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定番光学式コンプと言えばコレ!LA-2Aとモデリングプラグイン

今回の記事では、前回に引き続き定番のビンテージコンプレッサーと、それらのモデリングプラグインについてご紹介していきます。

1176とプラグインをご紹介した記事は以下になります。

今回ご紹介するのもコンプ界のビッグ3から、光学式コンプレッサーの大定番、LA-2Aとそのモデリングプラグインをご紹介していきます。



目次

Teletronix
LA-2Aとは?

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LA-2Aは1960年代にTeletronix社から発売された、光学式コンプレッサーです。LAはLebeling Amplifierの頭文字で、レベリングを行う増幅機関=コンプレッサーを表しています。ちなみに、元々は放送局用に作られたそうです。

現在では、後続会社のUniversal Audio社からTeletronixを銘打ったリイシューモデルが販売されています。
UNIVERSAL AUDIO / LA-2A
UNIVERSAL AUDIO / LA-2A

オリジナルハードウェアの特徴

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さて、当然のように光学式コンプ、とご紹介してまいりましたが、その構造はDAW全盛の今からは考えもつかないような以下のような方法です。

まず、コンプレッサーへの入力信号に反応して、内部の電球、LED、発光部品が光ります。その光にフォトセルと呼ばれる受光部品が反応し、光量に応じて入力信号を減衰させることによってコンプレッション効果を得ている、というものです。

他には後継機のLA-3AやTubeTechのCL-1Bなども同様の光学式コンプレッサーです。光学式コンプのことを「光るコンプ」という意味のオプティカルコンプ(Optical COMP)やオプトコンプ(Opto COMP)と呼んだりもします。

構造上、トランジスタやICを使用したコンプレッサーよりもアタック・リリース共に遅く、動作としては不安定ですが、そのぼんやりとしたコンプ感が特徴的で、現代でもビンテージ品、リイシュー品ともにスタジオで多用されています。

また、LA-2AはGAIN段等の増幅回路に真空管を使用していて、それによって暖かいサウンドが得られるのが特徴です。FET方式のコンプレッサー1176とは正反対の特徴を持っています。

各パラメーターについて

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LA-2Aに関しては、操作可能な項目がこれでもかっ、て位少ないのが特徴です。基本的にはGAINとPEAK REDUCTIONの2つのコントロールだけでサウンドを組み立てていきます。現代の一般的なコンプに搭載されている基本的なパラメータ、Attackは固定、Releaseはオートリリースに固定で、それぞれ設定変更不可です。

ThresholdはPEAK REDUCTONノブを時計回りに上げていくことで、下がって行きます。通常の感覚だと反時計回りに下げていった時にコンプレッションされるのですが、ここではあくまでもリダクション量を決める為に逆の動作になっています。

Ratioはパネル左端のLIMIT、COMPRESSスイッチで切り替えられます。個人的にはLIMITモードで使用したことがないのですが、COMPRESSモードではおおよそ3:1、LIMITモードではおおよそ∞:1のRatioに設定されています。

基本的には、PEAK REDUCTIONでコンプレッションする量を決めて、落ちた分の音量をGAINを使って補うという使用法になります。

リダクション量は中央のメーターに、これまた反応の遅いVUメーターで表示されます。メーターの表示はパネル右端のツマミで出力レベルとリダクションに切り替えられます。

パネル左端LIMIT/COMPRESSスイッチの横についている変な(?)ノブはエンファシスノブです。このノブの効果はサイドチェーン信号のコントロールです。時計回りに回し切った位置が標準で、入力音は全帯域に渡ってコンプレッサーに掛けられますが、反時計回りに回していくと、徐々にコンプレッサーは低域には反応しなくなってきます。

LA-2A系プラグインの有効な使い所

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ここからは、LA-2AをモデリングしたプラグインをMIX内で有効に使っていく方法をご紹介いたします。

基本的には、モデリングプラグインもオリジナルハードウェアと同じく、アタック・リリースの遅いコンプレッションが特徴です。そのため、音の立ち上がりの速い楽器のアタックを潰したい場合には不向きです。

