エフェクトの接続方法には原音を加工して使用するインサートエフェクトと、原音にエフェクト音を付け加えて使用するセンドエフェクトがあります。
今回はProToolsのインサートスロットを使用して、各種プラグインエフェクトを使用する方法をご紹介していきます。
他のDAWでも各部の名称こそ違えど、操作方法は基本的に同じなので応用してみてください。
目次
インサートで使用するエフェクト
インサートエフェクトはトラックの原音自体を加工するエフェクトです。
一般的にこの接続方法を使用するエフェクトとして、EQやCOMP、GATEなどのダイナミクス系エフェクトが挙げられます。インサートエフェクトは調整したいトラックのインサートスロットに接続します。
画像の赤枠に囲まれたトラックのインサートスロットには、Avid Smack(COMP)とWaves API-550B(EQ)がインサートされています。
また、DAWのインサートスロットでは上に表示されたプラグインから順にエフェクトがかかっていきます。つまり、ここではCOMP→EQの接続順ということです。エフェクトの接続順は非常に重要で、特に、EQ→COMPとCOMP→EQでは同じプラグインを使用しても全く別の効果が得られます。
後段のエフェクトプラグインに渡す信号は、その前段までの全てのプラグインで処理されたサウンドになります。例えば、EQでレベルが下がった(上がった)信号をコンプレッサーなどのダイナミクス系プラグインに入力している場合、EQの調整を行うとコンプレッサーの入力レベルにも影響し動作が変わります。
プラグインエフェクトの接続順については、下記リンク先で詳しく解説しています。
ちょっと話がそれてしまいますが、幾つかのトラックを合わせたもの(ステムって言います)にCOMPやEQを使用するときには『バス送り』というテクニックを使用します。これについては別の記事で解説させていただきます。
バス送り、ステムミックスについては以下の記事をご覧ください。
センドリターンで使用するエフェクト
センドリターンを使用したエフェクトは原音を加工せず、原音にエフェクト音を付け加えて使用するエフェクトです。一般的に、この接続方法はReverbやDelayなどの空間系エフェクトに使用されます。
また、原音に対して歪ませたサウンドなどを足していく、いわゆるパラレルプロセッシングを行う場合にもこのセンドリターンで接続します。
画像では、Avid D-VerbとUniversal Audio Lexicon 224 Digital ReverbがAUXバスにインサートされています。
センドエフェクトの接続方法
- モノラル、またはステレオAUXバスを作成する。
(使用するプラグインがモノラル入力・ステレオ出力が可能な場合、モノラルバスを作成するのが一般的です。) - 作成したAUXバスのインサートスロットに任意のプラグインをインサートする。
(画像では2つモノラルAUXバスを作成し、D-VerbとL224をそれぞれインサートしています。) - プラグインをインサートしたトラックの入力に任意のBusを割り当てる。
(画像ではBus1とBus2を選択しています。) - エフェクトを付加したいトラックのセンドスロットに先ほど選択したBusを割り当てる。
- センドスロットをクリックし、表示されたセンドフェーダーを上げていく。
以上の手順でエフェクトがかかります。
このような接続は、AUXトラックに送って(センド)、エフェクト処理がされた音をAUXトラックのフェーダーで2MIXに戻す(リターン)ために、センドリターン接続と呼ばれます。また、この時AUXトラックのフェーダーをリターンフェーダーと呼びます。
今回はモノラルAUXバスを作成し、モノラルインプット、ステレオアウトプットのReverbを使用していますが、ステレオAUXバスを作成し、ステレオインプット、ステレオアウトプットのReverbを使用することももちろん同様の操作が可能です。
センドリターン接続では、各トラックのセンドフェーダーを少し上げればすこし、たくさん上げればたくさん、とセンドフェーダーの上げ幅で楽器ごとのエフェクトの深さをコントロールすることができます。
この特徴により、リバーブやディレイなど複数のトラックに使用することが多いエフェクトはセンドリターン接続でかかり具合を調整した方がメリットが大きく、一般的にはこのように使われます。
リバーブをインサート接続しない理由
各プラグインのパラメーターとしてDry(原音)/Wet(エフェクト音)の比率を調整できるものが備わっている場合、ReverbやDelayをオーディオトラックにインサートして使用することももちろん可能です。可能ではあるのですが、一般的ではありません。
例えば32モノラルトラックのセッションがあるとします。この32トラック全てにReverbをかけたいとなった場合、32個のReverbプラグインをインサートする必要があります。
Reverbプラグインは複雑な演算を行うために、CPU/DSPへの負荷が非常に大きい種類のプラグインです。よほどパワフルなマシンと大量の外部DSPがあるなら不可能ではないですが、やはり現実的ではありません。素直にセンドして使用しましょう。
また、リバーブには同じリバーブにセンドしたトラックに同様の空気感を与える、という効果があります。同じ空間で演奏されているような印象を与えるので、1つのリバーブに複数のトラックをセンドすることで、トラック同士の一体感を表現することが可能です。
通常センドリターンで使用するエフェクトをインサート接続で使用する特殊な例として、ギタートラックなどではリズムに合わせたDelayを楽器の音の一部として、トラックにインサートして使用することがあります。この場合にはDry/Wetコントロールで原音とエフェクト音のバランスをとります。
余談ですが、ギターアンプのセンドリターンはインライン(入力信号の100%を出力する)となっているため、根本的にDAWでのセンドリターンとは異なり、構造としてはインサート接続になります。
アンプによってはパラレル(並列)接続が可能であったり、リターンされた信号のみに効くリターンボリュームが備わっていたりしますが、センド量を連続的に調整することが出来る機種は無いと思ってください。
3行でまとめると
- EQ、COMPは原音を加工、インサートして使用!
- Reverb、Delayは原音に付加、センドして使用!
- 例外的にDelayをインサート接続する場合も!
最後に
今回はエフェクトの接続方法についてご紹介してきました。
昔、当時としてはハイスペックのマシンを使用していた音楽仲間に、「CPUオーバーロードエラーが出てしまってMIXができない、パソコン壊れたかも知れないから、ちょっと見に来て欲しい」と頼まれて様子を見にいったことがあります。
感の良い方はお察しの通り、各オーディオトラックに片っ端から空間系エフェクトがインサートされていました。ちょうど記事と同様の説明をしたところ、えらく感謝された記憶があります。
インターネット上に情報があふれている現代では中々起こり得ないこととは思いますが、同じ悩みを持っている方の解決の糸口になれば幸いです。
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