DAWを使用していると、新製品のプラグインが気になります。登録しているメーカーから次々とセールのメールが届き、覗くと不思議と必要な気がしてしまうプラグイン沼、はまっていませんか?
私は幸いなことに現在進行形でははまっていません。
この沼の悪質なところは、今よりも良いミックスに新しいプラグインが必要だ、と自分を納得させてしまうところにあります。
プラグインを入れ替えた直後は以前のものとキャラクターが異なるためにMIXが上達したような気になるのですが、実際のところはどうなのか、それは誰にもわかりません。
2020年度は社会情勢的にも外出の機会やイベントが減少して、比較的まとまった時間が取れたので、海外のMIX練習用マルチトラック音源や自分の過去に担当した作品のMIXを様々なプラグインで行ってみました。
仕事ではないので時間に追われることもなくじっくりとプラグインを試していったのですが、自分なりのプラグインチョイスがかなり固まってきたので、今回はそれらのプラグインをご紹介していきます。
目次
Console 1 – Softube
ここ最近の使用頻度が最も高かったのがConsole 1です。オーディオトラックのほぼすべてにインサートして使用しています。
以前はチャンネルストリッププラグインとして、UAD-2のSSL・NEVE・APIの御三家を使い分けるような使用法が多かったのですが、現在はほとんどConsole 1のSSL・British Class A(NEVE)・American Class A(API)を使用しています。
使用していて便利な点はやはり、フィジカルコントローラーがセットになっていて、プラグインウィンドウ内で操作しなくても良い、という部分です。
SOFTUBE / Console 1 Mk II
素直で混ざりの良いSSLと、ずっしりしたボトムと芯の太さのNEVE、ブライトな高域の抜けが特徴のAPIを使い分けて使用しています。
SSLはスローテンポな曲や、打ち込み系ストリングス、声モノトラックなど、NEVEはダンスチューンの曲や、ベーストラックなど、APIはロック調の曲やドラム・エレキギタートラックなどに主に使用します。
トラックが多くなると若干CPU負荷が気になるところではありますが、基本的にメインの伴奏トラックにはほぼ全てのトラックにインサートしていますね。2021年にマシンをスペックアップしたので、同時インサート数も実使用上問題ない程度まで増えました。追い風です。
以前はプラグインチェーンの先頭にアナログモデリングプラグインをインサートして、アナログ感を出していくMIXが多かったのですが、現在は特定の風合いが欲しいトラック以外はConsole 1のDrive機能に頼ることが多くなっています。AvidのHEATも試しているのですが、Console 1の方がしっくりくる印象です。
Console 1については下記記事で詳しく解説を行っていますので併せてご覧ください。
Oxford EQ – Sonnox
私はConsole 1などのアナログ系チャンネルストリップやアナログモデリングEQの手前でカットEQとして別のEQをインサートすることが多いのですが、そのカット用EQとして最も使用しているのがOxford EQです。
Sonnoxのプラグインはどれも優秀で、他にもEssentialバンドルに含まれるOxford ReverbやOxford Dynamics、Oxford Supresserを頻繁に使用しています。
EQが4タイプから選択できるのですが、私はType-1をメインで使用しています。細めのQでしっかり目にカットしても位相が乱れた感じや不自然さが出ず、自然な仕上がりになります。
カットEQとハイパスフィルターはその後のプラグインチェーンの基礎になるので、この段階でしっかりと下処理が出来ていることが重要になります。実際にはOxford EQ以降に(コンプ)→Console 1というような接続順で使用することが多いです。
SONNOX OXFORD / Sonnox Essential Native
Pultec EQ – Universal Audio
同一周波数のブーストとカットを組み合わせてサウンドを作るPultec EQもポイントポイントで使用してます。
おもに使用するのがバスドラムトラックで、前段のHPFでローエンドを設定して、そのすぐ上の帯域を目的とする低域の質感が得られるところまでブースト、その後カットすることでボトムをしっかりだしつつも低域が必要以上に膨れないEQが可能です。
Pultec EQはボーカルトラックのハイエンドをブーストするのにも向いています。単純にブーストすると耳に痛い部分が出てきたりするのですが、カットを組み合わせることでうまい具合に痛い部分だけが取れたりします。ダイナミックマイクで収音されたトラックと相性が良い印象があります。
Pultec EQよりも上品に仕上げたい場合には、Tubetechのモデリングを使用することもあります。
モデリングCOMP御三家
ここで言うモデリングCOMP御三家とは、Universal Audio 1176・Universal Audio LA-2A・Fairchild Model 670のことです。
レベリング用のコンプはConsole 1に任せて、それぞれを積極的に味付けをするためのコンプとして使用しています。
UNIVERSAL AUDIO / APOLLO TWIN USB Heritage Edition1176はバスドラムやスネアドラム、ベーストラックやボーカルトラックに使用することが多いです。ドラム・ベースには1176LN(Rev.E)を、ボーカルトラックには1176LN(Rev.E)か1176(Rev.A)を使用しています。
LA-2Aは管弦楽器、ピアノなどに主に使用しています。ベーストラックやボーカルトラックの2段コンプをかける際にも使用しますね。
