宅録環境ではギターアンプを鳴らしてマイク録りが可能なことは少なく、DAW内でギターアンプのサウンドを出さなくてはなりません。
今回は、DTMギタリストがギターサウンドを作るのに必要不可欠なギターアンプシミュレータープラグインを紹介していきます。
一言にギターアンプシミュレーターといっても、動作の軽さや内臓エフェクトの種類、有名アンプのモデリングなど、様々に特徴があります。
では実際にどのギターアンプシミュレータープラグインを使用すればよいのか、ギターアンププラグイン5種+1種+おまけをご紹介し、それぞれの特徴を見ていきます。
また、後半では特徴の比較と、どういった方にどのプラグインがオススメかといったところもご紹介していきます。
目次
ギターアンプシミュレータープラグイン紹介
今回の記事では、個人の主観によるところが非常に大きく、『好み』といったところが評価の大多数を占めています。各プラグインには試用版といった位置づけのものも用意されている場合がありますので、可能な限りご自分で試されることをオススメいたします。
また、ここから先に紹介するサンプルは全て同じオーディオデータを使用しています。当然アンプの設定状況など全く同じ条件で比較はできませんが、参考になれば幸いです。
サンプルには、OverdriveサウンドにはGibson Les Paul、リアピックアップ(Seymour Duncan SH-14)、ボリュームトーンフル、CleanサウンドにはFender American Deluxe Stratcaster Plus、フロント&センターピックアップ(Seymour Duncan STK-6)、リアピックアップ(同 STK-9b コイルタップ)、ボリュームトーンフルを使用しています。
クリーントーンのサンプルでは前半がフロントピックアップとセンターピックアップのハーフトーン、後半がリアピックアップ(コイルタップ)とセンターピックアップのハーフトーンを使用しています。
IK Multimedia
AmpliTube4
ギターアンプシミュレーターと言えば昔からAmpliTubeシリーズは超有名どころ、ド定番です。
特徴
シミュレート元のアンプの再現度はNo.1なのではないでしょうか。小さくまとめることもせず、元のアンプのキャラクターを再現できていると思います。また、ストンプとラックのエフェクトセクションも優秀で、ルーチンの自由度も合わせて、様々なアプローチでサウンドを作っていくことが可能です。
内臓エフェクトの種類も豊富で、他のプラグインを使用しなくても大抵のエフェクトはAmpliTubeだけで完結できます。MONO入力→STEREO出力に対応していて、ステレオエフェクトなどの効果も綺麗に現れます。
モダンハイゲイン系から、ビンテージローゲイン系、トランジスタのクリーントーンなどあらゆるジャンルで穴がない非常によくできたプラグインですね。また、アンプにマイクを立てた時のシミュレートも秀逸で、実際にキャビネットが鳴っている感じがよく出せています。
Custom Shopを利用することで、多くの実名アンプやアーティストシグネイチャーを使用することができることもメリットとして挙げられます。
また、2台のアンプヘッドを2台のキャビネットから鳴らしたり、2系統のエフェクトチェーンをそれぞれのアンプに使用したりと並列動作をさせることが可能です。ルーチンのプリセットから選択するだけの簡単操作で設定可能なので、クランチとクリーンのユニゾンプレイなんてこともAmpliTubeのみで可能です。
弱点としては、その強烈な負荷でしょうか。DAW上で複数のギタートラックに同時にAmpliTubeをインサートするとCPUメーターが大変なことになります。
こちらのJAZZ AMP-120なんかも配色、ネットの色はもちろん、サウンド面もしっかりとJCを再現しています。
当然、全てのアンプの実機を使用したことはありませんが、実機でのツマミ位置とサウンドの関係性がうまく再現されていて、感覚的に操作しやすいことも特徴に挙げられます。Marshall系のツマミを上げないと芯が出てこない感じや、JCのいかにツマミを上げずに音を作るか、など実機感覚で使用可能です。
全体的にサウンドに色付けが無い分、他のプラグインと比べて若干地味な印象がありますが、よく言えば耳馴染みがよく、アンサンブルの中で浮いてしまわない落ち着いたサウンドと言うこともできます。
サンプルサウンド
Overdrive、Cleanともに上記画像のセッティングで録っています。Overdriveに関しては、プリセットを読み込んで INPUT/OUTPUTのレベルを調整したのみの状態です。
楽器の腕はさておき、いい感じに生のアンプ感が出ているのではないでしょうか。
