ピックアップ交換といえば、エレキギターのカスタマイズの中で最もメジャーな方法ですね。
前回記事ではシングルコイルピックアップをご紹介してきましたが、今回はおすすめのハムバッカーピックアップをご紹介していきます。
シングルコイル編の記事はこちらです。
今回も有名メーカーのハムバッカーピックアップを、実際に鳴らした感想を含めていくつかご紹介していきます。参考にしていただければ幸いです。
目次
ハムバッカーピックアップの構造
ハムバッカーピックアップは構造的には2つのシングルコイルが直列につながっているピックアップです。片方の磁石が逆磁極、コイルが逆巻になっているため、ハムノイズが目立たない、ハムバッカーと言うのはこれが名前の起源です。
また、ハムバッカーピックアップを選ぶ際には幾つか注意しないといけない点があります。実際にピックアップをご紹介する前に注意点について書いていきますので、参考にしてみてください。
ハムバッカーのサイズ
レスポールに代表されるTune-O-Maticブリッジと、シンクロナイズドトレモロブリッジやフロイドローズタイプのブリッジでは、ブリッジ上での弦のピッチ(間隔)が異なります。
そのため、特にブリッジピックアップ(リア)のポジションではそれぞれの弦ピッチに合わせたモデルを使用するのが一般的です。
ハムバッカーピックアップを選ぶ際にはこのサイズの差を考えて選ばないとボールピースが弦の真下に入らず、結果としてメーカー側で意図していないサウンドになってしまうので、注意しましょう。
また、シングルコイル→ハムバッカーの交換を行う場合や、ハムバッカー同士の交換でも、マウントネジの位置によっては木部に加工が必要になってくる場合もあります。不安であれば楽器店さんに相談してみるのがよいでしょう。
コイルタップ機能の有無
ハムバッカーピックアップの2つのコイルにはそれぞれ巻き始めと巻き終わりがあります。モデルによってはこの2つのコイルの中間地点からもリード線が引っ張ってあるものがあります。
この中間地点のリードからスイッチなどを使って音を引っ張ってやると、ハムバッカーの片方のコイルだけを使用したシングルコイルサウンドを出力可能です。また、リード線のことをコンダクターと言い、3コンダクター、4コンダクターのモデルではコイルタップが可能です。
Ibanezのギターなどでは、ピックアップセレクターが特殊な配線になっていて、セレクターを切り替えるだけでハーフトーン時には自動的にコイルタップされるオートタップ機能が搭載されているモデルもあります。
ピックアップを選択する際にはこのコイルタップが可能かどうかにも注目しましょう。ちなみに、私はコイルタップ機能は必須のものとして考えています。
※日本国内ではコイルタップと表現することが多いですが、英語に忠実に表記をするとコイル・スプリットとなります。(ハムバッカーの2つの)コイルを分割するからコイルスプリットです。
ピックアップの極性
磁石にN極とS極があるのはご存知だと思うのですが、エレキギターのピックアップも芯の部分は磁石なので極性があります。
多くのモデルはリード線の接続で極性を入れ替えることが可能ですが、中にはアース線と信号線のみで極性が固定のモデルもあります。この場合、他メーカー製のピックアップと合わせるときにメーカーごとの極性を機にする必要があります。
多くのメーカーではハムバッカーはGibsonの極性に合わせて作られています。SSHやHSHなどのピックアップ配置のギターを使用している場合、Fender系のシングルコイルとは逆の極性なので、この点には注意が必要です。
Seymour Duncanのピックアップ
シングルコイルピックアップの記事でもご紹介しましたが、リプレイスメントピックアップと言えばSeymour Duncan(セイモア・ダンカン、通称ダンカン)、というくらい有名なメーカーです。最近では日本国内代理店のESPの上位モデルに標準で搭載されているイメージが強いです。
SHから始まる型番号のピックアップはTune-O-Matic用のサイズ、TBから始まる型番号のピックアップはトレムバッカーと呼ばれるトレモロ搭載ギターのブリッジ用サイズになっています。
SH-4 JB Model