Fairchildはレトロな雰囲気を出したい楽曲にピンポイントで使用することが多いです。ミックスバスにバスコンプとしてインサートすることで雰囲気を出しつつサウンドをまとめることが出来ます。
私は主にUADプラグインを使用していますが、Wavesプラグインを使用するのも良いと思います。1176とLA-2のモデリングコンプはCLA Classic Compressorsに660/670はJJP Analog Legendsにそれぞれバンドルされています。
Waves版は個性が強めに出るので、あまり深くコンプレッションさせずに使用するのがおすすめです。
Oxford Supresser – Sonnox
Oxford Supresserは特定周波数にだけコンプレッションをかけるディエッサープラグインです。
用途としてはボーカルトラックの「サ行」に多く含まれる歯擦音を抑えるように使用するのがメインです。他のディエッサープラグインと比べて不自然さが少なく、ボーカルトラックには必ず挿して使用しています。
本来の用途以外にも、ベーストラックのピックが強く入った中低域を抑えたり、スネアの強いヒットだけ中域を少し抑えたりなどいろいろなトラックに使用しています。
SSL 4000 G Bus Compressor – Universal Audio
バスコンプのド定番です。定番すぎて面白くないですが、特に説明することもないのですが、ミックスバスにこれをインサートするだけでまとまり感が段違いです。
私はUAD版を使用していますが、Waves版もよいです。Waves版の方がSSLっぽさが強くでるので味付けを強めにしたいかたにはWavesの方が使いやすいかもしれません。
バスコンプでは他にAPI 2500もよく使用しています。ジャンルやバスに合わせてという感じで使い分けています。
C4 – Waves
C4はWavesのマルチバンドコンプレッサープラグインで、周波数帯を4バンドに分けて個別にコンプレッションとレベル調整を行うことが出来ます。
主な用途は、ミックスバスの周波数帯域調整です。個人的には上位のC6よりもこのC4の方が使いやすいと感じています。
ドラムバスの低域が他の楽器をくってしまうような場合に使用することが多く、敢えてルーズさを残したドラムミックスを最終段で引き締めるように、低域にコンプレッションをかけつつ中低域のレベルを少し落としたりして使用しています。
こうすることで、サウンドの方向性を変えることなく、MIXにスペースを与えることが出来て、結果として他のトラックとの馴染みがよくなります。
C4はGoldバンドルから使用可能なので、まだ使ったことが無い方は試してみてください。
EMT 140 – Universal Audio
こちらはメインで使用しているプレートリバーブプラグインです。
EMT 140はスネアドラムとボーカルトラックに使用するリバーブの第一選択肢になっています。
実機をそのままモデリングしているため、操作系が非常に単純で出来ることが少ないため、セッティングに頭を悩ませることがないのが最大の利点です。
スネアドラムにはこれをモノラル・ステレオのそれぞれのタイプで並列使用しています。スネアの音像を広がらせずに奥に持っていくような使い方です。詳しくは下記記事で解説しています。
Oxford Reverb – Sonnox
プレートリバーブはEMTを使用しますが、それ以外のリバーブではOxford Reverbを第一選択肢にしています。
EMTとは真逆で操作できる項目が非常に多く、細かいところまで作り込めるのがメリットです。プリセットを基準に、そこから少しカスタマイズして使用しています。
特に優秀なのがホールリバーブで、管弦系に使用すると非常に馴染みの良いリバーブ感を得られます。初期反射音=アーリーリフレクションの設定が細かく出来るので、頭に描いた配置から初期反射を得られます。
リバーブでは他にはLexicon 224のモデリングも使用したりします。
H-Delay – Waves
正直なところ、私はディレイプラグインにそこまで強いこだわりはありません。なので、サウンド面についてはとくに言うことはないのですが、機能面と動作の軽さでH-Delayを多用しています。
通常のセンド・リターンで使用する場合に加えて、ギターソロトラックなどにインサートで使用することもあるのですが、Dry/Wetのバランサーがあり、ピンポンディレイがワンタッチで設定出来たり、テンポシンクがやりやすかったり、便利に使用しています。
ダブリング用途ではH-Delayではなく、同社のDoublerやSoftubeのFix Doublerをメインで使用しています。
3行でまとめると
- 各ジャンルにファーストチョイスを作っておく!
- プラグインの特徴を活かせるように使用する!
- 新しいもの=いいものではない!
最後に
今回は、2020年度にメインで使用したプラグインをご紹介してきました。
こうしてみてみると、アナログモデリング系はSoftubeとUADに、デジタル・便利機能系はSonnoxとWavesにまとまっているのが自覚出来ました。
一例として、カットEQのファーストチョイスはDigidesign(Avid)→Waves→Sonnox→McDSP→Fabfilter→Sonnoxと渡り歩いています。近年は新作プラグイン情報はキャッチしているのですがSonnoxで安定しています。恐らく脱沼です。
私論ですが、プラグインはあくまでも道具です。道具にこだわることも重要ですが、それよりも重要なMIXの完成度こそ重視すべき点で、そのために道具を使用している、ということを忘れないようにしていきたいものです。慣れてる道具が一番ということもあります。
今回は、自戒のような記事になってしまいましたが、プラグインチョイスの理由やちょっとした使い方など、皆様のお役に立てていれば嬉しいです。
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