ピックアップ交換といえば、エレキギターのカスタマイズの中で最もメジャーな方法です。
しかし、いざピックアップを交換するとなっても、「今のギターサウンドが物足りないけど、どんなピックアップに交換すればよいのかわからない。」そんな方も多いんではないでしょうか?
今回はそうした方々に送る、エレキギターリプレイスメントピックアップ〜シングルコイルピックアップ編〜をお届けします。
有名メーカーのピックアップを実際に鳴らした感想を含めていくつかのピックアップを紹介しています。参考にしていただければ幸いです。
目次
ピックアップとは?
エレキギターのピックアップとは、弦の真下に取り付けられている磁石のことを指します。
磁石の周りにはコイルが巻き付けられていて、ピックアップの磁界の中で弦が動くことで、電磁誘導により巻かれたコイルに電流が流れます。
基本的に磁石が強力であればあるほどピックアップの出力は大きくなります。また、コイルの巻き数(ターン数)も多いほうが高出力になりますが、高域が減衰する傾向にあります。
ピックアップの出力の目安は直流抵抗(DC resistance)により表されています。基本的には、この抵抗値が大きいほど高出力になります。こちらは、磁石の強度とは関係なく、コイルの太さとターン数によって決定されます。コイルは細くてターン数が多い方が高出力になります。
Seymour Duncanのピックアップ
Seumour Duncan(セイモアダンカン)はリプレイスメントピックアップと言えばダンカン、というくらい有名なメーカーです。国内ではESPが正規代理店ですね。ESPのギターには標準で搭載されているモデルが多いです。
シングルコイルピックアップのラインナップも豊富で、ビンテージ系ピックアップからモダンなピックアップまで揃っています。
全体的に音抜けの良いピックアップが多く、ストラトキャスターらしさ、テレキャスターらしさが際立つピックアップが特徴です。
SSL-1 Vintage Staggered
SEYMOUR DUNCAN / California 50’s SSL-1 set
ストラト用シングルコイルピックアップといえばコレ!その名の通りビンテージ系のサウンドで、ハーフトーンでのクランチ系の歪みサウンドは最高です。
クリーンも非常に綺麗に出力してくれるのですが、近代的なヘヴィなディストーションサウンドでは若干パワー不足感は否めません。サウンドに芯があるので、無理やり歪ませることは可能ですが、ノイズが目立ってしまいます。
ストラトキャスターの綺麗なハーフトーンを生かすために、同シリーズのピックアップで揃えるのがおすすめです。セットのセンターピックアップはマグネットが逆磁極、コイルが逆巻になっていて、ハーフトーン時にハムキャンセル効果が得られます。RwRpと記載されているピックアップがこれにあたります。
STK-S9b Hot Stack® Plus
SEYMOUR DUNCAN / STK-S9b White
スタックシリーズの中でも最もハイパワーなSTK-S9b Hot Stack、ストラトキャスターのイメージをガラッと変えてしまうほどハイゲインなブリッジ用のピックアップです。
このピックアップをマウントすることで、ブースターいらずのハイゲインなディストーションサウンドを奏でることができます。
Seymour Duncanのスタックシリーズピックアップは、通常のコイルの下部にもう一つ逆巻のコイルが巻かれています。この構造により、コイルの巻数を増やしハイパワー化を計るとともに、コイルが逆巻であることによりハムノイズのキャンセル効果があり外来ノイズに強くなっています。
外来ノイズについてはこちらの記事もご参照ください。
スタック構造のピックアップはコイルが2段積まれているため、ピックアップの高さが通常のシングルコイルピックアップに比べて高くなっています。そのため、通常のストラトキャスタータイプのギターでは、キャビティの深さが足りずにマウントできない可能性があります。
実際に購入される前に、自分のギターのザグリの深さを確認するようにしましょう。
STK-S6 Custom Stack® Plus
Hot Stackほどのパワーが必要ない場合、こちらのCustom Stackがおすすめです。スタックピックアップの弱点である、音抜けの悪さを気にせず使用することができます。
また、ハイゲインサウンドから歪みを抑えたクランチサウンド、クリーントーンまでバランスよく出力することが可能です。
私もストラトキャスターのフロント、センターポジションに、こちらのSTK-S6 Custom Stack Plusを搭載しています。
STL-1 Vintage ’54, Lead
テレキャスター用ビンテージピックアップと言えばこちらのSTL-1が定番です。
テレキャスターの特徴である1MΩのポットで高域がさらにブライトになり、まさに「ジャキジャキ」という、イメージ通りのテレキャスターサウンドを出力してくれます。
DIMARZIOのピックアップ
DIMARZIO(ディマジオ)もSeymour Duncanに負けず劣らず有名メーカーです、スタック構造のピックアップを積極的に取り入れ、シングルコイルサウンドの枠に捉われないサウンドのピックアップを数多くリリースしています。こちらは神田商会が代理店です。
P-90のようなサウンドが売りのピックアップや、ハムバッカー的なサウンドのピックアップなどビンテージ系よりもモダン系のラインナップが多い印象があります。
DP117 HS-3
HS-3はスタック構造のピックアップですが、音抜けがよく、芯のあるストラトキャスターサウンドを出力してくれます。
かつて北欧の超有名速弾きギタリストが使用していたことで有名になったピックアップです。ディマジオのピックアップにはシグネイチャーモデルが多く、また、現代のライブ環境に合わせたスタック構造のシングルコイルピックアップが主体です。
EMGのピックアップ
アクティブピックアップと言えばEMGというくらい有名なメーカー、多くのアクティブピックアップをリリースしている。
アクティブピックアップでは、ピックアップ内に9V電池で動作するプリアンプを内臓することにより、ピックアップ自体をパッシブピックアップに比べて低出力に抑えることが可能です。