打楽器などの、アタックを逃した後の余韻の部分にコンプレッサーを引っ掛けて使う場合や、持続音主体の弦楽器や管楽器、ボーカル類のコンプレッションは得意とする分野ですね。

アタックだけではなくリリースも他の動作形式のコンプと比べて相当に遅いので、歯切れの良いコンプレッションではなく、入力がある間は掛かりっぱなしのような使い方が向いています。ある程度深めにコンプレッションさせても、コンプ臭さが前面に出ないのでエンファシスノブで低域を逃しながら、エレキベースのレベリングにも有効活用ができます。

コンプレッサー自体の動作では大きく音色が変わるようなことはないのですが、GAINノブの設定値でサウンドが変わってきます。真空管の特有の暖かいサウンドを得る為には、ちょっと深めのコンプ+ちょっと高めのGAINに設定するのがオススメです。個人的にはナチュラルコンプでも、メーターで最大-7位までのコンプレッションはアリだと思っています。

また、コンプを多段掛けするにもオススメです。私は、初段に挿してある程度レベルを整えてから、後段のコンプでしっかり潰してみたり、前段に1176系のコンプを挿してピークのみをざっくりと叩いてから、バスにまとめてLA-2Aを挿して真空管の暖かさを足してみたりして使っています。



モデリングプラグイン紹介

LA2A

オリジナルハードウェアとその特徴や使いどころについて、ざっくりとご理解いただけたでしょうか?

ここからは、実際にDAW内で使用することになるLA-2Aモデリングプラグインをメーカー別にいくつかご紹介して参ります。

今回ご紹介していないプラグインでも、操作子やメーターの配置が似ていたり、名前にLAとか、LEVELING AMPLIFIERとか、2Aとかがついているプラグインは、このLA-2Aのモデリングやエミュレートプラグインである可能性大、です。

それ以外でも、OPTOとついていたりするコンプレッサーやOPTOモードに切り替えられるコンプレッサーは、光学式コンプを模したコンプレッサーであるはずなので、アタックリリースが遅めでぼや〜っとした効果のコンプレッションを活かして使っていきましょう。

UNIVERSAL AUDIO
Teletronix LA-2A Classic Leveler COLLECTION

UALA2A

正当な後継者、UNIVERSAL AUDIOのUAD-2プラグインです。年代別に3種類のLA-2(A)をモデリングしています。同じプラグインの中でスイッチ切り替えとかにしないところがUAっぽさなんですかね・・・。

60年代中盤に作られたLA-2Aとしては最も一般的なTeletronix LA-2A Grayは、前述の特徴通り、ゆっくりとしたアタックとリリースを持っています。

最も新しい年代に作られ、銀色のパネルが眩しい(と言ってもつや消しですが)Teletronix LA-2A Silverは、3台の中では最もアタックが早く、色々なソースに適用できるのが特徴です。

最も古い年代のLA-2はLA-2Aの前身モデルで、一般的なLA-2Aよりもさらに遅いアタック・リリースが特徴です。LA-2Aとは違いエンファシスコントロールは搭載されていません。また、メーター切り替えもメーター下に付いています。

リイシュー品しか使用したことのない私が言うのもなんですが、どのモデルも非常によく出来ていて、操作子の少なさも相まってイメージ通りの効果をすぐに得ることが可能です。

また、基本的にUADオーディオインターフェイスやアクセラレータを購入すると、Teletronix LA-2A Legacyと言う、UAD-1時代のDSP負荷軽減バージョンが付属してきます。このバージョンでは入出力のアナログ歪み回路が搭載されておらず、GAINをあげることによるウォームでファットなサウンドメイクはできませんが、十分に高品質なプラグインとなっています。

UNIVERSAL AUDIOのUAD-2プラグインを使用するためには、同社のDSP搭載オーディオインターフェイス、または、UAD Satelliteと呼ばれる外部DSPが必要となるため、若干ハードルが高いのが難点ですが、LA-2A以外にも高品位なアナログ系プラグインが揃っているので大変オススメです。
UNIVERSAL AUDIO / ARROW
UNIVERSAL AUDIO / ARROW