ブリッジポジション用のリプレイスメントハムバッカーの大定番SH-4です。
JBとは、あのジェフ・ベックのことを指しています。ジェフ・ベックと言えばストラトキャスターのイメージが強いですが、テレギブに搭載されていたピックアップが元になったと言われています。
サウンドは中音域に粘りがあり、ハムバッカーらしいハムバッカーサウンドです。また、ある程度ハイパワーな中でも高域に心地よいピークがあり、歪ませても音抜けの良いピックアップです。
ニッケルカバードタイプのSH-4 Nickelや、トレモロ搭載ギター用のTB-4などのバリエーションがあります。
SH-2n JAZZ Model
SH-4と合わせるネックポジション(フロント)のピックアップと言えば、こちらのSH-2nでしょう。小文字の「n」はネックポジション用の「n」です、ブリッジポジション用は「b」とついているのでお間違いないように。
出力は抑えめですが高域にピークがあり、ネックポジションでもブーミーになりすぎないブライトなサウンドが特徴のピックアップです。クリーントーンも綺麗に出てくれます。
ニッケルカバードモデルはありますが、ネック専用モデルのため、トレムバッカーはありません。
SH-6n/b Duncan Distortion
SEYMOUR DUNCAN/ SH-6n Black
SEYMOUR DUNCAN / SH-6b Black
名前の通りディストーションサウンドと言えばこのSH-6 Duncan Distortionですね。nがネックモデル、bがブリッジモデルです。交換する場合はセットで交換するのがよいでしょう。
セラミックマグネットを使用しており、ダンカンにしては太いサウンドが特徴で、ハードなドライブサウンド時にも音の芯を感じることができます。また、ハイパワーなピックアップの中では比較的音抜けがよいピックアップでもあります。
Dimarzioのピックアップ
Seymour Duncanのピックアップと人気を二分するのがこちらのDimarzio(ディマジオ)のピックアップです。
Ibanezの最上位モデル、j-Customに標準で搭載されているイメージが強いです。国産メーカーの最上位機種にマウントされていることからもその品質が確かなことが伺えます。
また、多弦ギター用のピックアップが豊富で、ただマグネットを増やしただけでなく、専用のチューニングが施されているので、多弦ギタリストにはベストマッチなメーカーです。
トレモロブリッジ搭載モデル用のブリッジピックアップはFスペースと呼ばれています。Fender SpaceのFスペースですね。
DP155 Tone Zone
まずは、Dimarzioのリアピックアップの定番Tone Zoneです。ダンカンのピックアップに慣れていると音抜けが悪く感じることもありますが、実際のところ、サウンドの重心が凄く低い位置にあるといった印象です。
低域と低中域にそれぞれピークがあるので、深く歪ませたサウンドも腰砕けになりません。
かなりハイゲインなピックアップなのですがピッキングニュアンスに忠実で、ピッキングで歪み量の調整をするプレイヤーにもおすすめできます。ハードに歪ませた場合も音圧感や低域のレスポンスに素晴らしいものがあります。
また、コイルタップ時のトーンも無理やり感がなく、使えるトーンに収まります。
DP193 Air Norton
Seymour DuncanのSH-4に対するSH-2nに当たるものが、DimarzioのDP155に対するDP193です。ダンカン製の取り合わせよりも低中域にピークがあり、芯が太いサウンドを奏でます。
2ハムやHSHのピックアップ配列で、ブリッジポジションにTone ZoneをマウントするならネックポジションにはAir Nortonをマウントするのがよいでしょう。
リアにマウントしたTone Zoneからピックアップを切り替えた時にサウンドの方向性は一致したままで甘いフロントピックアップのトーンを得ることができます。
ちなみに、DP155 Tone ZoneとDP193 Air Nortonには7弦ギター用にデザインされたDP755 Tone Zone 7とDP793 Air Norton 7があります。こちらも6弦モデルのキャラクターは保ちつつも低域のレンジが拡張されていて、セットで使用するのがおすすめです。
