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COMP

 Last Update : 2020.09.23

意外と知られていない!定番コンプの設定について考えてみる


MIX中にコンプレッサーの設定に頭を悩ませることは多く、何が正解かわからなくなることも少なくありません。

例えば、自分の中でスネアやバスドラムには1176LN Rev.Eをインサートして設定はこうで、ベースにはLA-2Aのグレーをインサートして設定は〜、などルールに乗っ取って進めて行ってもそれが正解かどうかはわかりません。

そこで今回は、定番モデリングコンプレッサープラグインのアタックタイムやリリースタイムなどを調べたり、実測したりした結果を元に設定を考えていきたいと思います。AttackやRelease、Thresholdなど各項目の設定が数値で解っていれば、他のプラグインで同様の設定を試してチェックすることも可能でMIXの幅が広がるのではないでしょうか?

コンプレッサーのパラメータについては以下の記事に詳しく解説しています。ご参照ください。




Universal Audio
1176LN

ua1176s

定番中のド定番Universal Audioの1176LNから見ていきましょう。他記事でもこの1176についてご紹介しているので、機種に関してはそちらの記事をご参照ください。

今回は中でも使用頻度の高い1176LN Rev.E(上の画像では一番下)から調べていきます。

Thresholdの設定項目は1176には無いため、ここではRATIO、ATTACK、RELEASEについて見ていきます。

 

RATIO

ご覧の通り、4:1、8:1、12:1、20:1の4つから選択するタイプです。裏ワザ的に複数スイッチの同時押しモードなんかも使われていたりします。今回はProTools標準のSignal Generatorを使用して-18dBで出力した1kHzの正弦波を使ってチェックを行いました。

以下に同じ入力信号をそれぞれのレシオでコンプした際の画像を並べます。

-18db_1kHz_r4

-18db_1khz_r8

-18db_1khz_r12

-18db_1khz_r20

上から4:1、8:1、12:1、20:1の画像となっています。

さて、お気づきでしょうか。

本来であれば、高レシオの方がコンプレッション量が大きくVUメーターはより左に振れているハズなのですが、なんということでしょう!実際は真逆の挙動を示しております。実はここが1176を使うキモなので、わざと-18dB信号を入力してINPUTを時計の針で10時方向にセッティングしています。この辺が一番使える領域だったりするのです。

実機でも全くと言っていいほど同じ現象が起きるのですが、この不思議な現象の理由はニー(KNEE)にあります。

UREI(Universal Audio)は4:1と8:1に関してはコンプレッサーとして、12:1と20:1についてはリミッターとして使用されることを想定しています。そのため、コンプレッションモードではスレッショルド付近から徐々にコンプレッションが始まるソフトニー、リミッティングモードではスレッショルドを超える信号をピンポイントで潰すハードニーとしてそれぞれ振舞います。

この辺りがキモで、少し潰れすぎてるからレシオを8:1から4:1に切り替えるたのにVUメーターの振れが変わらない、というのはこれが原因です。個人的にはレシオの切り替えというよりもニーの切り替えとして考えてドラム・パーカッション類には8:1で、それ以外には4:1でインサートすることが多いです。

 

ATTACK

1176と言えばアタックがとても早いFETコンプレッサーとして有名ですが、そのアタックタイムはどの位の値なのでしょう?

簡単な検証を行ってみましたので、まずは画像からご覧ください。

2枚とも上段の緑色が元波形、下段の黄色が1176を通った後の波形です。

A_R_Fastest

A_late_R_fast

上の画像がアタックタイムを最速にしたもの、下の画像がアタックタイムを最遅にしたものです。その他の設定は全て共通です。入力信号は先ほどと同じくSignal Generatorで出力した-18dBの正弦波です。実際に拡大してサンプル単位で元波形のレベルと同じになるポイントまでの時間を測りました。

アタック最速では2〜3サンプル程度@48kHz環境でした。2/48000s≒0.04msでした。カタログ的には0.02msなので綺麗に出ていないことになりますが、48kHzサンプリング環境下では実質的に測定不可能でした。

アタック最遅では32サンプル程度の取りこぼしが見られます。32/48000s≒0.666msです。カタログ数値では0.6msなので大体スペック通りの数値になっています。驚くべきところでは、最も遅い値に設定してもこのアタックタイムです。正直なところ、人間の知覚を遥かに超えているので倍音の出方が違うようにしか変化を感じられません。

一般的なデジタルコンプレッサープラグインでアタックを0msに設定しても、ルックアヘッド機能でも無い限りはほんの少しの取りこぼしは生じるので最速設定では音の頭からコンプがかかると考えても問題ないでしょう。

