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実践的ピックアップ選定!配列別オススメピックアップ〜SSH編〜

今回は、実践的ピックアップ選定SSH編です。SSHレイアウトは、出せるサウンドの幅も広く、様々なジャンルに対応可能なピックアップレイアウトです。

以前の記事でシングルコイル・ハムバッカーそれぞれのメーカー別オススメピックアップをいくつかご紹介してきましたが、本記事ではSSHレイアウトの実践的な組み合わせ術をご紹介していきます。

以前の記事は以下のリンク先です。

また、このシリーズの記事ではセットにするピックアップをそれぞれ単一のメーカーに統一してご紹介しています。

これにはサウンドキャラクターの統一性といった理由と、それ以上に位相の問題が大きく関係しています。

ピックアップには必ず固有の位相というものがあります。この位相は正相(+)か逆相(-)で表され、これらが混在するとハーフトーン時にフェイズアウトしたサウンド(通常使いものにならない)が意図せず出てしまいます。テスターと簡単な電気の知識があれば、ピックアップの位相は切り替えることが可能ですが、それは別の機会にでもご紹介させていただきたいと思います。



目次

SSH配列のオススメピックアップセット


SSH配列は、ストラトキャスターなどのSSS配列のリアピックアップで、ハムバッカーの太いサウンドを出すことを目的としたピックアップレイアウトになります。基本的にはストラトのように使用して、ブリッジミュートを絡めたバッキング時にリアピックアップの特性を活かせるように組み合わせるのがオススメです。

また、コイルタップなどの配線アレンジを組み合わせることで、さらに幅広いサウンドバリエーションを得られます。

コイルタップ等の配線については下記記事も合わせてご参照ください。

全体的な傾向として、SSH配列のギターのボディはメイプルトップにアッシュやアルダー、バスウッドなどのバランスの良い、どちらかというと高域が良く出る材が使用されることが多いです。その場合、リアのハムバッカーにはやや暗めの音色のピックアップを選択した方がバランスよく鳴ってくれます。

多くのメーカーでは、ハムバッカーとシングルコイルピックアップのマグネット極性とコイルターンの方向が逆になっています。その場合、SSS配列ではセンターピックアップに使用するRwRp(逆巻逆磁極)モデルをフロントピックアップに使用することで、ハーフトーン時にハムキャンセル効果によりノイズを低減することが可能です。

また、SSH配列のギターもSSS/HSH配列同様にトレモロ付きのモデルが多くなっています。トレモロ搭載ギターの場合、リアピックアップにはトレムバッカーやF-Spaceなどの幅広のピックアップを選択しましょう。

今回の記事では、指板Rが大きいネックにトレモロブリッジが搭載されているギター向けにピックアップセットをご紹介しています。T.O.Mブリッジ搭載ギターや指板のRが小さいギターに載せる場合は適宜読み替えてください。

Seymour Duncan
SSL-2 RwRp / SSL-2 / TB-59

SEYMOUR DUNCAN / SSL2 RwRp
SEYMOUR DUNCAN / SSL2 RwRp

SEYMOUR DUNCAN / SSL-2
SEYMOUR DUNCAN / SSL-2

SEYMOUR DUNCAN / TB-59 White
SEYMOUR DUNCAN / TB-59 White

セイモア・ダンカンのヴィンテージ系出力セットです。フロント・センターピックアップではビンテージストラトのような、リアピックアップではビンテージレスポールのようなトーンを出力するのが狙いになります。

SSL-2 VINTAGE FLAT STRATはストラトキャスターのリプレイスメントピックアップの大定番SSL-1 VINTAGE STAGGERED STRATのフラットポールピース仕様で、現代的な指板のRが大きい、平らな指板のギターにマッチします。

TB-59 ’59 MODELはPAFレプリカSH-1b ’59 MODELのトレムバッカー仕様で、トレモロ搭載ギターのブリッジ幅にマッチします。サウンド的には出力が高すぎず、その分音抜けが良く深い歪みサウンドでも音の輪郭がぼやけることもありません。

コイルタップを使用してTB-59でシングルコイルサウンドを得る場合には、音の細さを感じることもありますが、逆にタップをしなくてもハーフトーンは綺麗に出力されます。