EMGのピックアップ
アクティブタイプのピックアップを多く生産しているEMGのハムバッカーは、強烈な歪みを得られるモデルが多く、また、非常にノイズが少ないためHR/HMのギタリストに多く使用されています。
アクティブピックアップに交換する際の注意点としては、ギター本体に電池を搭載する必要がある点です。木部の加工が必要になる場合が多いので、楽器店さんに相談しましょう。
また、専用のボリュームポット、トーンポットの抵抗が25kΩとパッシブ用のポット(500kΩ)に比べて小さいので、ボリュームポットを絞った時の音質変化を最小限に抑えることができます。そのため、ボリュームノブを使って歪み量のコントロールをするのにも適しています。
しかし、このポットの抵抗値の影響で、パッシブピックアップと混在させることがかなり困難なので、アクティブタイプを使用する際には搭載されている全てのピックアップをアクティブタイプに変更させましょう。
交換に必要なポット類などのパーツはピックアップ購入時にセットで付いてきますので、ご安心を。
81
ブリッジピックアップの定番、81はハイゲインピックアップの一つの到達点で、激しい歪みが特徴です。エフェクター乗りが非常によいので、空間系を使用したサウンドも素晴らしいですね。アンプで歪ませるよりもエフェクターを使用して歪ませた方が相性がいいように感じます。
パッシブピックアップと比べてローノイズなのですが、アクティブ特有の音の硬さがあったり、歪ませた際にピックアップの個性が弱いため、全帯域に渡って「のっぺり」としたサウンドになりがちなので工夫が必要かもしれません。
85
81をブリッジにマウントする際のネック側ピックアップは85が定番です。EMGにはピックアップのフロント、リアの区別やトレモロ搭載モデル用のサイズが存在しないので、自由な組み合わせを楽しむことが可能です。
当然、85をリアにマウントしているギタリストも多数います。
81よりも高域が抑えめで、EMGラインナップの中では大人しいピックアップという印象です。
89
89は85サウンドとシングルコイルのSAサウンドを切り替えて使用可能なピックアップです。サウンド的にはコイルタップに近いのですが、原理としては違うもののようです。
85サウンドとは若干違うし、SAサウンドとも若干違うのですが、コイルタップを多用するギタリストがアクティブタイプに換装する場合にはおすすめできます。
付属のプッシュプルスイッチを使用して切り替えるのですが、通常のポットに比べてポットのサイズが縦に大きいため、キャビティー内に収まらない場合があるので、導入前に確認しておくことをおすすめします。
その他のメーカーのピックアップ
ここまでは、Seymour Duncan、Dimarzio、EMGと超有名どころのピックアップメーカー3社のピックアップをご紹介してきましたが、ここからはそれ以外のメーカーのおすすめピックアップをご紹介していきます。
Gibson – BURST BUCKER
GIBSON / BURST BUCKER TYPE1 NICKEL
GIBSON / BURST BUCKER TYPE2 NICKEL
ここまでPAFレプリカピックアップを紹介して来なかったのは、このBURST BUCKERが存在するからです。
PAF(パフ)とは、50年代のレスポールに搭載されていたピックアップで、開発当初は特許の出願中だったこともあり、Patent Applied For(=特許出願中)の印字をしてからマウントされていました。
伝統のギブソンサウンドを求めて各社がオリジナルPAFのレプリカを開発してきましたが、本家GibsonのBURST BUCKERは現代風のテイストを持ったPAFレプリカといった印象です。
お恥ずかしながら、実際のビンテージレスポールを弾いたことがないのでオリジナルPAFとの正確な比較はできませんが、若干モダンな、イメージ通りのレスポールサウンドを出力することができます。
TYPE1がネック用、TYPE2がブリッジ用にチューニングされています。また、TYPE3というコイルターン数の多いハイパワーなモデルもありますが、PAFレプリカと考えると若干使い所が限られてくるように感じます。