UNIVERSAL AUDIO / UAD2 SATELLITE USB QUAD CORE
UNIVERSAL AUDIO / UAD2 SATELLITE USB QUAD CORE

PC/Macと接続するインターフェイスによって必要なハードウェア・インターフェイスが異なる点にご注意ください。

余談ですが、UADのオーディオインターフェイスは、SoftubeやBrainworxから超高品位なギター/ベースアンプシミュレータープラグインがUAD-2プラグインとしてリリースされているため、DTMで作曲をするギタリスト、ベーシストには特にオススメしています。Native動作のプラグインではCPU負荷が思いアンプシミュレータープラグインでも、外部DSPを使用することでDAW自体の動作を劇的に安定させられるのが大きなメリットです。

Waves
CLA-2A

CLA

アメリカ人のエンジニア、アルジさんの持っているLA-2Aをモデリングしたプラグインです。Wavesには、ちょくちょくアルジさん達がフィーチャーされていますね。

CLA-2Aは単体だけでなく、LA-2Aの後継機LA-3AとFETコンプの1176Rev.A、1176Rev.E(どれもアルジさん所有の個体)をモデリングしたCLA-3AとCLA-76がセットになっているCLA Classic Compressorsバンドルでも入手可能です。一般的なデジタルプラグインと違い、適材適所に使用していく必要のあるアナログモデリングプラグインはセットで持っておくのもいいんじゃないでしょうか。個人的にはLA-3Aが好きだったりします。

WAVES / CLA Classic Compressors
WAVES / CLA Classic Compressors

基本的にはUI含めてオリジナルを踏襲していますが、エンファシスコントロールはHiFREQ(高周波数)コントロールとしてパネル下部の枠外に、メーター切り替えでは、入力レベルもモニタリング可能になっています。

また、Waves定番のANALOGスイッチも当然搭載されています。電源周波数別に50Hzと60Hzにコントロール可能です。他の記事でも書いたのですが、個人的にはWavesのANALOGスイッチはONにした段階で再生を停止している状態でも、無入力状態でも結構なノイズを発生させるのでOFFで使用しています。ONにすることはまずありません。

サウンド面では、オプトコンプのぼや〜っとした部分をうまく捉えていますが、GAINを上げていった時や、深めにコンプレッションしたときに若干のクセを感じます。アルジさんの個体によるものなのか、Waves独自のデフォルメによるものなのかは不明ですが、ドライブさせて使用する前提であればむしろ歓迎できる仕様なのかも知れません。

また、アナログモデリングプラグインは、アナログ歪みの演算の関係で動作が重くなりがちなのですが、Wavesのプラグインは非常に軽量動作なのも大きなメリットとして上げられます。MIX時に頻繁に調整するコンプレッサーをフリーズやコミットせずに、同時に多チャンネルに挿して使用できることは単純にメリットでしかないですね。

Native Instruments
VC 2A

VC2A

Native Instrumentsの音源バンドル、KOMPLETE ULTIMATEに入っているVC 2AもLA-2Aのモデリングプラグインです。

シンセ屋さんがモデリングプラグイン?、と思われるかも知れませんが、UIの通りSoftube社と共同開発のプラグインとなっています。Softubeはアナログ機器のモデリング分野では業界随一のメーカーで、VC 2Aも非常によく出来ています。

Wavesほどではないですが、このプラグインも動作が軽量なのが特徴です。

オリジナルの特徴に加えて、サイドチェーン信号のGAINが調整出来たり、パラレルコンプレッションがプラグイン内部で可能だったり、と現代的な使用方法を想定したコントロールが可能になっています。

単体での導入は正直あまりオススメ出来ませんが、通常版のKOMPLETEからKOMPLETE ULTIMATEにアップグレードした場合には追加されるので、追加音源と共に活用していくのがオススメです。

Native Instruments / KOMPLETE 11 ULTIMATE
Native Instruments / KOMPLETE 11 ULTIMATE

また、Softubeとの共同開発コンプレッサーバンドルVINTAGE COMPRESSORSも用意されています。こちらにはVC 2Aに加えて、UREI 1176モデリングのVC76とdbx 160モデリングのVC 160がバンドルされています。上記のKOMPLETE ULTIMATEにはこれら3台全て含まれるので、このバンドルも少々弱いかな、と感じてしまいます。