Seymour Duncan
SSL-6 RwRp / SSL-6 / TB-14

SEYMOUR DUNCAN / SSL6 RwRp
SEYMOUR DUNCAN / SSL6 RwRp

SEYMOUR DUNCAN / SSL-6
SEYMOUR DUNCAN / SSL-6

SEYMOUR DUNCAN / TB-14 White
SEYMOUR DUNCAN / TB-14 White

セイモア・ダンカンのカスタムピックアップセットです。上記のセットよりもパワーのある、モダンサウンドを得ることができます。

SSL-6 CUSTOM FLATは出力アップをしたビンテージ系ピックアップのSSL-5 CUSTOM STAGGEREDのフラットポールピース仕様です。ギター本体のボリューム操作への追従性が良く、クリーン〜クランチをボリュームコントロールで弾き分けるタイプのギタリストに特にオススメできます。

TB-14 CUSTOM 5はSH-14 CUSTOM 5のトレムバッカー仕様です。SH-5(TB-5) DUNCAN CUSTOMのセラミックマグネットをアルニコ5に変更しているピックアップで、セラミック特有の硬さが取れていて全帯域に渡って綺麗に出力してくれるため、アンプの目盛りで音が作りやすいピックアップです。

また、コイルタップ時のサウンドもしっかりと芯がありオススメできます。

DiMarzio
DP422 / DP422 / DP155 F-SPACE

DIMARZIO / DP422 WHITE
DIMARZIO / DP422 WHITE
DIMARZIO / DP155 F-SPACE WHITEDIMARZIO / DP155 F-SPACE WHITE

DiMarzioのハイゲインピックアップセットです。一見シングルコイルピックアップのDP422も構造的にはスタックハム構造になっていて、ノイズに強いので、ハイゲインサウンドでもノイズに悩まされる心配がありません。

フロント・センターのDP422 Injector Neckはポール・ギルバートのシグネイチャーピックアップです。ハムバッカーを使用しているイメージが強いですが、SSS配列のギターを使用していることもあるみたいです。

実際のサウンドは高出力のわりにかなりブライトで、フロントに配置しても音抜けが悪くなるようなことはありません。

DP155 Tone ZoneはDiMarzioピックアップの中でも定番ラインナップの一つで、同じく定番のDP100 Super Distortionよりもローミッドが太く出るピックアップです。個人的にはマホガニーボディよりもアッシュ・アルダーボディの方が旨味が生きるピックアップだと感じています。

ハーフトーン時には、DP155をコイルタップすることで、出力・サウンドのバランスを取ることができます。



Tom Anderson
SA1R / SA1 / H2+

TOM ANDERSON / SA1R
TOM ANDERSON / SA1R
TOM ANDERSON / SA1
TOM ANDERSON / SA1
TOM ANDERSON / H2+
TOM ANDERSON / H2+
名工Tom Andersonの定番SSHセットです。

SA1(R)は、スタック構造のピックアップでノイズに強いのが特徴です。また、通常スタック構造は高域のレスポンスが低下する傾向にありますが、SA1は音抜けも良く、歪ませた状態でも音がこもることがありません。Rがつくモデルは逆巻逆磁極モデルです。

H2+はDrop Topシリーズに多く搭載されているハイパワーピックアップです。ハイパワーピックアップは抜けが悪い傾向がありますが、このピックアップは抜けも十分に確保することが可能です。

Tom AndersonのDrop Topシリーズなど、一部のギターにはスイッチがたくさん付いていて、それらのスイッチで各ピックアップのシリーズ(直列)/パラレル(並列)/コイルタップを切り替えることができます。つまり、Drop Topシリーズに標準で搭載されているSAシリーズやHシリーズはコイルタップ時のトーンやパラレル接続時のトーンも計算されて作られていると言うことができます。

通常、ピックアップのコイルタップ時のトーンに付いてはあまり解説されていなかったり、サウンドサンプルも入手し辛いのですが、高級ギターブランドが自分の工房のギターにコイルタップ・パラレル接続前提でマウントしているピックアップと言うことで、非常に信頼できるのではないでしょうか。

EMG
SA / SA / 81

EMG / SA/SA/81 Black
EMG / SA/SA/81 Black
こちらは、EMGのアクティブピックアップセットです。ノイズレスでハイパワーなピックアップの到達点と言えるのではないでしょうか。アクティブピックアップを使用するには9V電池が必要です。キャビティ内に十分なスペースが確保できない場合には、電池用のザグリを入れる必要がある点に注意が必要です。

ピックアップ交換自体は、使用するポット、セレクター、配線材なども付属するので非常に簡単です。また、独自のスナップコネクタを採用しているため、半田付けの必要もありません。

