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 Last Update : 2019.04.3

現役エンジニアが教える!おすすめチャンネルストリップ5選


商用レコーディングスタジオなどに設置されているミキシングコンソール、大型かつ非常に高価な代物で自宅スタジオに置けるようなものではありませんが、これらでなければ出せない個性的で音楽的なサウンドがあるのもまた事実です。

ヘッドアンプ(マイクプリアンプ)部分だけを抜き出したラックマウントマイクプリや、API500シリーズモジュールなどレコーディング時に使用可能なものもありますが、MIX IN A BOXなどと呼ばれるDAW内部で全て完結させるスタイルのミキシングではこれらの恩恵を受けることはできません。

今回は、DAW内部でアナログコンソールのサウンドに近づけるのに便利なチャンネルストリッププラグインをご紹介して行きます。



チャンネルストリップとは

SSL4000G

チャンネルストリップとは、マイクプリアンプ、イコライザーやコンプレッサー、ノイズゲートなどを含むミキサー(ミキシングコンソール)のチャンネルのことを指します。

多くのチャンネルストリッププラグインでは、画像のようにイコライザーモジュールやゲートモジュール、コンプレッサーモジュールといくつかの部分に別れていて、複数のプラグインを使うことなく、一つのプラグインでサウンドを作っていくことが可能です。

また、アナログ機材をモデリングしたプラグインなどでは、実機のミキシングコンソールを実際に通したような、アナログ感のあるサウンドを得ることができます。

 

チャンネルストリッププラグインを使用するメリット

USLE

好みのプラグインを組み合わせた自分なりのプラグインチェーンとは、対極に位置するのがチャンネルストリッププラグインです。

プラグインチェーンについては下記記事をご参照ください。

好みのEQやコンプを組み合わせることでインサートしたトラックのサウンドを作り上げていく場合、トラックごとに使用するプラグインが異なるためにアンサンブルの中でトラック同士が馴染まないことがよくあります。

バスコンプを使用したり、ステムに共通のプラグインをインサートするなど馴染ませる方法は少なくないのですが、デジタルEQのみで仕上げたトラックとアナログモデリングEQで仕上げたトラックでは同じバスコンプを通してもうまく行かないこともあります。

バス送りやミックスステムについては以下の記事をご参照ください。

同一のチャンネルストリッププラグインを複数トラックに使用することで、インサートしたトラック同士のキャラクターが近づき、合わせて聴いた時にトラック同士の馴染みがよくなる、結果としてMIXの出来が向上する可能性が高い、と言うのが一つ目のメリットになります。

また、単体のEQやコンプレッサープラグインには組み合わせの相性があります。感覚的には、相性が悪いコンプとEQの組み合わせでチェーンを組むとトラックが抜けて来ないように感じたり、高域をブーストしている訳ではないのに線の細さや痛さみたいなものを強く感じてしまうことがあります。

チャンネルストリッププラグイン、特にアナログ機器のモデリングプラグインでは、元となった機器のデザイン段階で各モジュール間の相性はしっかりと考えられているため、これらの相性問題とは無縁であることもメリットとして挙げられます。

Waves製などのキャラクターの強いアナログモデリングEQやアナログモデリングコンプレッサーを組み合わせると各段階で多くの倍音が付加されるため、倍音過多に陥ることが多く、これらが重なると、特に高域がうるさいMIXになりがちです。チャンネルストリッププラグインを使用する場合には、キャラクターが強いものでも倍音過多に陥りづらいのもポイントです。

結構バカに出来ないのがこの倍音過多で、MIXに慣れ始めた人のMIXを聴くとこの状態に陥っていることがよく見受けられます。確かに単一のトラックではかっこいいサウンドなのですが、MIX全体に渡ると高域がうるさく、中低域が窮屈でスペースがないMIXになってしまうので注意が必要です。

また、チャンネルストリッププラグインは、単体のEQプラグインやコンプレッサープラグインに比べると負荷が高いものが多いですが、サチュレーター、コンプレッサー、EQ、ノイズゲートなどを別々にインサートする場合と比べると総合的には低負荷で収まる場合が多いのも特徴です。

 

ここまで、いいことづくめのように聞こえますが、チャンネルストリッププラグインには、EQは使用したいけど、コンプレッサーは別のプラグインが良いという場合などに結局複数のプラグインをインサートしなくてはならない、また、接続順も他のプラグインと組み合わせると制限がある、という弱点もあります。