パッシブピックアップコイルは出力を得る際にノイズも同時に拾ってしまいますが、アクティブピックアップでは、コイルの感度を下げて、ピックアップを弦に近づけてセットすることで、弦振動だけを捉え、ローノイズ化を計っています。
また、プリアンプ回路を通すことで、出力インピーダンスを下げることが可能で、こちらもローノイズ化に一役買っています。実際に使用してみると比喩表現ではなく、アンプのボリュームが上がっていても0のときのような静かさでびっくりします。
EMGなどのアクティブピックアップに交換する際は搭載するギターに電池を内臓する必要があります。また、スタックタイプ同様にピックアップの高さもあるので、楽器店さんに相談するのがよいでしょう。
作業自体は、ピックアップや電気パーツにスナップが付いていて、パーツをギター本体に取り付けたあと、付属のケーブルでそれらを接続するだけで交換できるため非常に簡単です。
SA
EMGシングルコイルピックアップの定番、SAです。非常に透明感の高いサウンドで、アクティブ特有のコンプ感と合わさってクリーントーンが非常に綺麗です。エフェクターの乗りも非常によく、エフェクトを多用するギタリストには特におすすめです。
また、EMGピックアップはセットで揃えることで、ピックアップセレクターやポット類も付属してくるので、パーツを揃える手間がかからないのもよいですね。
ピッキングに対する追従性がやや低く感じられるのが欠点といえば欠点です。若干ですが、ピッキングニュアンスが出し辛い印象があります。
SA-X
SAの後継機種として、新開発のプリアンプを搭載したモデルがこのSA-Xです。
SAよりもアクティブ臭さがなくなり、非常にローノイズながら、ピッキングに追従してくるパッシブピックアップのようなサウンドを出力することができます。
プリアンプ内臓のため、ピックアップ自身が重いのと電池を必要とするためその分重くなっています。難点としては、重心がボディ側に傾いているので単純に重いというよりも、ネックが上がってきてしまうことが挙げられます。
その他メーカーのピックアップ
ここまで、3つの代表的なメーカーのピックアップを見てきましたが、それ以外のメーカーも素晴らしいピックアップを数多く制作しています。
Suhr – ML
MLはハイエンドギターブランドSuhrが、一流ギタリスト、マイケル・ランドゥ氏の協力のもと制作したピックアップです。
ストラトピックアップの中では抜群にピッキングへの追従性が高く、強く弾けば強く、弱く弾けば弱く、弾いたままのサウンドを出力してくれます。
ネック、ミドル、ブリッジと各ポジションごとに最適なピックアップが制作されているので、セットで使用するのがよいでしょう。私はメインのSchecter EX-VにフロントのSSV、リアのSSH+と合わせてセンターポジションでML Middleを使用しています。
LINDY FRALIN – REAL54 SET
LINDY FRALIN / REAL54 SET WHITE
ビンテージ系ピックアップではストラト純正よりも純正っぽいピックアップを作っている一押しメーカーLINDY FRALIN(リンディフレーリン)、ハイパワーなモデルよりもゲインを抑えたトーンが魅力的な製品が多いです。
鈴鳴り感が抜群で、ストラトキャスターの良いところを余すことなく出力してくれるピックアップです。
ただ、ボディがあまり鳴らないギターに乗せるとサウンドの低域が少し薄っぺらく感じるかもしれません。
Fender – Custom Shop Texas Special Strat Pickup
FENDER / Custom Shop Texas Special Strat Pickups Set
本家フェンダーのカスタムショップ製ピックアップです。
ラインナップの中でもTexasピックアップはいい意味で『暴れる』ピックアップです。通常のビンテージピックアップよりも一段階ゲインが高く、ドライブサウンドとも相性が良いので、モダンなプレイスタイルのギタリストにもマッチするでしょう。
Fender – Hot Noiseless Strat PickUp
FENDER / Hot Noiseless Strat PickUps Set
Hot NoiselessはFenderのモダンピックアップの一つの完成系じゃないかと思います。ジェフ・ベックが使用するストラトに搭載されていますね。シングル特有のブライト感は抑えめですが、ドライブサウンドではファットな歪みを出してくれます。
フェンダーノイズレスシリーズはスタック構造のピックアップです。他社製のスタックタイプ同様に帯域のバランスがハムバッカーに近く、ストラトとしては使いにくいモデルが多かったのですが、このHot Noiselessはよいバランスでまとまっています。
Hotの名の通り、出力も比較的高く、ジャンルを選ばずに使用できるピックアップです。ハイパスボリュームを搭載してボリュームを絞って使用するのもおすすめです。
ただ、ビンテージ系のトーンとはかなり違いがあるので、鈴鳴り感が欲しい場合や枯れたサウンドが目当ての場合などは、通常のシングルコイルピックアップを乗せるか、スタックタイプでもSeymour Duncan製のピックアップを載せたほうがよい結果が得られると思います。
3行でまとめると
- 大きく分けるとビンテージ系とモダン系!
- ビンテージ系はシングルコイルのイメージ通りのサウンド!
- モダン系は既存のシングルのイメージを覆すサウンドも!
最後に
さて、シングルコイルピックアップ特集いかがだったでしょうか?
テレキャスターをあんまり弾いたことがないので、ストラトキャスターばっかりになってしまいました。勉強しておきます。
また、どんなピックアップをマウントするにせよ、しっかりと高さの調整をしてやることが重要です。高さが調整されていない状態ではどんな高品位なピックアップもそのポテンシャルを十分に発揮できません。
ピックアップの高さ調整に関してはこちらの記事をご参照ください。
ピックアップシリーズ、次回はハムバッカーピックアップ編です。
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