内蔵のDSPを使用した高品位なプラグインを使用可能なUniversal Audioのオーディオインターフェースapolloシリーズ。近年ではWindows PCにも対応してますますユーザーが増えています。
オーディオインターフェース本体の性能を見ても高品位なマイクプリを搭載していたり、バーチャルトラックを備えていてルーティーンの幅が広かったりと魅力的なのですが、やはり最大の魅力はUAD-2プラグインです。
apolloシリーズオーディオインターフェースやConsoleプラグインのレビューについては以下の記事をご参照ください。
使用しているのは本職のレコーディングエンジニアだけではないので、実際にapolloを手にしたけどたくさんあるプラグインからどれを選べばいいのかわからない、という方も少なくないのではないでしょうか?
私も悩みに悩み抜いて以下のラインナップにしました。UAD-2プラグインはデモ版を試用することが可能なので、後悔しないためにもレビューなどを鵜呑みにせず、必ずご自身の耳で確認するようにしてください。
今回は、数多くあるUAD-2プラグインの中から、私が実際によく使用しているプラグインをカテゴリごとに15種ご紹介させていただきます。UAD-2プラグイン選びの参考にしていただければ幸いです。
目次
MIC PRE & Channel Strip(チャンネルストリップ)
レコーディング時のUNISONを使用したマイクプリのサウンドから、MIX時のブーストEQとコンプ/ゲート用までかなり幅広く使用しています。
API Vision Channel Strip
EQ部分は名機550が搭載されていますね。
サウンドはもちろん伝統のAPIサウンド、芯が太くて高域がブライトに抜けてくるサウンドが特徴です。apollo8pを使用した楽器のマイク録音などに使用しています。
MIX時には楽器用のチャンネルストリップとして使用することが多く、レベリングからHPF、コンプ、EQまでこれだけでこなせるので重宝しています。EQセクションもWavesのAPIシリーズよりも好みなので、他のセクションをOFFにして単純にEQとしても使用しています。
Neve® 1073 / 1073SE Classic Console EQ
主に楽器、ボーカル問わず録音時のUNISONマイクプリとして使用しています。
EQとしてよりも音質補正用に使用することが多く、オーディオトラックだけではなくサブミックスの補正に使用したり、1073を通すことにより音質を積極的に変化させるために使用しています。
Neve® 88RS Channel Strip
使いどころとしては前述のAPI VISIONに近い使い方をしています。
レコーディング時のマイクプリとしては1073よりも上品な印象があります。MIX時には低域楽器に主に使用しています。
コンプセクションが優秀で、どんどん潰したくなるサウンドをしています。また、EQもしっかりとしたNEVEサウンドで、1073ほどの派手さは感じませんが、欲しいところをしっかり持ち上げてくれます。
DSP LoadLockについて
UAD-2プラグインではControl PanelからDSP LoadLockの設定を行うことができます。
DSP LoadLockをONにすると、プラグインごとに固定のDSP負荷がかかりますが、この設定をOFFにすると、チャンネルストリッププラグインなどの多セクションに渡るプラグインの未使用セクション分のDSPを解放し、より多くのUAD-2プラグインを使用可能になります。
個人的にはDSP負荷が変わることによる音質変化をあまり感じないので、常時OFFにして使用しています。
EQ(イコライザー)
UADプラグインのモデリング技術を活かすため、主にブースト用のEQとして使用しています。
実際に指し示している値よりも、倍音付加による音質変化も含めて耳でMIXをするのに非常に適しているプラグインが多いです。
Neve® 1081 / 1081SE Classic Console EQ
恐らく、UADで一番使用しているブースト用EQです。
通しただけで音が派手になる分かりやすいEQです。10kからシェルビングで持ち上げるだけで、音がグッと前に来る、抜けて来るのを感じることが出来ます。特に音数の多いセッションではその効果がはっきりと確認できます。
ドラムからベース、ギター、ボーカルからシンセサイザーまでなんにでも使用しています。複数トラックに同一のEQを使用することで音質の一体感を感じることが出来ます。
もともとコンソールとはそういうものなので当たり前といえば当たり前ですが、各トラックに最適なプラグインチェーンを考えるあまり、疎かになっているところなのではないでしょうか。