しかし、チャンネルストリッププラグインのEQモジュールのみを使用する、と行った場合にも、ダイナミックプラグインプロセッシング(ProTools)を有効にしたり、DSP LOAD LOCK(UAD-2)を無効にしたりすることで不使用モジュールの負荷をCPUやDSPにかけることなく使用可能です(プラグイン側が対応している場合)。



オススメのチャンネルストリッププラグイン5選

ここまでチャンネルストリップ使用上のメリットなどをお伝えしてまいりましたが、ここからは実際の使用感や特徴も含めてオススメのチャンネルストリッププラグインを5つご紹介してまいります。

使い方は使う人の数だけありますが、参考にしていただければ幸いです。

 

Universal Audio
API Vision Channel Strip Plugin

API Vision

Universal AudioのUAD-2プラグインからAPI Visionのモデリングプラグインです。

APIは知っているけどVisionコンソールは知らないという方が多いのではないかと思います。実際私も実機を拝見したことはありません。どちらかというと、コンソール自体よりも550EQや225コンプ、235ゲートや212マイクプリアンプなどモジュール単体の方が有名なのではないでしょうか。

プラグインとしては一通りの機能が揃っています。EQ下部の[PREDYN]スイッチでEQとGATE/COMPモジュールの接続順を切り替えることが可能です。また、単体機の550EQ同様のプロポーショナルQの作用でオーバー目にEQしてもサウンドが破綻することがありません。

アナログモデリングプラグイン全般の特徴として、プラグインをインサートするだけで音が変わります。いわゆるAPIサウンドと言われる抜けの良い元気なサウンドが特徴で、EQでのブーストを積極的に行わなくても抜けの良いサウンドを得ることが可能です。

そのキャラクターを活かして、ロック系のドラムトラックなどにベストマッチなチャンネルストリップです。個人的には、UNISONプリとしてドラムのレコーディング時に使ったり、打ち込みドラムのリアンプに使用したりすることが多いです。ドラムのキット全てに適用することで、セット全体のサウンドを方向付けることができるので、MIX段階での手数が減り、ストレートに出してやることができています。

ざっくりと大きくカットするEQやQを絞った繊細なEQを苦手としているので、前段にデジタルEQをインサートして苦手な部分を補完し、Visionの550LEQではブーストのみを行ったりする使い方が多いです。

 

Universal Audio
SSL 4000E Channel Strip Collection

USLE

バージョンアップでUNISONに対応したUAD−2のSL4000Eプラグインです。

もはや説明不要とは思いますが、多くの名盤に使用されたSolid State Logic(SSL)のSL4000Eをモデリングしたプラグインで実機同様、チャンネルに必要十分な機能が備わっています。EQとダイナミクスモジュールの接続順も[PREDYN]ボタンで簡単に切り替えることができます。

プラグインならではのユニークな機能として、EQのタイプを切り替えることが可能です。SL4000EのEQ部には初期型でGAIN値は低いもののQが狭く、積極的なEQに効果的な「BROWN KNOB EQ」と後期型で緩やかなEQカーブを描くことができる「BLACK KNOB EQ」があるのですが、このプラグインではEQモジュール中央のSELECTスイッチで2つのEQを切り替えて使用することができます。ちゃんと低域のノブの色も変わります。

個人的にSSLのEQは少しの動きでもしっかりと効果が感じられるEQで、広めのQでざっくりから狭めのQでガツッとまで幅広く対応可能な印象を持っています。効果が感じやすいのでオーバーEQに陥りづらく、原音の持っている響きを殺すことなく綺麗に作用してくれる印象です。

アップデートでUNISONに対応したことでレコーディング時にも積極的に使用することが可能になりました。EQは使用せずにマイクプリとフィルターのみを使用することが多いのですが、録れた音を聴くとしっかりとSSLサウンドで、トラックを重ねていっても飽和感が少なく、自然と混ざっていく感覚が得られます。

MIDIインストゥルメントをリアンプしたり、オケ馴染みの悪いトラックにインサートしたりと幅広く使用可能な点が素晴らしいです。先のAPI Visionもそうですが、UADプラグインはCPUベースではなく、DSPベースなので、トラック数の多いセッションでも負荷を分散できるため大変助かっています。

