Ox-Lim

LIMITER

現役エンジニアが教える!おすすめリミッタープラグイン9種


自分のMIXと市販のCD音源などを聞き比べてみると、CDの方が音量が大きく感じたり、音圧があるように感じたりすることってあるんじゃないでしょうか。

ブラインドテストなどでも立証されているのですが、人間の耳は同じMIXでも音量が大きい方がいいMIXに聞こえてしまう残念な特徴があるので、MIXの音量、音圧というのは思っている以上に重要です。

じゃあマスターフェーダーで音量を上げて書き出してみようとすると、今度はピークがついてしまったり、歪んだサウンドになってしまったりと音圧どころではなくなってしまいます。

こんな時に役に立つのがリミッター、マキシマイザーと呼ばれるプラグインです。実際、市販のCDや配信音源ではマスタリング段階で100%リミッターが使用されています。

今回はMIXやマスタリングでの音圧アップに欠かせないリミッターについて、おすすめのプラグインをご紹介して行きます。



リミッターとは?

リミッターとは、ダイナミクス系エフェクトの一種で、コンプレッサーの仲間です。

ダイナミクス系エフェクトについては下記記事も参考にしてみてください。

操作子は単純なものが多く、THRESHOLDとCELLINGだけのリミッターも存在します。

CELLINGとは英語で『天井』の意味です。リミッターの最大出力レベルを表していて、通常であればPEAKが点灯してしまうレベルの入力があっても、出力信号はCELLINGで設定した値以上にはなりません。

THRESHOLDではリミッターの動作する『しきい値』を設定します。THRESHOLDで設定した値をCELLINGまで増幅するタイプのリミッターでは、THRESHOLDを下げていくと音量が上がって行きます。

このリミッターをマスタートラックにインサートしたり、マスタリング段階で使用することで、市販の楽曲のような音圧感を出すことが可能になります。一時期のような音圧戦争は過ぎ去りましたが、依然として『音圧を上げる』と言うことはMIX、マスタリングのテクニックとして重要なものです。

ちなみに、MIXの段階でトラックごとや楽曲内のパートごとのダイナミックレンジをオートメーションなどである程度詰めている状態でないと、リミッターは効果的に作用しません。リミッターの前段に軽めの設定のコンプレッサーをインサートする、など使用法を工夫することでさらに効果的に運用できる場合もあります。

 

L1 Ultramaximizer
Waves

L1

1つめはWavesのLシリーズリミッターの1号機、L1 Ultramaximizerです。Lシリーズは別名Wavesリミッター3兄弟なんて言われるくらいド定番のリミッタープラグインです。リミッターの基本が詰まっているプラグインで入門用にもぴったりです。

再生中のピーク先読み機能(ルックアヘッド)を搭載していて、不意のピーク成分にもしっかり反応してくれるリミッターです。

 

また、L1+(上記画像)では、IDRディザーを内蔵しています。ディザーとは、24bit→16bitの変換時などにデジタルデータにあえてノイズを加えるエフェクトで、ビットデプス変換の際の音質劣化を最小限に食い止めます。

ノイズと言っても、音となって現れるノイズではなく、デジタルデータの変換時に乱数を加えるものなので、ご安心ください。

Waves GOLDにもバンドルされているので、使用されている方も多いのではないかと思います。
WAVES / Gold Bundle
WAVES / Gold Bundle
Waves GOLDにバンドルされているおすすめプラグインについては、こちらの記事も合わせてご覧ください。

 

L2 Ultramaximizer
Waves

L2

3兄弟の次男L2はL1と同様のシンプルな操作性のリミッターです。見た目もリリースタイムをオートに出来る点が違うくらいですかね。

シンプルな外見ながらその実力は確かで、音圧戦争の火つけ役とも言えるほどの大ヒットプラグインリミッターです。

サウンド的にはL1よりハードに潰しても音楽的に破綻しないのが特徴で、2MIXだけではなく、バスやトラックにインサートして使用するのも有効で、ステム段階で一旦音圧を稼いでからマスターでもう一段階稼ぐ、というように段階的に使用することで無理なく音圧アップが可能です。

基本バンドルではPLATINUMに含まれていますが、正直なところPLATINUMを購入するくらいなら一つ上位のDIAMONDを購入することを強くおすすめします。
WAVES / Platinum
WAVES / Platinum
Wavesバンドルの内容については以下の記事をご参照ください。

 

L3 Ultramaximizer
Waves

L3

Wavesの3号機にして三男、L3です。

L3 UltramaximizerはL3の中で最もシンプルなコンフィグレーションで、L1、L2と同様の操作で簡単に使用可能です。

表面的にはL1、L2と大差ないですが、L3 Ultramaximizerは内部でマルチバンド動作をしているため、EDMのように4つ打ちのタイミングで低域に大きなピーク成分があるMIXでも他の帯域が不自然にならず、自然なリミッティングを行うことが可能です。