Positive Grid
BIAS FX
ここ最近の話題作プラグイン、BIASシリーズからBIAS FXです。ハードウェア製品も数多くリリースされていて、これからの展開に期待のメーカーです。
特徴
多数のエフェクトペダルやラックエフェクトが内臓されていて、BIAS FXのみでギターサウンドに関しては完結できるのが最大のメリットです。
サウンドの傾向としてはハイゲイン系に非常に強い印象があります。逆にクリーントーン系はあまり振るわないのかな、といったイメージです。
使用感としては、アンプシミュレーターと言うよりもエフェクトボードにペダルを並べていっている感覚に近いです。どこかで見たことのあるようなデザインのペダルを並べていくのは子気味良いものです。
こちらも、MONO入力→STEREO出力に対応していて、ステレオエフェクトで音を広げることが可能です。
このBIAS FXに限ったことではないのですが、DAWやプラグインでは左から右に音が流れて行きます。つまり、実際のコンパクトエフェクターと入出力の向きが逆になっています。仕方のないことなのですが、横並びに配列されている以上、非常に気になってしまいます。
アンプのラインナップはかなりマニアックなところを中心に揃えている印象です。それぞれの再現度については正直そこまで高いとは感じませんが、いい意味で扱い安いサウンドに落ち着いているのかな、と感じます。
経路上にスプリッターとミキサーを配置してDUALモードで使用すると、2台のアンプとそれぞれのエフェクトを並列で処理することが可能です。また、それらが一画面に表示されているので、非常に見やすいのが特徴です。
クリーンカテゴリーにFender系のコンボアンプのシミュレートが複数あるのですが、実機とは比べ物にならない位歪みます。クランチに属しているアンプ群もかなりしっかりと歪みます。INPUTのレベルを抑えるとそれなりの感じになるのですが、実機を知っているとかえって戸惑ってしまうかも知れません。
また、基本的にはどのアンプもコントロールが統一されています。扱い安い反面、スイッチなどを使用してサウンドを作っていくタイプのアンプは実機とかけ離れた操作性になってしまっています。
このこともあり、完全なクリーントーンを出すのが非常に難しいプラグインになっています。深い歪みに関しては使いやすくまとまっているので、ハイゲイン系アンプシミュレーターとして使用するにはオススメできます。
歪みサウンドを中心に全体的にサウンドが中域に寄っている印象があります。ローエンドハイエンドの主張が少ないので、他の楽器との絡みはよいかも知れませんが、使用する楽器によっては低域や高域が物足りなく感じることがあるかも知れません。
サンプルサウンド
こちらも同様に画像のセッティングを使用しています。
クリーントーンを出すのに非常に苦戦した結果、Matchlessに落ち着きましたが、GAINをこれ以上下げると音が出なくなるところまで下げても、ピックが深めに入ると歪んでいるのがわかる位のクランチトーン位にはなっています。
また、オーバードライブのサンプルに関しても、いい感じで鳴ってくれていますが、Plexi Super Leadはこんなに歪むアンプではないと思っています。
今回は上げられていませんが、ハイゲイン系のアンプに関しては、非常に芯のあるサウンドを出してくれます。
Native Instruments
Guiter Rig 5
プラグインシンセ欲しさにKOMPLETEを導入すると付いてくる(?)Guitar Rigシリーズです。
持っていても使ってない人が多いアンプシミュレータープラグインの第二位だと思っています。
特徴
バンドル品とバカにできないクオリティの高さと、他のプラグインと比べて負荷がかなり軽いことが挙げられます。アンプモデルも豊富に揃っていて、幅広いジャンルのサウンド作りに対応しています。
また、アンプのマイキング調整が簡単操作ながらツボを抑えていて、あと少し抜けが欲しいときなどに大変役に立ちます。
アンプのネーミングに関しては、不可解な点が多いものの、見た目で大体は想像ができるので、好みのサウンドも見つけやすいのではないでしょうか。
ツマミ位置とサウンドの関係は、実機とはかなりことなりますが、12時方向を基準に微調整をしていくことで使える音がすぐに見つかります。
MONO入力→STEREO出力に対応しているのですが、ステレオ感を調整可能なエフェクトが少なく、狙った効果を得るのは難しいかも知れません。ちょっと残念なところです。
信号の流れも上から下にラックのようなものを流れていくスタイルなので、わかりづらくもならず、エフェクターなどのモジュールをドラッグ&ドロップで間に差し込んだり、順番を入れ替えたりも簡単にこなせます。