前述のVision同様、使用にはDSP内臓のUniversal Audio製オーディオインターフェースやサテライトユニットなどが必要になります。

UNIVERSAL AUDIO / ARROW
UNIVERSAL AUDIO / ARROW

UNIVERSAL AUDIO / APOLLO X8
UNIVERSAL AUDIO / APOLLO X8

UNIVERSAL AUDIO / UAD-2 Satellite Thunderbolt OCTO CORE
UNIVERSAL AUDIO / UAD-2 Satellite Thunderbolt OCTO CORE

※Universal Audio製のオーディオインターフェース、DSPはUSBやTB2/3など接続インターフェースごとに動作環境が細かく設定されています。お使いのMac/PCのインターフェースをよく確認するようにしましょう。

Waves
SSL 4000 Collection

WSSL

WavesのSSL 4000 CollectionにはSSL E-ChannelとSSL G-Channelの2つのチャンネルストリッププラグインが収められています。他にもSSL G-EqualizerとSSL G-Master Buss Compressorがバンドルされているのですが、今回は2つのチャンネルストリッププラグインをご紹介いたします。

ツマミの配置こそ異なりますが、E-Channelは上記UADの4000Eと同機種のモデリングです。が、サウンドは全くの別物です。当ブログではことあるごとに言っていますが、Wavesは全体的にサウンドが派手に仕上がっています。E-Channelも例外ではなく、他社の4000Eシリーズよりも派手めに仕上がる印象です。

こちらはBLACK/BROWNの切り替えはできず、BLACKノブ固定となっています。

SL4000GをモデリングしたG-ChannelはEQのブースト前やカット前に逆方向のEQが行われる特性が再現されていて、4000Eとは全く異なるタイプのEQになっています。どちらかと言うと微調整向きと言うよりは音作り向きのEQで、どんどんブーストカットして使って行くのに向いています。

G-Channelはかなり派手な効き方をするので、トラックが浮いてしまっていないかを適宜確認しながら使用することをオススメいたします。また、バンドルされるG-EqualizerはG-ChannelのEQ部分を抜き出したもので、EQだけ使用したい場合には便利です。

G-Buss Compressorもバスコンプの名機中の名機のモデリングです。G-Channelの元となったSL4000Gのマスターバスコンプということで、G-Channelとの相性も抜群です。
WAVES / SSL 4000 Collection
WAVES / SSL 4000 Collection

 

Softube
Console 1

C1_Over

当ブログでも一押しのハードウェア+プラグインセット、SoftubeのConsole 1です。

ここまでご紹介してきたプラグインとは見た目からして違って、非常にデジタルチックな装いとなっていますが、アナログ機器のモデリングプラグインです。基本セットには専用コントローラーとSL4000Eのモデリングプラグインが含まれています。

Console 1についての詳細な解説については、下記記事をご参照ください。

また、オプションとして、APIコンソールやNeveコンソールのモデリングプラグインも用意されています。

基本セットのSL4000Eモデリングは、アナライザ付きのEQやトランジェントシェイパー内臓のゲートセクションなど、SL4000Eのサウンドを持ちながら、操作性、拡張性が大幅にアップした現代的なプラグインとなっています。

各セクションに個別のプラグインをロード出来るという機能によって、モジュールを個別に選択できない、というチャンネルストリッププラグインの弱点が克服されているのも大きな特徴です。モジュールとしてロード可能なのは、各Softube製プラグインとUniversal Audio製のUADプラグインの一部です。

付加する倍音を能動的にコントロール可能なDRIVEやCHARACTERを調整することでUADでは大人しすぎるけど、Wavesだと派手すぎるといった場合にも対応可能となっています。付加される倍音にも無理やり感がなく、多めに付加してもサウンドが破綻しづらいデザインになっているものありがたいところです。

American Class AとBritish Class Aの追加でSSLに加えて、非公式ながらAPIとNeveのモデリングも可能になりました。どちらも頻繁に使用していますが、良い感じです。American Class AはSSLに比べて若干負荷の重さが気になりますが、UADと組み合わせたりして負荷を分散させて使用しています。

