以前の記事でシングルコイル・ハムバッカーのメーカー別オススメピックアップをいくつかご紹介してきましたが、今回からは一般的なピックアップ配列ごとにオススメのピックアップを紹介して行きます。
以前の記事は以下のリンク先です。
この記事では、ストラトキャスターに代表されるSSS配列=スリーシングル配列のギターにオススメのピックアップセットをご紹介していきます。
目次
SSS配列のオススメピックアップセット
シングルコイルピックアップはハムバッカーに比べて外来ノイズに弱く、高出力であればあるほどその影響も顕著になります。ハイゲインサウンドを求める場合には、ピックアップキャビティに導電塗料を塗ってアースに落としたり、スタック構造のピックアップを使用するなど考慮する必要があります。
以下の画像は、やや見辛いですが、ピックアップキャビティやコントロールキャビティ内に導電塗料を塗ったストラトキャスター(乾燥中)です。
結構な手間ですが、劇的にノイズが少なくなります。
また、導電塗料を塗ってアースに落とすことで、ノイズと一緒に高域〜超高域成分も失われます。個人的には全く気にならないのですが、少し落ち着いたトーンになるという覚悟は必要かも知れません。
また、シングルコイルピックアップの持ち味であるブライト感・抜け感はピックアップの構造上、基本的には出力=パワーと反比例します。高出力なピックアップを使用する場合にはこの点にも注意が必要です。
SSS配列では単体での各ピックアップのサウンドに加えて、ハーフトーン時のサウンドも非常に重要になってきます。
Seymour Duncan
SSL-1 / SSL-1 RwRp / SSL-5
セイモアダンカンのSSL-1 VintageとSSL-5 Customを組み合わせたピックアップセットです。センターのSSL-1 RwRpはコイルが逆巻き(Reverse Wound)、マグネットが逆向き(Reverse Polarity)になっているピックアップで、ハーフトーン時にハムバッカーのようにハムキャンセル効果が得られ、ノイズが低減されます。
現代のロックシーンで求められるサウンドバリエーションを考えると、ブリッジピックアップはビンテージ志向のものよりもハイパワーであることが求められます。SSL-5はシングルコイルの旨味を残したまま高出力化が図られていて、センターのSSL-1 RwRpとのハーフトーン時にも違和感がなく、使えるサウンドを出力してくれます。
指板のRがフラットに近い場合には、同様の仕様でポールピースがフラットなSSL-2 Vintage FlatとSSL-6 Custom Flatを組み合わせて使用しましょう。
また、フロントピックアップによりパワーを求める場合には、SSL-5(SSL-6)をセットで、リアピックアップにそれほどのパワーが必要ない場合にはSSL-1をセットで使用するのも良いでしょう。
同社にはSSL-3 Hotというさらに高出力なピックアップもありますが、SSL-3はSSL-5に比べてブライトさが足りず、シングルコイルサウンドを活かし切れない印象があります。
全体的なサウンドのバランスも良く、ジャンルを選ばないオールマイティーな現代風のピックアップセットと言えるのではないでしょうか。
また、リアにJB Jrを載せてSSH配列のギターとして使用するのも面白いと思います。
SEYMOUR DUNCAN / SJBJ-1b White
Seymour Duncan
STK-S6 / STK-S6 / STK-S9b
SEYMOUR DUNCAN / STK-S9b BLACK
こちらのセットはシングルコイルの持つブライトさを最低限保ちながら、最大限高出力化を図ったセットです。ちなみに、ダンカンのピックアップでSTKから始まるモデルはスタック構造のピックアップになります。
スタック構造のピックアップは、弦振動を拾って出力する通常のコイルに加えて、逆巻のノイズキャンセル用のコイルが底面に仕込まれています。この縦積み構造のことをスタック構造と呼び、外来ノイズに対してハムバッカー同様の強さを持っているのが特徴です。
STK-S6 Custom Stack PlusはSSL-6 Custom Flatのサウンドを目指したスタックシングルピックアップで、スタック構造の中でもブライトさとパワーのバランスが非常に優れています。
ブリッジのSTK-S9b Hot Stack Plusはダンカンのスタックシングルピックアップの中でも最もハイパワーなピックアップで、そのサウンドはどちらかと言うとハムバッカーに近いものがあります。同パワーのハムバッカーほど低域はありませんが、自然と前に来る中域を豊富に持っていて、苦労なく歪みを得ることができます。
通常のシングルコイルのセットと比べるとシングルコイルらしさはあまりなく、また、ハムバッカーほど押し出しの強いサウンドは得られませんが、前述の通り、最低限のブライトさと多くのジャンルに対応可能な高出力を両立できるセットです。