 

RELEASE

リリースタイムは同一の正弦波の間隔を1000サンプル=1/48秒単位で空けて次の波形の頭を捉えられるかどうかで測定しました。以下測定した際の画像です。

A_R_fast_RR

A_F_R_L_RR

上がリリース最速、下がリリース最遅の画像です。またしても拡大してサンプルを数えました。

リリース最速では2000サンプルでは次の頭までに戻りきっておらず、3000サンプルでは戻りきっていたので、1/24〜1/16s≒42ms〜63msとなりました。カタログ的にも50ms程度となっているので概ね正解ですね。

リリース最遅設定では、53000サンプルでは戻りきらず、54000サンプルでは戻っていたので、1.1s程度といったところでしょうか。スペック的にも1.1sとなっているので実測値とそれほどの誤差は出ていません。

アタックに比べるとリリースタイムはそれなりの幅を持った設計になっていると言うことができると思います。

 

考察

それでは、ここで1176の設定について考えて見ます。

一般的に定番の設定はUA社公認で呼ばれているドクターペッパー設定でしょう。嘘か誠か、昔のドクターペッパーの広告でAM10時とPM2時、PM4時にドクターペッパーを飲んで糖分を補給しよう、と言うものがあったそうでこう名づけられているそうです。

設定内容は、ATTACKが時計の10時方向、RELEASEが同じく2時方向、RATIOが4:1というものです。あとは欲しいコンプレッション量と出力レベルになるようにINPUTとOUTPUTを設定する、というものです。

他にはATTACK、RELEASE共に最速から徐々に探っていく設定がよく使われています。アタック部分の歪み感やコンプ臭さがより前に出るためこちらも効果的です。この設定では比較的ハードニーな8:1がよく使われている印象です。また、ボタン全押しパラレルコンプとして使用する場合にも両方最速設定にすることが多いようです。

私も上記2つと同じような使い方が多いです。1176を使う際には遅めのリリースタイムを設定することはなく、2時から最速の間でセッティングをしています。全押しはあまり使用しないのですが、オーダーに沿ってドラムのルームマイクを歪ませてうっすら足して使用した経験があります。セットでなってる一体感みたいなものは強調される印象を受けました。

また、INPUTをあげるとモデリングされたINPUT回路のアンプによってサウンドが変化します。1176臭さと言うものはこのアンプ回路からも生じているので、あえて前段でレベルを落とし、INPUTを上げて1176っぽさを出すこともあります。個人的には10時〜11時程度のセッティングが好みです。

コンプの前段でレベルを調整する方法については下記記事に詳しく解説しています。




Universal Audio
LA-2A

LA-2AS

こちらも定番のUniversal Audio LA-2Aです。他記事でもご紹介させていただきましたが、信号の強弱に反応して内部でボヤっと電球が灯り、フォトセルがその灯りに反応する光学式タイプのコンプレッサーです。

こちらも別記事にて詳しい解説がありますので、見慣れない方は合わせてご参照ください。

操作子はLIMIT←→COMPの切り替え、反時計周りのサイドチェーン用LPFであるEMPHASIS、GAIN、スレッショルドに相当するPEAK REDUCTIONです。ATTACKやRELEASE、RATIOはコントロールできません。

GAINについてパネル上の配置から勘違いをされている方も多いのですが、LA-2AのGAINはコンプレッサー回路より後段に位置します。GAINを調整してもコンプレッサー自体の動作にはなんの影響もありません。所謂メイクアップゲインとしてのGAINです。だったら右側に配置してもらいたいものですよね。

さて、こちらも1176同様にDAW上で計測しようと試みたのですが、綺麗なデータが取れませんでした。悔しいです。

となると、書くことが無くなってしまうので、アタック・リリース・レシオを調べて来ました。

 

RATIO

イメージとして比較的浅いレシオだと思っていたのですが、その通り平均圧縮比は3:1で固定でした。

3:1と言うとナチュラルなコンプレッションと言うことができると思います。あまり深めのスレッショルドを設定せず、緩やかにかかるコンプレッションに向いていそうです。

 

ATTACK

測定しようと試みたのに挫折した最たる理由がこのアタックです。

調べたところ約10msで固定とのことでした。1176と比べるとかなりスローアタックと言うことはできますが、正直言ってあまり信用していません。しかし、私もエンジニアの端くれ、ここはカタログを半分くらい信じることにします。

と言うのも、思っていたよりもかなり速いアタックタイムだったからです。効き始めが緩やかなので10msでコンプ動作が始まっても実際にしっかり効き始めるまでにタイムラグがあり、測定に挫折しました。

 