サンプルサウンド
画像のセッティングでの出音はこんな感じです。JCの実機を使用している人にはかなりの違和感があると思います。
ただ、ここまでに紹介してきた2種のプラグインは単体版で、こちらはシンセバンドルの付属品(失礼)と考えると十分に通用するサウンドなのではないかと思います。
負荷が軽いこともあり、ちょっとお試しでインサートしてみて、サウンドを詰める段階になったら改めて別のプラグインで作業をする、なんて使い方もありなんじゃないでしょうか。
Avid
ELEVEN
ハードウェアのELEVENプリアンプ&オーディオインターフェースのアルゴリズムをプラグインにしたELEVENプラグインです。
Avidからは他にもコンパクトエフェクタープラグインが数種リリースされています。ProToolsユーザーにはギタリストが少なかったのか、他者に比べて少し乗り遅れた感はありますが、そこそこに粒揃いなプラグインが揃ってきています。
現在もProToolsユーザー自体の絶対数が少ないために、ELEVEN Rack共々使用している方は少ないように見受けられます。
特徴
負荷が軽めでパラメーターも少ないため、挿してすぐに結果が出るプラグインという印象です。操作もいたってシンプルで、AMP TYPEとCAB TYPEを選択して、ツマミを回すだけです。
残念なことに内臓エフェクトは搭載されておらず、エフェクトには他のプラグインが必須になります。エフェクトがないため当然MONO入力→STEREO出力には対応していません。
意外(失礼)なことに、シンプルなMIC TYPEとON/OFF AXISのみで調整するマイクポジションコントロールの効きが非常にいい感じで、EQの代わりに使用することもできちゃいます。
アンプモデルも有名どころを中心に抑えていて、幅広いジャンルに対応可能です。
操作系なのですが、一言で言うと、ツマミが効きません、特にEQのツマミが効きません。いや、音は変わるのですが、補正用EQのレベルでしか動作していない印象を強く受けます。
確かに負荷は軽いのですが、エフェクト未搭載な点と、ツマミの効きの点でかなり慣れが必要なプラグインと言わざるを得ません。
挿して、アンプとキャビを選んだ段階である程度完成したサウンドが出てくるので、取り敢えずインサートして、あとで別プラグインに差し替えたりリアンプする前提で使用するには便利なプラグインです。
サンプルサウンド
例によって画像のセッティングでの出音です。Overdriveが他と比べて重心が高くハイ上がりになっているのですが、まとめようとすると急激に抜けが悪くなってしまったので、ここに留めたためです。EQのポイントがあまり有効に活きていない感じがします。
Overdriveは他と比べると若干残念な感じになっていますが、Cleanの黒TWINは今回試した中では、かなりいい鳴りをしているように感じます。例によって、楽器の腕の話は完全に置いておきます。
Waves
GTR
持っていても使ってない人が多いアンプシミュレータープラグイン、栄光の第一位です。
Wavesの各種バンドルに含まれていて、気がつくと単体アプリケーションごとインストールされてくるのですが、使用したことがない方が非常に多いです。
特徴
負荷がとても軽いです。ギターアンプシミュレータープラグインは倍音の演算など複雑な演算を多くするため、プラグインの中でも負荷が非常に高いカテゴリーなのですが、GTRに関してはその限りではなく、軽快に動きます。
AMP TYPEとCABINET、MICROPHONEを選んでツマミを触るだけ、と言う点でELEVENと通じるものがありますが、こちらはアンプの名称も見た目も独自路線を貫いているので、よくわからない点が多いです。
上の画像、AMP TYPEにPlexiと付いているので、Old Marshall系のサウンドを出すアンプだと思うのですが、紫色をしています。そして、Crunchって書いてあるのに、すごく歪みます。極め付けは、高域が鳴っている気がしない点です。もしこれがMarshall系のアンプをモデリングしたものであれば、GAINを絞っていくと低域が自然と削れ、音が抜けるようになってくるハズなのですが、逆のことが起こります。
AMP TYPE=Cleanはこんな感じです。茶色一色。
エフェクト内臓でもないのにMONO→STEREOプラグインがあると思い、挿してみると、なんということでしょう、急にインターフェースが切り替わりました。位相切り替え付きのステレオディレイが搭載されています。エフェクトとしてのディレイというよりもアライメント補正のためのディレイのような感じです。