TOM ANDERSON – H2+
TOM ANDERSONは世界的に有名な高級ギターメーカーですが、自社開発のピックアップを取ってもどれも素晴らしいクオリティです。
なかでもおすすめはH2+です。ハイゲインなピックアップなのですが、音が暴れてしまう感じがなく、コントロールしやすいピックアップという印象です。
低中域にピークがある骨太サウンドが特徴ですが、コイルタップ時のサウンドは抜け感が良いので、ハイパスボリュームと合わせて使用することで、一本のギターで様々なサウンドを出力することが可能です。
Suhr – SSH+
Suhrも高級ギターメーカーです。オーダーメイドも評判がよいですね。
リア用のハムバッカーSSH+はハイゲインなピックアップなのですが、特筆すべきはその音抜けです。通常深く歪ませると音抜けは悪くなっていくのですが、このSSH+では音抜け感を保ったままゲインアップすることができます。
浅い歪みでコードを鳴らした際にも、弦のバランス、各帯域のバランスが非常によく、生鳴りのバランスを保って出力してくれます。
私もSchecter EX-V CTMのリアピックアップにはこのSSH+を載せています。ちなみに、フロントにはSSV Neckを、センターはMLを載せています。
意外と触れられていないのですが、コイルタップ時のサウンドもとても素晴らしく、同じくSuhrのシングルコイルピックアップMLとのハーフトーンはクリーンでのアルペジオ、クランチでのカッティング時に力を発揮します。
ブリッジ形状により、50mmサイズ(Gibson系T.O.Mサイズ)と53mmサイズ(トレモロ搭載ギター用サイズ)がラインナップされているので、導入の際には注意しましょう。
3行でまとめると
- ブリッジによってサイズが違うのに注意!
- コイルタップ機能にも注目!
- PAFレプリカはイメージ通りのレスポールサウンド!
最後に
さて、2回に分けてお届けしてきたリプレイスメントピックアップ編、いかがだったでしょうか?
ピックアップ単体の試奏っていうのが出来ない以上、ある程度運任せみたいなところがありますが、各メーカーのピックアップを一つ弾いたことがあれば、トーンチャートなどを参照してある程度サウンドを想像できるようになります。
実際出たとこ勝負の感は否めないのが残念なところではあります。
また、せっかく良いピックアップに巡り合えても、高さの調整が不十分な状態では、性能を発揮できません。ピックアップを乗せ換えたら、必ず高さの調整を行いましょう。
ピックアップの高さ調整については、以下の記事をご参照ください。
エレキギター本体のメンテナンスやピックアップ交換を自分でできるようになっておくと、交換してみたけどイマイチだったピックアップを自力で元に戻すこともできます。取得しておいて損はないスキルなのではないでしょうか。
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日本では、ハムバッカーの2本のコイルを切り離してシングル・コイル・ピックアップのように使う配線をコイルタップと呼ぶことが一般的ですが、これは誤りです。
複数のコイルのうち、任意の1本を選択して使用することはcoil-split (コイル・スプリット)と呼び、coil-tap (コイル・タップ)とは1本のコイルの両端間の任意の位置に接点を設けてそこから信号を取り出すことを言います。
Seymour DuncanやP.R.S.の本家サイトを覗くと、ハムバッカーでコイルを切り離すことは明確にcoil-splitと記載されています。
誤解なきよう。
三毛にゃんジェロさん
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、慣例的にコイル・タップと呼んでいますが正式にはコイル・スプリットが正式な呼称です。
シングルコイルのコイル中点などから出力を取り出すことがコイル・タップの正確な使い方となります。
当ブログでは日本で一般的な呼称を使っているため、コイルタップと表記しておりますが、ご指摘の点加筆修正させていただこうと思います。
ご意見ありがとうございました。