RELEASE

リリースタイムは公式にもふわっとしたことが書いてありました。

60msまでに半分はリリースされているが、残りの半分は1〜15秒の間にリリースされるとのことです。ちょっとなにを言っているかわからないのですが、そういうもののようです。

こちらも測定を困難にした理由で、VUメーターが戻りきらずに苦心しました。

 

考察

調べれば調べるほどふわっとした情報しか出てこないこのLA-2Aですが、個人的にはエレキベースやチェロ、ピアノからギターや管楽器、ボーカル&コーラスなどに幅広く使用しています。音量変化を滑らかにするため、常にVUメーターが振れているような設定で3dB程度のコンプレッションをさせることが多いです。

まず、FETコンプと比べて遅めのアタックといつ戻るかもわからない独特のリリースを持つため立ち上がりからしっかり潰して次のアタックまでに戻り切るようなコンプレッションには向いていません。基本的にはかかりっぱなしになると思っていた方が良さそうです。あまりハードにコンプレッションを行うと、次のフレーズの頭が潰れてしまう可能性があります。

逆に浅めのスレッショルドを取って、音量変化が大きいトラックを落ち着かせるのには最適なコンプレッサーと言うことができるのではないでしょうか。2段コンプをかける時の1段目や、スローテンポな曲にマッチしたコンプレッサーという印象を持っています。

また、このLA-2AもGAIN回路にサウンド的な特徴があるため、前段でレベルを調整してGAINでレベルを稼ぐような方法でも使用しています。

 

Fairchild
660 & 670

fc670

こちらもまた定番コンプとしては外せないFairchild 670です。670はステレオ入出力を持ったモデルでモノラルモデルは660となっています。上記2点のUniversal Audio(UREI)のコンプと比べると操作子が多く拒否症状が出そうですが、慌てずに見ていきます。

コントロール類はメーター切り替えを除くとINPUT GAIN、THRESHOLD、ATTACKとRELEASEをコントロールするTIME CONSTANT、AGC、パネルに隠された変則的なKNEEと最大音量を司るD.C. THRESHOLD、プラグイン版ではこれに加えてSIDECHAIN、OUTPUT、LINK SWITCH、MIXとなっています。

見慣れないものはAGCコントロール位でしょうか?詳しくは別記事で紹介させていただきますが、AGCをLEFT/RIGHTに設定するとステレオモード、LAT/VERTに設定するとM/Sモードと考えてもらえれば間違いありません。LATは「側面の」を意味するLATERAL、VERTは「垂直の」を意味するVERTICALの略です。レコード溝のお話ですね。

ヴィンテージコンプでは珍しくINPUT GAINとTHRESHOLDコントロールの双方を持ち、組み合わせて使用するタイプのコンプレッサーです。

そして、こちらも綺麗に測定結果が出なかったので調べてきました。

 

RATIO

実機ではパネル裏に隠されたD.C.THRESHOLDで間接的にコントロール可能です。簡単に言うと時計回りに回して行くとソフトニーでスレッショルドに対する最大音量控えめ、反時計回りに回して行くとハードニーでスレッショルドに対する最大音量高め、になります。最大音量に近づくとRATIOが高くなるのは全設定で共通です。

どの設定でもコンプレッサーとして実用的なリダクション範囲で使用する際にはRATIOは2:1〜4:1位の間に収まります。

 

ATTACK/RELEASE

アタックタイムとリリースタイムはTIME CONSTANTツマミで設定を行います。1〜6の6モードでそれぞれ以下の固定の設定値を持っています。

  1. ATTACK=0.2ms、RELEASE=300ms
  2. ATTACK=0.2ms、RELEASE=800ms
  3. ATTACK=0.4ms、RELEASE=2s
  4. ATTACK=0.4ms、RELEASE=5s
  5. ATTACK=0.4ms、RELEASE=2〜10s
  6. ATTACK=0.2ms、RELEASE=300ms〜10s〜25s

1〜4に関してはイメージ通りの数値でしたが、問題は5と6ですね。やっぱりふわっとしてます。マニュアルによると、5のリリースはピークがしっかり出ていて短い信号には2秒、連続してピークが続く信号には10秒程度となっています。6はピーク成分が短い信号には300ミリ秒、ピークが連続する信号には10秒、さらに突っ込んでコンプレッションさせると25秒とあります。

※2020/9/23修正
ATTACKの値を誤って記載しておりましたので修正させていただきました。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

 

考察

では660&670の使用方法について考えていきましょう。INPUT GAINとTHRESHOLDが両方可変という珍しい仕様なので使い方に悩む方が多いかと思います。かく言う私も苦手でした。