サンプルサウンド
画像のセッティングだとこんな感じになります。
改めて聴いてみると、Overdriveの抜けなさ、Cleanの細さが気になります。Cleanの方は抜け感を得るためにBASSをバッサリいっているので納得できるのですが、Overdriveはイマイチですね。
確かに負荷が非常に軽いのですが、他の選択肢がある場合には他のアンプシミュレーターを使用するのがよいと思われます。
Softube
Marshall Plexi Super Lead
メジャーどころではないですが、今回+1種としてSoftubeのUAD-2プラグインMarshall Plexi Super Leadもご紹介いたします。
他のプラグインと比べて単一のアンプシミュレーターですが、アナログ機器のモデリングに定評のあるSoftubeがMarshallライセンスのもと丁寧にモデリングしたプラグインということもあり、かなり期待ができますね。
特徴
まずは、見た目の話からで大変恐縮なのですが、どうでしょう。Marshallアンプの皮の感じや、使い込まれて燻んだ金属の質感、取っ手周りのサビや、外側の段差によって押されて直線ではない枠、取れてしまったままのノブのフタなど、モデリングした個体を視覚上もモデリングしています。
見た目のモデリングが秀逸なのはテンションの上昇にも繋がるので、素晴らしいことなのですが、GUIを綺麗な状態の個体と選択可能な仕様になっていてくれれば更によかったと思います。MIDDLEの現在の設定位置が非常に見辛いのです。
操作系も実機そのものです。残念ながら私は実機を鳴らしたことがないので、ツマミの効果範囲やゲインレンジについては忠実かどうかのジャッジを下すことができませんが、Softube社への信頼から、動作は実機そのものなのだろうと信じています。
アンプのツマミ以外にもINPUTのジャックを選択できるようになっていて、細かなところですが、サウンドに関わることはしっかりとモデリングされている印象を受けます。
マイクの調整に関しては、別画面での操作となりますが、マイクのセットを3つのうちから選んで、フェーダーでオンマイク2本とルームマイク1本のバランスを取る、といったものです。奥行き感や抜け感を調整可能なので、MIX前にある程度サウンドを決定できるのがよいですね。
しかし、初期状態でマイクのEQで高域が足されているので、ギターのサウンドを決めた後にMIXをする場合にはこれをフラットに戻してから使用した方がよいでしょう。私はモニター用、リアンプ用共に起動直後にフラットにしてしまいます。
サンプルサウンド
楽器の腕については触れずに聴いてみると、本物のMarshall感が出ています。しかも、ちゃんとOld Marshallと言うところまで伝わる表現力です。
画像ではわかりづらいですが、今回のOverdriveサウンドはPlexi Super Leadのゲインレンジ上端付近です。本来はもう少し歪みを落としたところを得意とするプラグインなのですが、偉大な先人達よろしく突っ込んでみるとちゃんと答えてくれています。
〜番外編〜
Kemper Profiling Amplifier
近年ではギターアンプシミュレータープラグインや、実際のギターアンプを使用したリアンプだけでなく、ギタープリアンプなどを使用したリアンプも一般的になっています。
今回は番外編として、Kemper Profiling Amplifierでリアンプしたサウンドも合わせてご紹介させていただきます。
サンプルサウンド
OverdriveはJCM2000をCleanはJC-120をプロファイリングしたデータを使用しています。
JCM2000は元々はもっと歪んだセッティングのものをGAINだけ落としたので、若干薄い感じになってしまっていますが、JCに関してはこんな音してるのではないでしょうか。
リアンプ専用に導入することはないと思いますが、普段ライブで使用しているセッティングのままリアンプができたり、エフェクトを多用したギタートラックと同じセッティングを使用して音源そのもののサウンドでライブ演奏が可能であったりと、ライブ主体の方にはメリットも大きいと思います。
Kemper Profiling Amplifierについては以下の記事もご参照ください。
プラグイン比較
各プラグインを簡単にご紹介したところで、実際に項目別に比較を行っていきます。
CPU負荷に関しては、使用DAWやPC環境、プラグイン内部で使用するエフェクト数などによって様々ですが、今回は、エフェクトなし、アンプでの歪みのみ程度の負荷で考えていただければと思います。
CPU負荷