Tonelux® Tilt EQ
他では代用の効かない変わり種のEQです。というのも、このEQは緩やかなカーブのHPF/LPFと全体の傾きだけで音を作るEQだからです。
TILTツマミを時計回りに回すとハイ上がりに、反時計回りに回すとロー上がりになります。測定をしたわけではないので、どのあたりの周波数からどのくらいのカーブで変化をしていくか全くわからないのですが、非常に音楽的なサウンドであることは間違いありません。
なんか抜けないトラック、なんか痛いトラックにインサートしてなんとなくTILTツマミをいじると、なんか解決する。そんなEQです。
HPF用にインサートして、ついでにTILTを若干時計周りに動かして使用したりしています。
Tube-Tech PE 1C Equalizer & ME 1B Equalizer
とっても有名だけど使い方の難しい真空管EQ=PultecをクローンしたTubeTech EQのエミュレートプラグインです。実際にはPE 1CとME 1Bは別々のプラグインですが、同時に使用することで5バンドEQとして使用することも出来ます。
変わったところとしては、Pultec同様にLOW/HIGHの2バンドで選択した周波数をブーストしながらカットすることが可能な点です。BOOSTツマミとATTENツマミを両方とも時計回りに回していくことで、このEQでしか出せないサウンドを生み出すことが出来ます。
ミッドレンジ版のME 1Bはミッドレンジに寄った3バンドEQなのですが、MIDバンドではツマミを時計方向に回すと選択帯域がカットされます。LOW/HIGHと周波数が被っているので、ブースト不可能な帯域があるわけではないのですが、これだけだと使いづらさを感じます。
私はPultecEQのようにバスドラム、エレキベースなどのトラックの低域調整用サブEQとして使用することが多いです。Pultecよりも上品なサウンドに仕上がるため、キレイ目なサウンドを作るのに役立てています。
COMPRESSOR(コンプレッサー)
UADパワードプラグインのコンプレッサーもEQ同様アナログ機器のモデリングが優秀なので、原音忠実でレベリングだけを行うコンプよりも音を積極的に変化させるコンプをかける目的で使用しています。
1176LN Classic Limiting Amplifier
恐らく世界で一番有名なコンプレッサーのモデリングプラグインです。スレッショルドの設定はなく、INPUTで音を突っ込むとコンプレッサーが作用する仕組みになっています。
アタック、リリースのツマミは時計回りに回して行くと早くなっていきます。
なんにでも使用可能なコンプですが、早めのアタック、リリースでスネアやバスドラム、ベースやアコースティック楽器などに使用して、はっきりと潰すことが多いです。INPUTを突っ込んで行くと内部的にアナログ的な歪み方をしていくのですが、実機同様音楽的で倍音豊かな歪み方をするのが特徴です。
また、メインボーカルの音像を前にだすためにもよく使用しています。パリっとします。
音とは関係のないことですが、よく見ると実機同様塗装が紫がかっています。そんなところまで再現してることに感心しました。
Teletronix® LA-2A Classic Leveling Amplifier
プラグインコレクションという形で3色(グレー、シルバー、ねずみ色=LA-2A)のLA-2Aがセットになっています。お得な感じですね。
一番よく使用するのはシルバーカラーのLA-2Aで、エレキベーストラックやエレキギター、ピアノなどのコンプとして常用しています。他にもアコースティックギターやボーカルなどの角を取るのに使用することが多いです。
グレーとねずみ色も主にエレキベースのコンプレッションに使用しています。音量的に持ち上げなくてもどっしりとしたサウンドに仕上がってくれる印象です。
どちらのモデリングでもあまり大きなコンプレッションはせず、スローアタック・スローリリースを活かした使い方がはまると思います。
Tube-Tech CL 1B Compressor
青いインターフェースが印象的な真空管コンプのモデリングプラグインですね。
真空管らしい温かみを感じられるので主にボーカルトラックに使用しています。低めのレシオでアタックリリースを遅め設定で使用するとLA-2Aよりも上品な感じに仕上がります。上品さが欲しいときにはこちらを使用することが多いですね。
また、各ツマミの効きがよく、調整範囲が広いことも特徴の一つで、打楽器からベース、ギター、ピアノ、ストリングスとなんにでも使えるコンプレッサーでもあります。