IK Multimedia
White 2A Leveling Amplifier

IK-2A

毎度の事ながら攻めたネーミングのプラグインをリリースしているIK Multimedia製のLA-2Aモデリングプラグインです。単体プラグインではなく、統合型ミックス、マスタリングバンドルのT-Racksの一部、という位置づけのプラグインです。

光学式の特徴をよく掴んでいて、使いやすいプラグインなのですが、上記プラグインに比べると若干動作が重い印象があります。ステレオモジュールにはM/Sモードがあったりと、面白い仕様ではあるだけにその部分が残念です。どちらかというと、オリジナルを正確にモデリングしたプラグインと言うよりも、オリジナルに似せた、より現代的なプラグインとして製作されたのかな、と感じます。

これも、T-Racks CUSTOM SHOPからの単体購入はあまりオススメできません。導入の際には、あくまでもバンドルに付いてくるプラグインとして、他のIKプラグインを使用していて、クロスグレード可能な場合のおまけとしてオススメできるプラグインです。

同社のギターアンプシミュレーター、Amplitubeユーザーの方や、これからAmplitubeの導入を考えている方には非常にオススメできます。

同社のプラグインは基本的に機能限定版となっており、全部解除するには相当の課金が必要となります。しかし、各プラグインバンドルにはMAX版が存在し、こちらを導入する事で全ての機能が解放された状態になります。

このWhite 2AはT-Racks MAXにバンドルされていて、他のプラグインも合わせて導入を検討している場合には初めからMAX版を導入するのが結果的に割安だったりします。

IK MULTIMEDIA / T-RackS MAX
IK MULTIMEDIA / T-RackS MAX

また、DAWを始めたての方など、これからAmplitubeの導入を考えている方には、Total Studio MAXバンドルが超オススメです。Total Studio MAXバンドルには、、Amplitube MAXに加えて上記のT-Racks MAX、マルチ音源プラグインのSampleTank MAX、オーケストラ音源のMiroslav Philharmonik 2がバンドルされています。

IK MULTIMEDIA / Total Studio MAX
IK MULTIMEDIA / Total Studio MAX

当然、全てのプラグインがMAX版なので煩わしい機能制限もなく、導入直後から全機能を使用可能です。単体で見ると高価ですが、ギターアンプシミュレーターが含まれた統合型プラグインバンドルとしては割安な部類に入ってきます。



3行でまとめると

  • アタックリリースは遅めで、調整出来ない!
  • 深めにかけてもコンプ臭さが出にくい!
  • GAIN段は真空管で柔らかい音色が持ち味!

最後に

今回は定番光学式(OPTICAL)コンプレッサー、LA-2Aとモデリングプラグインについてご紹介してきました。

1176編と同様にDAW標準のモデリングプラグインで簡単にお試しいただけるかと考えていたのですが、DAW標準でLA-2Aがモデリングされているのは、Logic標準CompressorのVintage Opto位のようです。76に比べると一般受けしないんですかね・・・。

個人的には、リードボーカルトラックやベーストラックには必ず選択肢に入るコンプレッサーだったりします。ナチュラルコンプと真空管の柔らかい音色を是非試してみてください。

 


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POSTED COMMENT

  1. ピック より:

    >ThresholdはPEAK REDUCTONノブを時計回りに上げていくことで、下がって行きます。通常の感覚だと反時計回りに下げていった時にコンプレッションされるのですが、ここではあくまでもリダクション量を決める為に逆の動作になっています。

    …とありますが、

    ThresholdはPEAK REDUCTONノブを時計回りに上げていくことで、上がって行くのでは?

    • ZAL より:

      ピックさん

      コメントありがとうございます。
      Thresholdが低ければ小さい信号でもコンプが動作する、と言い換えることが出来ます。

      恐らくただしきい値が下がるだけの動作ではありませんが、
      端的に言ってLA-2AではPEAK REDCUTIONを時計周りに回していくとThresholdは下がる、と言う動作になります。

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