これは圧倒的にGTRが軽いです。ELEVENとGuitar Rigが概ね同程度、BIAS FXとAmpliTubeが最も重いという結果になりました。
Plexi Super Leadに関しては、外部DSPで動作しているので、単純な比較はできませんが、UADのDSP専有率をみるとかなり重いプラグインに含まれます。Softube Nativeで使用する場合にはBIAS、Amplitubeと同程度の重さを覚悟しておいた方がよいでしょう。
Amplitube3にはECOモードという負荷軽減モードがあったのですが、4ではモード切り替えがなくなり、Preferenceで項目別に切り替えるスタイルになったようです。しかし、3の頃から低負荷モードは犠牲にするものが大きすぎて使用できない状態が続いています。スプリングリバーブのシミュレートをデジタルリバーブに置き換える位の使用なら実用上問題ないかも知れませんが、それによって軽減できるCPU負荷など知れています。
CPU負荷については、高度な演算を行っているものほど負荷が重い、という大原則通りの結果に落ち着いている印象です。
CPU負荷については下記ページで今回ご紹介しているものも含めて比較しています。合わせてご参照ください。
アンプモデル
アンプモデルの数については、AmpliTubeが圧勝です。また、AmpliTubeはCustom Shopでの個別課金でアンプモデルを増設可能なので、好みのアンプを後から追加することもできます。さらにCustom Shopで販売されているアンプモデルが全部入ったAmplitube MAXも用意されています。
モデリングの精度といった部分については、Softubeが一歩抜けているように感じました。用意されているアンプモデルが少ないので、好みのアンプがない場合が多いと思われますが、もし見つけたら持っておいて損はないのではないでしょうか。Marshall系のモデリングは星の数ほどあれど、Old Marshallだとハッキリと表現できているのはSoftube製ならではです。
Guitar Rigはポイントごとのモデリングはしっかりとしている印象ですが、ギター本体のボリュームを絞ったときや、GAINを絞っていったときなどの表現力に欠ける印象を受けます。フルアップしたエレキギターを歪ませてプレイする分にはあまり気にならない部分ですが、ピッキングニュアンスなどプレイの味となる部分が出しづらいように感じます。
GTRとELEVENについては、この点厳しいかも知れません。GTRは元々、特定のアンプに似せて作っているわけではない、と言われてしまえばそれまでなのですが、ELEVENはしっかりと特定できるような名前をつけているのなら、もう少し頑張って欲しいところではあります。
使いやすさ
『操作子が少ない=操作が簡単=使いやすい』と簡単に決めることはできませんが、やはり、多すぎる操作子は直感の妨げになることが多いです。
ELEVEN、GTR、Softubeに関しては、実際のアンプと同様にツマミ類を弄るだけで一通りの音作りは完了するため、初心者の方にもとっつきやすいかも知れません。
AmpliTubeとBIAS FXは目的のサウンドをカテゴリーから探すことができるため、方向性を定めてプリセットを探して、そこから細かく弄っていくというスタイルになります。気に入ったサウンドはプリセット保存をすることが可能ですが、それに頼りすぎると全部の曲で同じ音がなっていることになり兼ねないので注意が必要です。
操作可能なパラメーターが非常に多いため、細かくサウンドを作り込むことができることはメリットですが、初心者にはとっつきづらいというデメリットにもなります。
Guitar Rigではアンプモデルがカテゴリー分けされていないので、モデルとなったアンプがハイゲイン系なのか、ローゲイン系なのかをある程度知っておく必要があります。といってもメジャーどころのアンプモデルが主体なので、そこまで大きな問題にはなりません。
ツマミ類の精度に関してはSoftubeとAmpliTubeが実機に近い感覚で使用できる印象です。逆にBIAS FXやGuitar Rigは忠実さを狙わず、意図的にツマミの美味しい部分を中心付近にシフトさせているように感じます。
サウンドの可動域を考えるとSoftube、AmpliTubeが、微調整のしやすさで考えればBIASシリーズやGuitar Rigが扱いやすいと言えるのではないでしょうか。
オススメのギターアンププラグイン
ではここまで紹介・比較を行ってきて、どういった方にどのプラグインがオススメなのかを考えていきます。