GAINレンジも広く、GAINをあげて行くことで歪みも得ることが可能なのですが、私はあまり歪ませて使うようなことはなく、ナチュラルでウォームなコンプレッサーとして使用しています。
Reverb(リバーブ)
私はこれらのUAD-2プラグインとCPUベースのリバーブと併用しています。
EMT® 140 Classic Plate Reverberator
超有名プレートリバーブのモデリングプラグインです。
ボーカル録音のときにモニター用リバーブとして使用したり、MIX時のボーカル用のメインリバーブとして使用しています。他のリバーブのプレートプログラムよりもふくよかで厚みのあるリバーブ感が得られる印象です。
また、スネア用プレートリバーブとしてもよく使用しています。ボーカルはAプレート、スネアはAかBプレートを良く使用します。
リバーブ音に厚みがあるのでかけ過ぎにならず、自然な状態をキープできるのが使いやすいところです。厚みを出したまま原音との分離を取るためにプリディレイを少しかけるのもおすすめです。
Lexicon® 224 Digital Reverb
ホールリバーブ、ルームリバーブを中心になんにでも使用するリバーブです。綺麗なデジタルリバーブなのですが、サウンドが浮きづらくジャンルを選ばず使用できます。
見た目がちょっと特殊ですが慣れてしまうと使いやすく、イメージの近いプリセットから弄っていくことでどんな状況にも対応可能です。
Gt AMP Simulator(ギターアンプシミュレーター)
UAD-2プラグインシミュレーターもかなり数が揃ってきました。その中でよく使用するギターアンプ2種+ベースアンプ1種を紹介します。
UAD-2でギターアンププラグインを使用する最大のメリットは、CPUに負荷をかけず使用できるという点です。
通常高品位なギターアンププラグインは非常に重く、アレンジ段階で挿しっぱなしにしておくと、バーチャルインストゥルメントが満足に機能しなくなったりすることが多いのですが、DSPベースのUADプラグインであれば、CPU負荷を気にせず使用できます。
Friedman BE100
Marshall系の改造アンプですね。基本的にはドンシャリの深い歪みが欲しい時に使用しています。
実機を触ったことがないのですが、見た目通りMarshall系のガッツあるロックサウンドが得意なプラグインです。PRESENCEコントロールを上げていくと、耳に痛くならない範囲で音抜けが非常によくなり、SATスイッチと合わせるとかなり歪ませた状態でもパリっと抜けてきます。
ENGL® E765 Retro Tube
ナチュラルなオーバードライブサウンドからハードなディストーションまで幅広く対応可能なギターアンププラグインです。
いわゆるハイゲインアンプなのですが、歪みのレンジが広くクランチトーンもキレイに出せるので音決め以前によく使用しています。サウンドの方向性が決まったらプラグインをOFFにしながら本決定用のプラグインを別にインサートして作り込んでいます。
Ampeg SVT-3 PRO Bass Amplifier
主に打ち込みのベーストラックに使用しています。ロック系全般これでいけちゃいます。ベースアンプにはあまり詳しくないのですが、実機同様の歪みも出せるので使いやすいですね。
ULTRA HIを使用したブライトなサウンドからULTRA LOWを使用した重低域を強調したヘヴィなサウンドまで結構幅広く対応できます。
得意なのはロック系ですが、TUBE GAINとGAINの調整で様々なサウンドに対応することも可能です。
3行でまとめると
- チャンネルストリップ、EQ、コンプは個性派ぞろい!
- ギターアンプはかなり丁寧にモデリングされている!
- セール、クーポンを見逃さずお得にGETしよう!
最後に
UAD-2のよく使用するプラグインたちでした。カテゴリに若干偏りがありますが、ご了承ください。ディレイ、モジュレーション系は一つも使用していないんです。
どのプラグインもモデリングが丁寧に行われているのが印象的です。私が使用していないプラグインも品質が高いと評判のものがおおく、私だけでなく使用されている皆様のUniversal Audioへの信頼は厚いようです。
Tube-Techや1176、LA-2あたりはジャンル選ばず使用可能で、誰にでもオススメ出来ると思います。可能であればデモ版を使ってみてから導入しましょう。
この記事が皆様の参考になれれば幸いです。
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