更するなどの使用方法があります。ON/OFFが可能なため、転調時にピッチシフターをONにすることで、そのままの感触でプレイすることが可能になります。
この際、エレキギター本体から鳴っている音はピッチが変更されないので、箱物などの比較的音量が出るギターを使用して、かつアンプの音量を小さめにしていると若干の気持ち悪さを感じる点に注意が必要です。
ワーミー(Whammy)
ピッチシフターの一種ですが、使用方法が大きく異なるので、別に項目を設けました。
ワーミーはDigitech社の登録商標ですが、他社製マルチエフェクターなどにも似たような機能のプログラムが備わっていたりします。
入力音の音程を検知し、ペダルモードで選択した音程までの間をペダルを使用して、ほぼ無段階で音程変化させることが可能なエフェクターです。
主な使い方、使い所
いわゆる、飛び道具エフェクトです。トレモロアームはどんなに頑張っても2音位が構造的な限界ですが、ワーミーでは2オクターブアップや3オクターブダウン、なんてこともできたりします。
フィルター系
聞きなれないカテゴリー名が続きますが、今度はフィルター系です。
フィルター系とは、特定の周波数のみを通したり、または通さなかったりするエフェクター群です。
ワウ(Wah-Wah)
ワウとは、周波数可変のイコライザー、バンドパスフィルターを使用したエフェクターです。特定の帯域を強調し、それを動かすことで独特のワウワウという効果を得ることができます。「ワ」が高域が強調された踏み込んだ時の音、「ウ」が低域が強調されたペダルを戻した時の音です。
表面からはスイッチが見えないものが多いですが、ペダルの先端側にスイッチがあり、強くみ込むことでON/OFFを切り替えることができます。また、多くのワウペダルでは、ペダルの裏側に歯車が付いています。その歯車で内部のポットを回転させることで、ワウが作用する周波数帯域を動かし、ワウ効果を得るエフェクターです。
中には、赤外線を使用したものや、板バネが仕込まれていて、踏んでないときはペダルが一番上がった状態になり、自動的にOFFになるものもあります。
主な使い方、使い所
軽く歪んだクランチトーンでのカッティング時にリズムに合わせてパタパタ踏むことで、ワウワウというようなサウンド得るのによく使用します。
それ以外では、歪んだサウンドでギターをかき鳴らしている状態で、徐々に踏み込んでいくことや、リードギター時に発音に合わせて踏み込んだり、あえて途中で止めて中域が強調されたサウンドを得ることもできます。
Stone Cold Bush / Red Hot Chili PeppersではギタリストのJohn Fruscianteが一曲通して(サビ以外)ワウを踏み続けています。この曲に限らず、ワウの色々な用法を楽曲に取り込んでいるので、非常に参考になりますね。
オートワウ(Auto Wah)
ワウペダルで得られるワウ効果を、自動で行ってくれるエフェクターです。
テンポに追従するワウと、ピッキングの強さに追従するものがあります。後者のものを特にタッチワウと呼んだりもします。
人間の足では再現できない超高速ワウや、他のペダル系エフェクトと組み合わせたりと応用の幅は広いです。
主な使い方、使い所
タップテンポ搭載のも機種では、指定したテンポで自動的にワウを開閉してくれます。ワウペダルは踏み続けると意外と疲弊するので、楽をするために使用するのも悪くはないと思います。
また、リードプレイ時などに、タッチワウを使用することで、1音1音にジャストなタイミングでワウ効果が得られるのも大きなメリットです。
残響系
おなじみのやまびこ効果を得ることが可能なディレイや、残響音を付加できるリバーブが含まれるカテゴリーです。
ディレイは元々、テープレコーダーの録音ヘッドで録音したサウンドを再生ヘッドで再生する際の時間差を利用した大掛かりなエフェクトでした、リバーブに至っては一つの部屋で実際に残響音をマイクで拾うエフェクターでしたが、今ではすっかり小型化されています。
デジタルディレイ(DIGITAL DELAY)