 

L3 Multimaximizer
Waves

L3-multi

L3 MultimaximizerはL3の真の姿と言うべきマルチバンドリミッターです。

L3 Multimaximizerのようなマルチバンドリミッターでは、通常のリミッターのように設定を行った上で、各周波数バンド個別に音量調整が可能です。

また、ユニークなのが[Priority]コントロールです。日本語訳すると『優先順位』とかになるのでしょうか、各バンドごとの優先順位を設定することで、上位に設定した周波数バンドのTHRESHOLDが上がり、潰されにくくなります。

マルチバンド版もダンスものなんかにはベストマッチな印象がありますね。

 

L3-LL Ultramaximizer
Waves

L3-LL

L3-LLとはL3のLL(Low Latency)バージョンです。L3よりも負荷が軽く、レイテンシーも少ない(L1、L2と同程度)ので、トラックインサートやバスインサートにもガンガン使えます。

サウンドもL3通常版と比べてクリアで原音からの変化も少ない印象があるので、私はマスタリング用のセッションを別で立ち上げても、リミッターにはLLを使用しています。

 

L3-LL Multimaximizer
Waves

L3-LL-multi

こちらは、Low Latency版のマルチバンドリミッター、L3-LL Multimaximizerです。

これもL3とは別物のサウンドで、少々突っ込んでも原音から逸脱しない優秀なマルチバンドリミッターです。

個人的な好みですが、L3通常版のサウンドは味付け感が目立ち、あまり好きではないのでこちらのLL版を多用しています。

L3だけで4種類もあって、結局どれがおすすめなんだという感じですが、ご安心ください。L3 Multimaximizerには、上記のL3 Ultramaximizer、L3 Multimaximizer、L3-LL Ultramaximizer、L3-LL Multimaximizerの4つのプラグインがセットになっています。

ちなみに、Waves DIAMONDにはL1、L2、L3のLシリーズが全て(L3-16以外)バンドルされています。他にも有用なプラグインが多数バンドルされているので、この機会に導入を考えて見てもよいかもしれません。
WAVES / Diamond
WAVES / Diamond



Oxford Limiter
Sonnox

Ox-Lim

続いては、優等生プラグインを多数リリースしているSonnoxからOxford Limiterをご紹介します。

操作子が多いので初めはかなり戸惑いますが、慣れると細かい調整が可能になるので便利に使用することが可能です。Oxford LimiterではWavesのLシリーズなどとは異なり、THRESHOLDではなく、INPUT GAINで入力信号の大きさを設定し、CELLINGではなく、OUTPUT LEVELで出力を設定します。

入出力メーターを見ると、デジタルメーターなのにプラス領域があります。これはどういうことでしょう?

実は、Oxford Limiter内部の演算では0dBFS以上の領域に余裕があるため、0dBを超えてもクリッピングを起こしません。その状態でENHANCEを調整することで、原音が持つサウンドの強弱感を残したまま超感情の音圧を上げることが可能です。

また、RECOM METERというサンプリングポイントの間で起こるクリッピング、インターサンプルピークを検知してメーター表示する機能も備わっています。こちらもディザー機能を搭載していて、MIX、マスタリングの最終弾で自然にビットデプスを可変させることができます。

サウンド的にはL2と少し近い印象がありますが、こちらの方がクリアで滑らかに仕上がる印象があります。リリース速度を最短に設定しても若干戻りきらないので、ハードなリミッティングには別のリミッターを使用した方がうまく行くことが多いです。

Sonnoxのプラグインを使用するためにはiLokが必要という点に注意が必要ですが、非常におすすめできるリミッターです。
SONNOX OXFORD / Oxford Limiter Native
SONNOX OXFORD / Oxford Limiter Native

また、Oxford Limiterは単体だけではなく、EliteバンドルやEnhanceバンドルにも含まれています。
SONNOX OXFORD / Sonnox Elite Native
SONNOX OXFORD / Sonnox Elite Native

EliteではLimiterの他にEQ、Reverb、Dynamics、SuprEsser(ディエッサー)、Inflator、TransModとMixに使用する一通りのSonnoxプラグインがバンドルされています。個人的な好みではありますが、EliteバンドルだけでMixが完結可能なほど高品位なエフェクト群なので、この機会に思い切って導入するのもアリだと思います。
SONNOX OXFORD / Sonnox Enhance Native
SONNOX OXFORD / Sonnox Enhance Native

Enhanceには、Limiter、Inflator、TransModの3つのプラグインがバンドルされています。Inflatorは厳密にはリミッターではないのですが、倍音を加工することにより聴感上の音圧をアップさせることができる一風変わったプラグインです。