660&670は1176などのFETコンプレッサーに比べると遅めのアタックタイムを持っています。リリースも数値以上に緩やかな印象があります。

よく使用される設定はTIME CONSTANT=1〜3、INPUT GAINを時計の針の12時に設定してメーターを見ながらTHRESHOLDを0から上げて行く、といったものです。コンプの挙動としては非常に安定した動作をしてくれますが、この使用法では660&670の真空管コンプとしての特徴を活かしきれないと感じています。

真空管ならではの暖かいサウンド、アナログ感を得るためにはゲインステージでのブーストがキモになってきます。必要であれば前述のリンク先の方法で前段のレベルを下げ、低めのスレッショルドに設定してから必要な音量に戻るまでINPUT GAINを上げて行くことでゲイン段でのブーストが十分に行われ、十分な倍音を得ることができます。個人的にはコンプレッサー機能のついたプリアンプと考えています。

元はバスコンプ、LPマスタリングツールとして設計されたモデルなので各種バスに挿すのもオススメです。この場合にも速いリリースが必要な苦手分野を避けて管弦楽器やボーカルバスなどに使用するのがオススメです。また、自然と高域の耳障りな部分が落ちるので、その効果を狙って使用するのもアリですね。

また、コンプレッションされたサウンドにも特徴的な倍音が付与されるので、これを見越してTIMECONSTANTを1に設定し積極的にコンプレッションさせる使い方も面白い効果が得られます。実際、現代の音楽シーンでトラックコンプとして使用する場合にはTIME CONSTANTは1か2になることが多いのではないでしょうか。

個人的には打ち込み管弦楽器をバスにまとめて使用することが多いです。耳障りな部分が落ちついて真空管的な暖かさも加わるので、他の楽器との馴染みがよくなる印象です。使用するトラックは慎重に選ぶ必要がありますが、副次的な要素も含めて660&670にしか出来ない仕事をしてくれます。

楽曲自体は現代的だけどレトロ感を出したいといった場合、バスやマスターにインサートするのもオススメです。この場合には過度なコンプレッションは禁物です。



☆まとめ☆

  • 適材適所に使っていこう!
  • ゲイン段を上手に使っていこう!
  • デジタルコンプに設定を活かせるかも!

 

 

最後に

今回は定番ビンテージコンプについて調べたり考えたりしてみました。意外と知らずに使っている方が多いと思います。知らなくても仕上がりが良ければそれで良いのですが、知ってることで他のプラグインなどにも設定が活かせるので押さえておきましょう。

実際、私もチャンネルストリップのコンプなどを積極的に使うようになりました。レベリング用のコンプでもアタック・リリースをしっかりコントロールすることで仕上がりも大きく変わってきます。

 


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ZAL



 

 

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コメント

    • あいうえお
    • 2020年 9月 20日

    fairchildの1-3のアタックタイムは200″マイクロ”セカンドですよ
    つまり2″ミリ”セカンドです。
    他の定番コンプとしても早い部類に入ると思います

      • ZAL
      • 2020年 9月 23日

      あいうえおさん

      コメントありがとうございます。
      改めて調べ直したところ、本家Fairchild社のマニュアルでは、1,2,6の際に0.2msec(=200μsec)とありました。
      3,4,5の時には0.4msec(=400μsec)となっています。

      以下参考サイト
      http://thehistoryofrecording.com/Manuals/Fairchild/Fairchild_670_stereo_limiting_amplifier_instructions_Schematics.pdf

      本家のマニュアルを探し当てることができず、執筆時にはUniversal Audio社の日本語訳プラグインマニュアルのデータを参照しておりました。
      しっかりとした根拠ある情報をお届けするべきところを大変申し訳ございませんでした。

      以下Hookup様サイト
      https://hookup.co.jp/assets/upload/support/attachments/2019/12/4469/Fairchild_Tube_Limiter_Collection.pdf

      英文と合わせて確認したところHookup様のローカライズミス(?)だったようで、Universal Audioの本国マニュアルではそれぞれMicro Secondsと記載されておりました。

      以下Universal Audioサイト(189ページ)
      http://media.uaudio.com/support/liverack/UAD_Plug-Ins_Manual-v942-171110.pdf

      UADプラグイン版は実機とはアタックタイムが異なるようでした。
      WavesのPuigchildのマニュアルも確認してみたところ、Waves版は実機と同様のアタックタイムが設定されていました。
      モデリングプラグインでもメーカーごとに細かく比較していくと面白いデータが上がってきて勉強になります。

      重ねて申し訳ございませんでした。
      そして、ご指摘ありがとうございました。本文を修正させていただきます。

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