フロント・センターにはSAを選択しています。SAはEMGの標準的なピックアップで、ローノイズで弦の鳴りを出力してくれます。特筆すべきはそのエフェクター乗りの良さで、空間系のエフェクトをかけると非常に綺麗に広がってくれます。

リアには81です。EMGの特徴、ノイズレスでハイパワーを体現しているピックアップで、歪ませた時には図太いサウンドを出力します。アクティブ特有のコンプ感と呼ばれる、音が詰まった感じがあるため、ピッキングニュアンスが出し辛い点がありますが、他では出せないEMGサウンドの特徴として人気のサウンドでもあります。

このセットの弱点は、センターとリアのハーフトーンが非常に使い辛い点にあります。SAはビンテージ系よりも少し高出力程度のピックアップなのですが、81はパッシブピックアップよりもはるかに高出力なため、出力バランスが取れず、ハーフが綺麗に出辛いです。

重ねて、81はコイルタップや出力モードの切り替えが不可能なため、配線で調整することが難しくなっています。歪みはリア、クリーン〜クランチはフロント・センターと使い分ける運用がベストなのではないかと感じています。

また、EMGのハムバッカーラインナップにはSAに似たサウンドのシングルコイルモードと、85に近いサウンドのハムバッカーモードを切り替え可能な89があります。リアピックアップに89を使用することで、上記の難点を解決することができます。
EMG / 89 Black
EMG / 89 Black
参考までに85は81よりも出力控えめな分、音の太さが特徴です。

Seymour Duncan
AS-1n / AS-1n / AHB-1b

SEYMOUR DUNCAN / AS-1n Black
SEYMOUR DUNCAN / AS-1n Black

SEYMOUR DUNCAN / AHB-1b Black
SEYMOUR DUNCAN / AHB-1b Black

今度はSeymour DuncanのBlackoutsアクティブピックアップセットです。EMGのアクティブよりも若干コンプ感が控えめな印象を受けます。

AS-1nのサウンドは誤解を恐れずに言うと『シングルっぽさがあるハムバッカー』です。ハムバッカーよりは音抜けが良く、カッティングなどでも綺麗に鳴ってくれるのですが、純粋な意味でのシングルコイルサウンドでは決してありません。

しかし、ローノイズでサスティーンも綺麗に伸びるので、フロントでリードを取る場合などにも不安を感じることはないでしょう。EMG SA同様エフェクト乗りも秀逸です。

リアに選択したAHB-1bは非常にハイパワーなピックアップです。EMG81よりもコンプ感が抑えめな分好みが別れるところだと思いますが、深く歪ませても抜け感を保てると言う点ではこちらに軍配が上がります。

また、EMGには無い特徴として、ピックアップの裏にジャンパーピンが実装されています。このジャンパーピンをスイッチ付きポットなどに結線することで、演奏中にピックアップ(正確にはアクティブプリアンプ)の出力を切り替えることができます。LoudモードとLouderモードらしいです。どっちもラウドってことですね。

ユニークなアイディアだとは思うのですが、コイルタップと違ってサウンドのキャラクターを保ったままレベルが変わるので、個人的にはあまり実用性を感じていません。

こちらもEMGのセット同様、リアのハムバッカーとフロント・センターのシングルコイルの出力差が弱点です。シングル側をLouder、ハム側をLoudで使用することで少しはマシに感じますが、3ピックアップの良さを活かしきれないのが残念です。

ちなみに、セイモア・ダンカンのアクティブラインナップにはAHB-2bと言う、更にハイパワーなピックアップも存在しますが、使いどころが非常に限られてくるので今回は1bをご紹介しています。

同じアクティブピックアップと言うことでEMGと比較しまくっていますが、実はBlackoutsとEMGピックアップは混在して使うことが可能です。また、BlackoutsもEMGで使用するスナップコネクタと同じコネクタを採用しているため、基本的には、現行のEMGが搭載されているギターからはコネクタの抜き差しだけで換装することが可能です(ポット抵抗の推奨値は異なります)。



3行でまとめると

  • SSHはSSSのリアがハムになったと考える!
  • アクティブはメタルよりのイメージ強!
  • リアのコイルタップは他配列よりも超重要!

最後に

今回はSSH配列のオススメピックアップセットをご紹介してきました。

HSHと合わせてモダンギターの定番配列という印象ですが、よりSSSに近いピックアップを選ぶのが間違いが少ないでしょう。

思えば、SSS配列でもリアだけシングルサイズハムを搭載してSSHのように使用するのが流行っていた時期もありました。SSHはシングルとハムのいいとこ取りが一番うまくハマるピックアップ配列だと感じています。

 


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