まず、DTMを始めたてで、DAW標準のプラグインしかない状態の方にはNative InstrumentsのKOMPLETEにバンドルされていることからも。Guitar Rigをオススメします。DTMで曲を書くとなると、どうしてもDAW標準のソフトシンセでは物足りなくなるので、各種インストゥルメントプラグインが必要になります。
KOMPLETEには一通りのソフトシンセやエフェクト系のプラグインもバンドルされているので、同時に入手可能なGuitar Rigを使用するのが無駄がないからです。
Native Instruments / KOMPLETE 11
エンジニア志向で、プロと同じプラグインを使ってMIXをしたい、自分はギターを弾かないけど、ギターアンププラグインも持って起きたい、といった方にはGTRがバンドルされているWaves Gold辺りがオススメできます。
Wavesのプラグインはレコーディング業界の標準となっていて、商用スタジオでもバンバン使用されています。ギターを弾かない方でもGTRであれば簡単に操作可能な点と、MIX用プラグインバンドルに付属してくる(?)といった点で、ギターをメインに弾かない方にオススメです。
WAVES / Gold Bundle
サウンドのクオリティやバリエーションを第一に考えるDTMギタリストには、AmpliTubeが一押しです。アンプモデルも多く、それぞれが丁寧に作り込まれている印象があり好感が持てます。まだ試したことのないモデルも多くあるので、どこかで使って行こうと思っています。全部入りのAmpliTube MAXにも惹かれるものがあります。
不慣れな方には操作項目が多くて不安もあると思いますが、プリセットも優秀で、そこからの微調整で使用していくのもアリだと思います。
また、色々なアンプモデルに簡易的に触れることができるので、それぞれの特性や、自分なりの使い所を見つけて行ければ、将来的に武器になってくるでしょう。
IK MULTIMEDIA / AmpliTube MAX
逆に若干残念なのが、BIAS FXです。元々、エフェクトの豊富さを売りにしているプラグインなので、アンプ部分についてあまり求めすぎてはいけないのかも知れませんが、歪みもアンプではなくエフェクターで作った方がまとまるのであれば、アンプシミュレーターを使う意味合いが薄れてしまいます。
BIASシリーズにはBIAS AMPというアンプシミュレータープラグインもあり、こちらはアンプのモデリングやアンプ内部の設定などを細かくできるようです。こちらで作ったアンプモデルをBIAS FXに統合することも可能で、2つを持っていると最大の効果を発揮するタイプのプラグインのようです。2つとも導入となると結構いい費用が発生するので、高品位なアンプシミュレーターが欲しい方は、まず、BIAS AMPから揃えていくのが良いかも知れません。
Softubeもサウンドクオリティ、操作性、直感的に使える点にと全く文句ないのですが、丁寧にモデリングをするためにリリースされているモデルが少ないところが残念です。また、他のアンプシミュレータープラグインと比べて、アンプ1台あたりの単価が高くなってしまう点も、仕方がないことですが、残念な部分です。
Softube製品情報ページ(英文)
https://www.softube.com/index.php?id=news90
また、UAD-2プラグインを使用するには、apolloオーディオインターフェースか、UAD-2 Satelliteと呼ばれる外部DSPが必要となります。ギターアンププラグインはDSP使用率が高いので、QUADなどのコア数の多いものを選択するのがオススメです。
また、apolloオーディオインターフェースはUSBバージョンとThunderboltバージョンがあります。動作環境、PCのインターフェース環境をしっかりチェックして間違えないように注意してください。
UNIVERSAL AUDIO / APOLLO TWIN MKII QUAD
3行でまとめると
- 高性能=高CPU負荷と考えて問題ない!
- エフェクト内臓のプラグインの方が便利!
- ハードウェアでリアンプをする方法も!
最後に
今回はギターアンプシミュレータープラグイン比較を、拙い演奏を添えて、おこなってみましたが、モデルとなったアンプが同一でも各プラグインでだいぶサウンドが違うものです。
個人的には、長年Amplitubeシリーズを使用しているので、これからもメインで使っていくと思うのですが、他プラグインも試してみて、便利に使える可能性を感じました。実際のところ、GTRとELEVENについてはロクに起動したこともありませんでしたが、負荷が軽かったり、Fender系の音抜けが良かったりと新発見もありました。
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