また、基本バンドルのEssentialにこのEnhanceを足すと構成内容がEliteと一緒になります。

ちなみに、この記事を書いていて知ったのですが、Oxford LimiterのG5ライセンスを持っていると、UAD版で先行リリースされていたOxford Limiter V2へと無償アップデートが行えるそうです。後ほどアップグレードしようと思います。この記事書いてなかったら気づきませんでした。感謝。

 

Maxim
Avid

maxim

お次は、Avid ProToolsの標準プラグインリミッターMaximです。ProToolsでしか使用できませんが、音質の変化も少なく簡単に使用可能です。

便利な点はヒストグラム機能で、再生中のレベルがグラフに蓄積されていきます。このグラフが絶妙で、右のフェーダーの高さともリンクしているので、直感的にTHRESHOLDを決定することが可能です。

また、MIXパラメーターを使用することで、エフェクトのかかっていないDRY音とリミッター処理されたWET音をブレンド出来るのも面白い機能です。低域の質感が物足りないベーストラックなどににインサートしてリミッターをかけた音を少しだけブレンドしてやると、それだけで質感を得ることができたりもします。

 

Ozone
iZotope

OZONE

最後は、統合型マスタリングプラグインのiZotope Ozoneです。

単純にリミッターとして使えるだけではなく、マスタリングに必要なプロセッサーがこれ一台で全て揃うことがポイントです。ただ、Ozoneだけで音圧アップを図るとありがちなサウンドになってしまう傾向があるので、前段にコンプレッサーをかましたりして色を変えて使用したりしています。

動作モードとインサートエフェクト次第では信じられないほどに負荷が高く、またレイテンシーも大きいところに注意が必要です。Ozoneを使用する際には、一旦2MIXを書き出してマスタリング用に別セッションを立ち上げてからにしましょう。

OzoneはDAW用のプラグインとしてだけではなく単体のアプリケーションとしても動作可能なので、アルバムのマスタリングなどの際には単体で起動した方が良いかもしれません。
iZotope / Ozone7
iZotope / Ozone7



☆まとめ☆

  • リミッターを使用してMIXの音圧アップを!
  • かけすぎると潰れたサウンドになってしまうので適度に!
  • リミッターの前段までの下処理を確実に!

 

最後に

以前よりよく使用しているリミッタープラグインについて書いてみました。

並べてみて気づいたのですが、やっぱり若干ラインナップが古いですね。最近Slate DigitalやFabFilterなどから評判の良いリミッターが数多くリリースされているので、試してみたいところではあります。

どのリミッターにも言えることですが、リミッターに突っ込む前にしっかりと2MIXやサブマスター、バスMIXを仕上げておく必要があります。特になれないうちは低域の処理が甘いために不要な低域に反応してリミッターがかかりっぱなしになってしまったり、再生機器の再生周波数外の部分が出すぎていて、結果として音量が不安定になってしまったりすることが多いです。

マスタリング時やMIXの仕上げ時には目標とするサウンドのCDなど(リファレンスって言います)と比較しながら作業をし、細かい部分までしっかりと確認しましょう。

また、普段からメータープラグインやアナライザープラグインを使用し、視覚的にもMIXを捉えておくとリファレンスとの違いや、MIXの中で出すぎている帯域、不足している帯域が判断できます。

各種リミッターにもメーターが付属していますが、使い慣れていることが最重要なので可能であれば、いつも使用するメータリングプラグイン、アナライザープラグインを使用しましょう。

 


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ZAL

 

 

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コメント

    • な名無しさん
    • 2017年 2月 22日

    > 便利な点はヒストグラム機能

    Digital Performerを使い出したところですが、付属プラグイン(のリミッターモード)にヒストグラム機能がついていて面白いとは感じていました。

    もっとも面白いなぁレベルで理解している訳ではありませんが汗 多分、この曲は音量低い箇所が多い!とかデカイ音が多過ぎるとか

    いや1番は3σというかヒストグラムなんだから標準偏差な分布になった時が1番 音圧高いのかなと
    あらら、それは単なる数学だよな、数学嫌いなんだけどーとか思ったり(笑

      • ZAL
      • 2017年 2月 22日

      >名無しさん

      コメントありがとうございます。
      DP自分では使ったことがないので、リミッターのヒストグラム機能、知りませんでした。勉強になります。

      私は、標準偏差を見るというよりも、山の8〜9分目を目安にして潰すことが多いです。
      それ以下のところにスレッショルドを取ってしまうと、音楽的な盛り上がりの時に真っ平らなMIXになってしまうので。。。

      ヒストグラムは、オートメーションが上手く描けているかどうかの指標にはなると思います。

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