私もこのセットで使用していますが、リアとセンターのハーフトーン時に出力差からか、若干まとまりが悪く感じたのでリアをハーフトーン時にオートタップする配線をした上で、センターピックアップを若干下げめの調整で使用しています。
オートタップ配線については下記記事も合わせてご参照ください。
参考記事:コイルタップ配線あれこれ(記事準備中)
また、このセットはエフェクター乗りが抜群によく、エフェクトボード・ラック内でサウンドを作り込むタイプのギタリストにもオススメできます。
注意点としてSeymour Duncan社のスタックピックアップは、リンク画像の通りピックアップカバーとピックアップ本体が一体になった構造をしています。他のシングルコイルピックアップのようにカバーの色を変えることはできないので、特別なこだわりがなければカラーを揃えて入手するのがオススメです。
ちなみに、ロゴが気に入らない場合、コンパウンドなどで研磨すると削り落とせます。ポールピースごと削らないようにマスキングをした上で、自己責任にてお願いします。
Seymour Duncan
STK-S4N / STK-S4 RwRp / STK-S6
SEYMOUR DUNCAN / STK-S4N BLACK
SEYMOUR DUNCAN / STK-S4 RwRp BLACK
上記の組み合わせが最低限のシングルコイル感と高出力を目指したものなら、こちらは最大限シングルコイルっぽいサウンドをノイズレスに出力するのを目指すセットになります。最初にご紹介したSSL-1とSSL-5のセットのスタック版ですね。
STK-S4 CLASSIC STACK PLUSに関しては、音を聞いてもスタック構造とは判別しづらく、ほとんど通常のシングルコイルサウンドと思っていただいて問題ありません。ハーフトーン時も含めて、抜群の音抜けです。
リアのSTK-S6Custom Stack PlusはSSL-6 Custom Flatに比べると歪ませた際の音抜け感は控えめですが、その分耳に痛くならないサウンドを出力してくれます。SSLのセット同様、リアにそこまでのパワーが必要ない場合にはSTK-S4Bをマウントするのもオススメです。
個人的には、ストラトなどのリアシングルピックアップには高域の出方が控えめなピックアップの方が扱いやすい印象を持っています。
ちなみに、スタック構造のシングルコイルは各社から出ていますが、最も『シングルコイルらしさ』、『シングルコイルっぽさ』を持っているのがSTK-S4なのではないかと感じています。他だとFenderのVintage Noiseless Stratあたりもスタック感は薄めですね。逆にDimarzio製はスタック感をはっきり感じます。この辺は好みと、目指すサウンドの方向性の問題だと思います。
Dimarzio
DP175 / DP175S / DP174
こちらはディマジオのベルベットシリーズのセットです。ディマジオのシングルコイルはスタック構造のモデルがほとんどですが、このシリーズは純粋なシングルコイルです。
個人的には、ディマジオピックアップは全体的にダンカンと比べて高域の抜け感が不足しているイメージがありますが、ベルベットシリーズは高域に美味しいピークが来ていて、歪ませてもクリーンでも綺麗に抜けてくれます。
フロントのDP175 True Velvet Neckはハイフレットでのリードプレイ時に特に実力を発揮するタイプのピックアップです。深く歪ませた状態でもペラペラにならず、芯が残りつつも抜けてくるサウンドを得ることができます。
センターのDP175S True Velvet MiddleはDP175と同仕様のハムキャンセル仕様(いわゆるRwRp)のモデルです。
リアにはTrue Velvetシリーズのパワーを若干高めたDP174 Red Velvetを選択しました。オーバードライブサウンド時に高域がうるさくなりすぎず、中域・低域もしっかりと出てくれるピックアップです。また、クリーン・クランチでのハーフトーンも綺麗に鳴ってくれます。
大きく気になったわけではありませんが、スワンプアッシュボディだと高域の美味しいところが若干痛く、コントロールが難しいと感じることがありました。アルダーボディのギターの方が相性が良いように感じます。
Dimarzio
DP180 / DP180 /DP189
こちらは、SSS配列をHSH(HHH!)配列として使うピックアップセットです。ブレードマグネットのピックアップはルックス面で好みが別れるところではありますが、その部分さえクリアしてしまえば、非常に面白いセットなのではないでしょうか。
フロント・センターのDP180 Air Norton Sは同社のハムバッカーDP193 Air Nortonのサウンドをシングルコイルサイズのピックアップで再現したモデルです。マホガニー製のボディにマウントすると中低域の押し出し感が強すぎて抜けて来ないイメージですが、アッシュやアルダーボディにマウントするとボディ鳴りを補完するようなサウンドを出力してくれます。
