以前の記事でステムミックスについて触れましたが、今回はDAW上で完結できるステムミックスの方法と手順についてご紹介していきます。
ステムミックスといっても馴染みのない言葉だと思うのですが、各パートごとにサブミックスを作成し、段階的に2MIXにしていく手法のことです。参考記事も合わせてご覧ください。
当記事内ではProToolsを使用していますが、他のDAWでも同様の方法で行うことが可能なので参考にしてみてください。
目次
ステムミックスの手順
では、実際にProToolsを使用して、ステムミックスの行い方を解説していきます。
1.ステレオAUX入力トラックを作成する
このとき、⌘+Shift+Nのショートカットを使用すると便利です。
ちなみに新規トラックダイヤログでは⌘+カーソル←/→でMono/Stereoの切り替え、⌘+カーソル↑/↓でトラックの種類、カーソルの↑/↓でトラック数、⌘+Shift+↑/↓で同時に複数の種類のトラックの作成、など多くのショートカットキーがあります。
よく使用するショートカットなので、ついでに覚えておくと作業効率がアップします。
ProToolsの便利なショートカットは下記リンクでもご紹介しています。参考にしてみてください。
2.作成したAUXトラックの入力を任意のBusに設定する
リバーブなどのセンドエフェクトを使用する際と同様に、AUX入力トラックの入力を任意のBusに設定します。
今回はBus 1-2に設定しました。
3.適宜AUX入力トラックの出力アサインを変更する
通常は初期設定のメイン出力で問題ないです。ドラムのサブミックスをさらに楽器全体のサブミックスに送る場合などは、ここで設定する必要があります。
また、直接メイン出力にアサインするのではなく、すべてのトラックを一つのステレオAUXトラックに出力し、サブマスターフェーダーを作ることもできます。
サブマスターフェーダーを作成するメリット
ProToolsなど一部のDAWでは、Masterトラックのインサートスロットはポストフェーダーです。
ポストフェーダー(POST FADER)では、インサートされたプラグインの入力がフェーダーの後段に接続されるため、プラグインへの入力がフェーダーの影響を受けます。極端な話、フェーダーを絞り切り(-∞)に設定すると、プラグインには一切信号が流れません。
つまり、リミッターなどをインサートしてから現在のバランスを保ったまま全体の音量を調整する、といった場合にプラグインを含めた再調整が必要になります。
AUXトラックのインサートスロットはプリフェーダー(PRE FADER)なので、サブマスタートラックを作成しておくと、バランスを保ったままの音量調整が可能になります。
4.オーディオトラックの出力アサインを変更する
今度はオーディオトラックの出力を先ほど作成したAUXトラックにアサインしていきます。
注意点としてはモノラルオーディオトラックをアサインする場合でも、Bus 1-2(Stereo)にアサインする点です。Bus 1やBus2にアサインすると、PANで言う振り切りの位置に定位が固定されてしまいます。
ベースのラインとマイクや複数トラックに渡ったメインボーカルトラックをまとめる時など、定位がセンター固定のサブミックスを作成する場合は、モノラルのAUX入力トラックを作成し、そこへオーディオトラックの出力をアサインするようにしてください。
また、このとき、サブミックス内のオーディオトラックに使用するリバーブ類も同じAUX入力トラックに出力アサインしておくと、相対的なリバーブ感を保ったまま音量を調整できます。リバーブをコンプレッションしたくない場合などは直接メイン出力にアサインするのが良いでしょう。
私はサブミックストラックのフェーダーを基本的に0位置で使用するために、リバーブはサブミックスに出力アサインせずに使用することが多いです。必要であれば、後からでも簡単に出力アサインを変更できます。
5.AUXトラックのセーフソロ機能をオンにする
さて、ここまでの操作でサブミックストラックの作成は完了しました。
しかし、このままの状態ではサブミックス内のオーディオトラックをソロで聴きたいときに、聴きたいトラック+AUXトラックの両方をソロにしなくてはなりません。これでは非常に不便なのでセーフソロ機能をオンにします。
セーフソロ機能とは、他のトラックがソロになった際に、同時にソロになる機能です。今回のような場合だけでなく、メインボーカルトラックに使用し、コーラスパートをソロにすることで、2声でのピッチの確認などにも使用されます。
操作はサブミックストラックの[S]ボタンを⌘+クリックです。[S]ボタンが薄く表示されるようになればOKです。
6.サブミックスにプラグインをインサートする
作成したサブミックスフェーダーのプラグインスロットにお好みのプラグインをインサートすれば、サブミックス全体にプラグインエフェクトがかかり、サブミックスのまとまり感が出てきます。
おすすめのプラグインはアナログEQやアナログCOMPのモデリングプラグインです。
これらのプラグインをうまく使用することで、アナログ段でMIXを行ったような独特の歪み感、混ざり感を得ることができます。いわゆるバスコンプ、っていうのもこのバスにかけるコンプレッサーだからバスコンプなのです。
また、マルチバンドコンプレッサーやリミッターなどを使用することで、パートごとのダイナミクスを制御する方法もおすすめできます。おすすめプラグインについては下記記事も合わせてご覧ください。
3行でまとめると
- 各トラックの入出力をアサイン
- 各パートごとにまとめてMIX
- モデリングプラグインでアナログ感をGET
最後に
今回はサブミックスを使用したステムミックスのお話第二段でした。
試してみれば、一旦まとめて同じプラグインを通すことで、
MIXにまとまりが出てくるのがわかると思います。
ダイナミクスのコントロールがしやすいのもメリットの一つですね。
ステムを使用することで、MIXも一段上の仕上がりを目指せるので是非お試しください。
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