デジタルディレイは、デジタル回路を使用して入力音を一時保存してから再生することでディレイ効果を得るエフェクターです。
後述のアナログディレイと比べて、音質的には原音に近く、シャープな音質が特徴となります。
コントロール類は、ディレイ音が鳴るタイミングを決めるDELAY TIMEやディレイ音の繰り返し回数を決定するFEEDBACK、ディレイ音の音量を決定するLEVELなどのツマミから構成されています。また、外部ペダルを使用したり、モードを切り替えることによって、4分音符のテンポでペダルを踏むとそのテンポを割り出し、設定したテンポで設定した音符分のディレイタイムを設定可能なタップテンポ機能を持ったものもあります。
主な使い方、使い所
リードプレイやクリーンサウンド、テンポに合わせた付点8分音符ディレイを使用した8部サウンドでのプレイ(出音は16分でプレイしたようになります)などに使うのがスタンダードです。
一部モデルでは、ディレイ音が鳴っている際にDELAY TIMEツマミを動かすことでディレイ音の音程が変化していったり、FEEDBACKを大きく設定してハウリング製造機のように使用するなど飛び道具的な使用方法も可能です。
アナログディレイ(ANALOG DELAY)
アナログディレイでは、BBDと呼ばれる回路を使用したディレイの総称です。
難しい話はICの専門家に任せますが、簡単に説明するとアナログ電子回路を使った音のバケツリレーを行うことでバケツリレーにかかった時間分のディレイ効果が得られる構造です。
サウンド面ではデジタルディレイに比べて落ち着いた、悪い言い方をすると、回路構成により高域が減衰した温かみのあるサウンドが特徴です。
主な使い方、使い所
デジタルディレイと同様に使用することが可能ですが、サウンドが変化することを積極的に使用していくのがよいでしょう。
リードプレイではデジタルディレイよりも温かみのあるディレイが得られるので、音像が自動的に原音の後ろにいってくれるので、ディレイがうるさく感じることも少ないです。
デジタルリバーブ(DIGITAL REVERB)
原理としては、短く密度の高いディレイをかけて、そのディレイ音の分布で各残響特性をシミュレートしていく構造です。
コントロールはリバーブタイプを設定するTYPEなどのツマミ、残響音が継続する長さを設定するTIME、残響音の音量を決めるLEVELなどが一般的です。サウンドの明るさを補正するためのTONEが備わっているモデルもあります。
主な使い方、使い所
リードプレイ時にディレイと共にONする使用法や、常時薄くかけておく使用法などが一般的です。
個人的にはギターアンプからの出音にリバーブ音は必要ないと思っていますが、会場のPAエンジニアとの意思疎通の面なども考えるとアンプの段階でかけておくのも悪くないと感じています。
ちなみに、ギターアンプ内臓のリバーブは一部のデジタルモデリングものをのぞいてアナログリバーブです。構造としては、バネの入ったリバーブボックスからのバネ鳴りを原音に付加するといった単純なものです。これが本来のスプリングリバーブです。ギターアンプのREVERBツマミを上げた状態でアンプ本体を小突いてやると、バネの音だけが出力されます。
3行でまとめると
- ダイナミクス系やフィルター系でプレイに幅を!
- ピッチ系でハモリリードプレイを!
- 残響系で空気感プラス!
最後に
今回は、ダイナミクス系・ピッチ系・フィルター系・残響系のエフェクターを駆け足で紹介してきました。
ダイナミクス系は慣れないと効果が解りづらいのですが、使い慣れてくると、その微妙な効果がクセになるエフェクターが多いです。効果が解りづらいからといって、コンプレッサーをかけすぎるとノイズまみれの抜けないサウンドになりがちなので注意しましょう。
残響系も気持ちいいのですが、これらもかけすぎに注意です。ワウやワーミーなどのペダル系エフェクトも使ってみると面白いですよ。
歪み系・空間系エフェクターについては以下の記事をご覧ください。
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