「あなたのエレキギターのピックアップ、高さ調整されていますか?」
ギタリストの頭を悩ませる音作りをギター本体を調整することで解決しようという試み、エレキギターの調整〜ピックアップ編〜です。
エレキギター本体の調整である程度サウンドの傾向を決められれば、どんなギターアンプを使用したときも自分好みの方向性で音作りを行うことができるメリットがあります。
中でもピックアップの調整はエレキギターの出力やサウンドにかなり大きな影響を与えます。必要な工具もドライバー1本でお手軽に調整可能です。端から目盛りが刻まれている定規もあると便利です。
弦とピックアップを近づければ、ピックアップからの出力が上がります。サウンドの傾向としては輪郭のしっかりとしたブライトなトーンになります。逆に遠ざけると、出力は下がり、ウォームなトーンになります。
ピックアップは磁石、ギター弦は磁石に反応する金属なので、ピックアップと弦を近づけすぎると磁力により弦がピックアップに吸い寄せられ、正常なトーンで出力できなくなるため注意が必要です。特に高出力なシングルコイルでは、コイル自体の磁力が強いためにシビアに調整する必要があります。
また、磁力の干渉を受けなくても、弦振動で弦がピックアップに当たってしまうようなセッティングは避けましょう。
逆に遠ざけすぎると、ピックアップの高さ調整ネジが完全に抜けてしまったり、ピックアップキャビティーにピックアップが触れてしまったりします。よほど遠ざけるセッティングにしない限り陥らないですが、こちらにも注意しましょう。
※当ブログでは、本文の内容を含むギター調整などに関するトラブルに対して一切の責任を負うことができかねます。実践する際には自己責任でお願いいたします。
目次
弦とピックアップの距離の基準
ストラトキャスターなどのシングルコイルピックアップ搭載ギターの場合、最終フレットを押さえた時に弦とリアピックアップのポールピースの感覚が1弦側で1.6mm〜2.8mm位、6弦側で2.0mm〜3.2mm位が大体の基準になっています。
レスポールなどのハムバッカーピックアップ搭載ギターの場合、最終フレットを押さえた時に弦とリアピックアップのポールピースの感覚が1弦側で1.4mm〜2.4mm位、6弦側で1.6mm〜2.6mm位がおおまかな基準になっています。
1mm程度の幅の中で調整を行なっていくのですが、この1mmがギターサウンドにとって、とてつもなく大きな影響力を持っています。
ちなみに、身近なところでは10円玉の厚みが約1.5mm、500円玉で約1.8mmです。
また、世の中にはString Action Rulerという便利なアイテムもあります。ピックアップの高さ調整だけでなく、弦高調整などにも役にたちます。
シングルコイルピックアップはポールピース自体が磁石になっているため、弦とある程度感覚を開けてセッティングを行いますが、ハムバッカーピックアップでは、ポールピースそのものは磁石ではなく、底面に磁石が張り付いている構造のため、より弦に近づけたセッティングが可能です。
アクティブタイプのピックアップは本体の磁力が非常に弱いため、パッシブタイプのピックアップよりも弦に近づけたセッティングを行うことが可能です。EMGのハムバッカーなどは弦により近づけることで大出力と独特のコンプ感を得ることが可能です。
ピックアップの高さ調整を行う前に
ピックアップは弦の振動を拾う構造であるために、高さ調整では弦との間隔を調整します。
そのため、ピックアップの高さを調整する前に、弦高調整、ネック調整、トレモロ調整、ブリッジ調整など、弦高や生音のサウンドが変わる可能性のある調整を先に行ってからでないと正確に調整することができません。
それらの調整を先に行ってからピックアップの高さを調整しましょう。
あと、大切なことですが、作業前には必ず弦を張り替えて新しい弦でピックアップの調整をしましょう。古い弦では正確な調整を行うことができません。
ピックアップの高さ調整の方法
実際にピックアップの高さを調整する前に現在の最終フレット押弦時の各ピックアップと弦の距離を測って、メモを取っておきます。これを怠ると元の状態に復帰できなくなってしまうので注意しましょう。
このメモがあれば、調整をミスって気に入らないサウンドになってしまった際に元のサウンドに戻すことが可能です。
ちなみに、ピックアップの高さは上の画像でドライバーが当たっているネジを回すことで調整可能です。ネジを締める方向=時計回りに回すとピックアップが高く、ネジを緩める方向=反時計回りに回すとピックアップが低くなります。
ギブソンのギターでは高さ調整ネジはマイナスドライバーで回すようになっています。実はこのギブソンのエスカッションネジはピックなんかでも簡単に回ってしまったりします。
リアピックアップの高さ調整
メモを取り終わったら、リアピックアップから高さを調整して行きます。現代のエレキギターサウンドでは、リアピックアップを使用したサウンドの使用頻度が高いため、ここではリアピックアップから調整を開始しますが、JAZZギターなどフロントピックアップを多用するプレイヤーの場合はフロントピックアップから調整した方が良い結果に繋がる場合もあります。
ピックアップセレクターでリアピックアップを選択し、ヘッドホンやギターアンプなどからクリーントーンを出しながら、前項の基準値に一旦合わせます。この状態から、色々なサウンドを確かめながら好みの位置を探していきます。
弦に近づける方向に調整する場合、前述の磁力による影響に気をつけましょう。具体的にはサスティーンが短くなったり、音程が正確に出なかったり、音程や音自体が揺らいだりする場合、弦が磁力の影響を受けています。
ポールピースの高さ調整
ハムバッカータイプでポールピースの高さが調整できるピックアップが搭載されている場合、ここから各弦ごとの音量バランスを取っていきます。クリーントーンで各弦がフラットになる状態に調整するのもよいですし、指板のRに沿わせたり、スタッガードポールピースのように、3、4弦を高めに設定するなど色々試して気持ちいいところを見つけましょう。