リアはDP189 The Tone Zone Sです。こちらも同様にDP155 Tone Zoneハムバッカーのシングルコイルサイズモデルです。若干音抜けの悪さを感じますが、シングルコイルサイズとは思えない図太いサウンドが特徴です。
このセットでハーフトーンサウンドを使用する場合には、そのままハーフトーンで使用すると音が潰れてしまうため、コイルタップ配線がほぼ必須になります。
個人的には、センターを常にタップ状態(白→緑+アース配線)で使用し、ハーフトーン時にフロントとリアをオートでコイルタップ(白+黒をアースに落とす)する配線がハムキャンセルも得られてベストだと思います。
ハムバッカーモデル同様、コイルタップ時にサウンドがガラッと変わるので、1本のギターで色々なサウンドを出力した場合には選択肢に入れてもよいと思います。
Suhr
ML Neck / ML Middle / ML Bridge
SuhrのシングルコイルMLのセットです。出力が控えめなML Classicもオススメです。センター用のMiddleはRwRpになっています。
音色自体はビンテージ系の音色ながら、若干ビンテージ志向のピックアップよりも高出力化が図られていて、どんなサウンドにも対応可能な器用さを持っています。現代版シングルコイルの一つの完成形と言えるのではないでしょうか。
Fenderのピックアップよりも高域が出ているイメージがあるのですが、耳に痛くならず、ギター本体の鳴っている分をそのまま出力してくれる印象です。私はこのMLをアッシュボディのストラトに搭載しています。
フロイドローズ搭載ギターのセンターピックアップにも搭載しているのですが、その時にはそこまでのバランスの良さを感じませんでした。セットでこそ生きるピックアップなのだと推測されます。
また、ある程度ボディやネック含めたギター本体が鳴っているギターに搭載しないと音が薄く感じられるかも知れません。
Fender
Custom Shop Fat ’50s Stratocaster Pickups Set
FENDER / Custom Shop Fat ’50s Stratocaster Pickups Set
こちらは、フェンダーからセットで販売されているピックアップセットです。パッケージ内に表記があったかどうか定かではありませんが、ピックアップ裏に青色のマーキングがされているのがフロント用、赤色のマーキングがされているのがリア用、マーキングがなく、リードの色が黄色+黒のものがセンター用です。
その名の通り、50年代風のビンテージサウンドを図太くしたサウンドで、クリーン・クランチ・オーバードライブどれを取っても高域に嫌味のない、現代風の太いサウンドが得られます。
ここ最近のFCS(Fender Custom Shop)製ピックアップの中でも、現代音楽シーンに合わせたチューニングがなされていて使いやすいピックアップですね。Marshall系のスタックアンプをドライブさせて使うのがよく似合います。
パワーはそこまであるわけではないのですが、高域が控えめで、その分、低域〜中低域が出ているため歪ませた時のパワー感は通常の帯域バランスのピックアップよりも感じることができます。名前でビンテージ系のピックアップと思われがちですが、中身は完全にモダンストラト用ピックアップです。
同社のTexas Special Stratに比べると中域〜高域が暴れる感じもなく、上品な歪み方をします。
他のピックアップと組み合わせも考えたのですが、残念ながらFenderはピックアップをセットでしか販売しておらず、現実的ではないので今回はセットでのオススメとさせていただきました。リアのみTexas Specialとかも面白いんじゃないかと思っています。
3行でまとめると
- パワーとブライト感は反比例!
- 深く歪ませるならノイズ対策はしっかりと!
- スタックシングルはノイズが少ない!
最後に
今回は実際にSSS配列にセットでマウントするシングルコイルピックアップからオススメを紹介してきました。
中でも、ダンカンのスタックとサーのピックアップは個人的にも好みで、実戦でバリバリ使用しています。
スタックピックアップが出始めた頃は、全くシングルコイルっぽさがなく「こんなもの使えるか!」位に思っていたのですが、近年のスタックシングルにはシングルコイルならではのブライト感も残っているものが多く、使いやすくなっていると思います。
実際にライブハウスなどでは、外来ノイズの影響は決して無視できるものではないので、悩まされている方は思い切ってスタックシングルに載せ替えてみるのも手だと思います。
当ブログのFacebookページです。
少しでも皆様のお役に立てたら「いいね!」していただけると歓喜します。