ダイナミクスとは…、一言で言うと音の強弱の変化のことです。ダイナミックレンジが広い、狭いという表現でそれぞれ強弱の幅が広いこと、狭いことを表します。
楽曲全体のダイナミックレンジが広い分にはメリハリのある良いアレンジ、ということができますが、ボーカル以外の各楽器のダイナミックレンジが広すぎるとMIX作業で大苦戦します。
例えば、Aメロでちょうどいい音量だったエレキギターが、Bメロでは他の楽器に埋もれて聞こえなくなってしまった、そしてサビではボーカルよりも目立つ音量になってしまった。
こんな経験あるのではないでしょうか?
そこで今回は、ダイナミックレンジをコントロールする『ダイナミクス系エフェクト』についてご紹介いたします。
目次
1.COMP(コンプレッサー)
まずはダイナミクス系エフェクトの代名詞、COMPことコンプレッサー、略してコンプです。コンプレッサーはレコーディング現場は元より、ライブPA/SR現場でも無くてはならないエフェクトです。
では、コンプレッサーはどういうエフェクトかというと、『しきい値を超えたの入力信号を一定の比率で圧縮する』エフェクトです。
これでは全く意味がわからないので、用語解説から行きたいと思います。
まず、しきい値ですが、一般には英語そのままの『threshold』というパラメーターでコントロールされます。ダイナミクス系エフェクトではこのthresholdって言葉が何度も出てきます。
ちなみに、threshold=スレッショルドって読みます。
続いて、一定の比率についてですね、こちらも英語の『Ratio』というパラメーターでコントロールされます。この言葉も大変よく出てきます。
こちらは、Ratio=レシオって読みます。
最後に圧縮ですが、英語でCompressionです、これがコンプレッサーの語源です。
あらためて、コンプレッサーはどういうエフェクトかというと、『Thresholdを超えたの入力信号をRatioでCompression』するエフェクトです。
用語解説になってないですね…、画像で見て行きましょう…。綺麗に45度の斜め線になっています、
入力信号が1増えると出力信号も1増えている状態です。
今度の図ではメモリの-40を境にグラフが折れ曲がっています。
先ほどの図では黄色い線は直線で右端のメモリの0のところに当たっていたのですが、このグラフでは-20に当たっています。
グラフが折れ曲がっている地点がThresholdです。今回のケースではThreshold=-40dBとなります。
また-40の地点より先、入力信号が40増える間に、出力信号は20しか増えていません。入力信号40:出力信号20=2:1。これがRatioの値ということになります。
入力信号と出力信号の差のことをゲインリダクション、それを表示させるメーターのことをゲインリダクションメーターと言います。
つまり、このコンプレッサーはThreshold=-40dB、Ratio=2:1のコンプレッサーということになります。
『Thresholdを超えたの入力信号をRatioでCompression』している状態がお分かりいただけたかと思います。
また、コンプレッサーには、Thresholdを超えてから圧縮が開始するまでの時間を設定するAttack、信号がThresholdを下回ってから圧縮を止めるまでの時間を設定するRelease、Threshold付近の圧縮カーブを設定するKnee(ニー:膝のことです)というパラメーターもあります。
実際のMIXの中でコンプレッサーには、広すぎるダイナミクスレンジを狭くする効果があります。
また、使用する機種によっては独特の音が付加されたり、音質的に締まったりと、元のサウンドより音楽的な質感に優れるサウンドに変化することを狙って使用する場合もあります。モデリング系のプラグインを使用する理由はもっぱらこちらですね。
それではバスドラムそのままのサウンドと、コンプレッサーをかけたサウンドを比較してみてください。
バスドラム – エフェクト無し
バスドラム – コンプレッサー
いかがでしょう?
アタックが強調されて、締まった音になっているのが感じられるでしょうか?
2.GATE/EXPANDER(ゲート/エクスパンダー)
次は、COMPの逆のエフェクトGATE/EXPANDERです。厳密にはGATEとEXPANDERは別のエフェクトなのですが、効果と操作がよく似ているためにまとめさせていただきます。
さて今度は、GATE/EXPANDERですが、GATEは『しきい値を超えない入力信号を一定の音量だけ下げる』エフェクト、EXPANDERは『しきい値を超えない入力信号を一定の比率で圧縮する』エフェクトです。一定の音量のことをRANGE(レンジ)といいます。
GATE/EXPANDERエフェクトの中には、これらの両方の機能を兼ね備えているエフェクトもあります。
早速画像にいってみましょう、
ノンエフェクト時はどちらのエフェクトも先ほどのCOMPと同じグラフですね。
さて、GATEですが、どうしたことでしょう、変なグラフが出てきました。
どういうことかと言いますと、Threshold=-30dB以下の信号がRANGE=20dB小さくなったということです。グラフの右側から読んで行くと解りやすいかも知れないですね。
今度はEXPANDERです。Threshold=-30dB、Ratio=2:1のEXPANDERです。これもグラフの右から見た方が解りやすいです。
ちなみに、画像のEXPANDERはSonnoxのOxford Gate/ExpanderのExpanderセクションなのですが、この機種はRANGEの設定が可能です。RANGEを設定するとGateの動作をさせることもできます。
一言でまとめると、COMPがダイナミックレンジを狭めるのに対して、GATE/EXPANDERはダイナミックレンジを広める役割があるわけです。
MIXでは使用していないマイクの被り(他の楽器の音)を弱めたり、主に打楽器の皮の余韻をカットするのに使用することが多いです。
バスドラム – エフェクト無し
バスドラム – ゲート/エクスパンダー
バスドラム – コンプレッサー + ゲート/エクスパンダー
どうでしょう、余韻が短くなっているのが感じられるでしょうか?
また、合わせて見るとCDで聴く音にだいぶ近づいたのではないでしょうか?
3行でまとめると
- COMPはダイナミックレンジを狭くする!
- GATE/EXPANDERはダイナミックレンジを広くする!
- ダイナミクスのコントロールが効くとMIXしやすい!
最後に
本当はリミッターと、番外編としてトランジェント系のエフェクトもご紹介したかったのですが、コンプレッサーのくだりだけで長くなってしまったので、次回以降に回させていただこうと思います。
今回のサンプルでは解りやすくするために単発の楽器にコンプレッサーを結構強めにかけています。実際は大きなピーク時のみゲインリダクションメーターが触れるくらいのかけ方をしたり、うっすらかけっぱなしの設定にしたりと、奥の深いエフェクトです。
みなさんも解りやすいものから是非お試しあれーっ!
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