サウンド面も素晴らしいのですが、最大の特徴は画面内とツマミの配置が完全に一致している専用コントローラーの存在です。このコントローラーのおかげで作業時間が大幅に短縮できています。
SOFTUBE / Console 1 Mk II
SOFTUBE / Console 1 Mk II

iZotope
Neutron 2

neutron2

今回の記事でご紹介するべきかを最後まで悩んだのがこちら、iZotopeのNeutron 2です。アナログモデリングプラグインではなく、純粋なデジタルベースのプラグインですが、特筆すべきはその他にはない多機能です。

先代Neutronの段階で各トラックに最適な処理を自動的に、短時間で行うことが出来る、というとんでもない触れ込みだったのですが、2になってさらに機能が追加されています。

前述の自動EQなどを行ってくれるTrack Assistant機能に加えて、Neutron 2がインサートされたトラック間のマスキングを自動で回避してくれるMaskingや片方のトラックでカットEQをした部分をもう一方のトラックでブーストしてくれるInverse Link機能などが追加されています。

また、Advancedバージョンでは同社の統合マスタリングプラグインOzone8との連携で、帯域ごとのサウンドをこれまたざっくりとした操作でかなり綺麗にコントロールしてくれるTonal Balance Control機能を使用することができます。

今回オススメしているプラグインの中で、唯一、私が実戦投入していないプラグインがこちらのNeutron 2になります。弄り倒して高機能な点は非常に理解ができたのですが、Track Assistant機能を使用するとエンジニアの個性が出しづらいと言った部分がネックになっています。逆にTrack Assistantを使用しないなら、他の使い慣れたプラグインを使用した方が短時間でMIXをコントロール出来る、という点も実戦投入していない理由になっています。

だったらオススメするな、という話ですが、Neutron 2はMIXに慣れていない人には非常にオススメ出来るプラグインというのが使用してみた感想です。

MIXに慣れていれば、元のサウンドを聞いた段階で目的のサウンドとの差を見つけて、その処理の為にEQであったり、ダイナミクス系のプロセッシングを行うということが自然に出来ると思います。しかし、初心者の方は、なんか目的のサウンドとは違うけど何が違うかわからない、あれこれと試行錯誤を繰り返すうちに何が目的かわからなくなってきてしまった、ということが多々あると思います。

そう言った時にNeutron 2のTrack Assistantを使用することで、元のサウンドにどういった処理をするとサウンドにどういった影響が出るのか、と言った部分を視覚的に、聴覚的に感じることが可能となります。当然、その処理と結果の関係を頭の引き出しの中に蓄えていく必要はありますが、試行錯誤の取っ掛かりには非常に優れたプラグインということが出来るのではないでしょうか。

また、前述の通りNeutron 2はデジタルベースのデジタルプラグインであるため、基本的には勝手に倍音が付加されることがありません。倍音はコンプレッサーで潰したときと、エキサイターで能動的に付加することで得られます。そのため、倍音のコントロール方法を学ぶのにも適していると言うことが出来ます。

先代に引き続いて動作に関してはかなり重量級のプラグインとなっていますが、用途を絞って使用したり、練習用の参考に使用したりすることでMIXの上達には役立つオススメプラグインです。
iZotope / Neutron 2 Standard
iZotope / Neutron 2 Standard

Tonal Balance Controlを使用する場合には、Neutron 2 AdvancedとOzone 8 AdvancedとのセットO8N2バンドルがオススメです。
iZotope / O8N2 Bundle
iZotope / O8N2 Bundle



☆まとめ☆

  • 同じプラグインを使用することでトラック同士の一体感を得やすい!
  • プラグイン同士の相性問題も安心!
  • 倍音過多になりづらい(とても重要)!

 

最後に

今回はチャンネルストリッププラグインを5種類紹介して参りました。

以前は時間短縮用のとりあえずインサートするプラグイン種と誤認していたため(?)、ほとんど使用していなかったのですが、現在はほとんどのMIXに使用しています。実使用では、前段にデジタルEQでカットだけしてからCOMP→EQの順でチャンネルストリップを使用することが多いです。

元気なロックならAPI主体に、ダンストラックやレトロなロックチューンなど太いサウンドが欲しければNeve主体に、ポップスやバラードなどではSSL主体にチャンネルストリッププラグインを使用することで、EQの数値だけでない部分でMIXにカラーをつけることが出来ます。

プラグインの選定の段階では意識的にチョイスしていますが、サウンドを混ぜようとしてMIXをしなくても自然に混ざっていってくれる感覚が得られるので、作業的にも楽になりました。

 


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ZAL



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