私は、現在ポールピースは見た目でフラットな状態のまま使用しています。シングルコイルでもフラットポールピースのサウンドの方が低音弦の音が前に出てくるため、好みだったりします。
これでリアピックアップの高さ調整は終了です。
フロントピックアップの高さ調整
続いてフロントピックアップの高さ調整に入ります。
フロントピックアップもリアピックアップ同様、あらかじめ基準値位にざっくりと調整をしておきます。
コンプレッサーのかかっていないクリーントーンで音を出しながら、ピックアップセレクターでリアピックアップとフロントピックアップを切り替えた際に、音量が変わらずに、音質のみが変化するポイントに調整します。
結果としてピックアップの高さはリアよりも大分低くなっているのではないでしょうか。
フロントピックアップはリアピックアップに比べて弦振動の中点に近いため、弦の振幅が大きい場所で音を拾っています。振幅=音量が大きい地点でピックアップしているために、音量が大きく拾えるので、結果としてリアピックアップよりも低い状態にセッティングがなされるはずです。
SSH配列のギターや、別シリーズのピックアップが混在してマウントされているなど、一部のギターではこの法則が当てはまらない場合もありますが、ほとんどのギターで当てはまります。
フロントピックアップも色々なサウンドを出しながら微調整していきましょう。ウォームさを強調するため、若干低くセッティングをしたり、逆にソロ専用としてパワーを稼ぐため若干高めに設定したり、セッティングも様々です。
2ピックアップのギターで、ハーフトーンを使用する場合は、ハーフトーンのサウンドも確認して調整していきましょう。
また、可動式ポールピースのピックアップでは各ポールピースの高さも調整しましょう。
センターピックアップの高さ調整
3ピックアップのギターの場合、ここからセンターピックアップを調整していきます。
クリーントーンでフロント、リアのピックアップと切り替えながら音量合わせを行うと、多くの場合、リアとフロントの中間くらいの高さになるのではないでしょうか。
センターピックアップの調整はプレイヤーの個性が一番目立つところです。ハーフトーンが一番綺麗に出る高さに調整する方もいれば、ピッキングの邪魔にならないように下げ切って使用する方もいます。
あまり高い位置に調整しすぎると、磁力の影響を受けやすくなるだけでなく、弾く時にピックが引っかかってしまったり、フロント+センターのハーフトーンとリア+センターのハーフトーンの差があまり出なくなってしまったりします。
ちなみに私はセンターピックアップを単体で使用することはなく、ハーフトーン時の補助ピックアップと割り切って、かなり低めにセッティングしています。それでも弾いている時にピックアップがガツガツ当たっていますが、仕方のないことだと割り切っています。
全てのピックアップの高さが決まったら、それぞれ最終フレット押弦時の弦との間隔をメモしておきます。このメモがあれば、再調整をする際や、ピックアップ交換の際、弦高を調整した際などに役にたちます。
ダイレクトマウントピックアップの高さ調整方法
ピックアップがダイレクトマウントされているエレキギターは、エスカッションマウントや、ピックガードマウントと比べて、ピックアップ自体が不要な振動をしないため、芯のあるサウンドが魅力です。
しかし、ダイレクトマウントピックアップはピックアップがボディに直接ネジ止めされているため、通常の方法では高さの調整ができません。止めネジを緩めると、ピックアップがカタカタと動いてしまいます。
ダイレクトマウントピックアップの高さを調整するには、一旦ピックアップを外して、ピックアップの底面に高反発ウレタンなどを挟んだり、ネジ止めするベースに端材や専用のスプリングを挟み込んだりする必要があります。
スプリングで高さの調整をすると、せっかくのダイレクトマウントの持ち味が活かせないため、ウレタンで調整するのがおすすめです。厳密にはウレタンを挟んだ段階で、クッションが効いてしまうので、純粋なダイレクトマウントサウンドは得られなくなってしまいますが、高さが合わないピックアップを使用するよりはサウンドは向上するはずです。
適度な反発力のウレタンを使用することで、ある程度の範囲でピックアップの高さ調整が可能になります。一旦調整してから時間が経つとウレタンの反発力、復元力が弱まるため、現在よりも高い位置に調整したい場合はあたらしいウレタンに交換しましょう。
また、ウレタンなどを挟んで高さを調整する場合、高さ調整ネジを回す方向が通常のピックアップネジと逆になります。例えば、時計回りに回して行くと低くなっていきます。あまりに締め込んで行くと、ボディのマウントネジ穴付近にダメージを与えてしまうので注意しましょう。
ちなみに、Ibanezの最上位グレードj.customのダイレクトマウントモデルでも、ウレタンスポンジを両面テープでピックアップ裏に貼り付けた状態でマウントされています。出荷時にはフロントピックアップがやや低めの上品なセッティングになっていたため、調整しようとして発見しました。
3行でまとめると
- 調整前後にはメモを取っておく!
- 高さ調整は少しずつ!
- 色々なトーンを確認しながら!
最後に
エレキギターのマグネットピックアップの高さ調整、いかがだったでしょうか?
高級ギターに高品位なピックアップをマウントしても、肝心の高さ調整がいい加減な状態だと良いサウンドは絶対に出てきません。逆に、それなりの価格帯の楽器でも、ピックアップの高さを含め、各種調整が行き届いていれば、高級品と比べても引けを取らないサウンドを繰り出すことができます。
好みの調整を見つけることで、別のギターに持ち替えたときなどに早い段階で調整を行い、ベストなコンティションで使用することができるので、ピックアップの高さを測るだけでも参考にしてみてください。
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