2018年のブラックフライデーでSoftube Console1のオプション、British Class AとAmerican Class Aをゲットしたので早速試用してみました。
元は、UADとの親和性以外に、この2つのオプションありきでConsole1を導入したので、半年間ブラックフライデーを待った甲斐がありました。
さて、標準搭載のSL4000Eについては、プラグインウィンドウにSolid State Logicとしっかり記載がありますが、British Class AとAmerican Class Aとは何者なのでしょうか?早速見て行きましょう。
「Console1って何?」って方はまず以下の記事をご覧ください。
目次
British Class A
こちらがBritish Class Aのプラグインウィンドウです。特定のメーカー・ブランドを指す表記はどこにもありませんが、『70年代』、『イギリス製』、『スウィートなドライブサウンド』と言うキーワードから推察できるとおり、Neveのモデリングプラグインですね。
オリジナルのハードウェアではMid EQが1ポイントである、というヒント(?)から察するにNeve 1073をモデリング、ないしはシミュレートしたプラグインでしょう。
サウンド面でも低域のどっしりとした安定感や重心の低さ、音の密度のようなものが得られます。
まだ試用段階で本チャンMIXに使用して無いのですが、CHARACTERをマイナス域に取ったDRIVEを5.0やそれ以上に設定したサウンドがNeveの持ち味である、音の太さが際立つように感じました。
British Class Aの特徴
基本的には、Console1標準のSL4000Eと同じ操作で使用可能です。
SHAPEの特徴
SL4000Eとは異なる点はとして、Dynamic ShaperセクションにShaperが組み込まれておらずゲートのみになっている点が上げられます。
個人的にはドラムトラックなどを中心に、SHAPERを使用してトランジェントをコントロールする使い方が気に入っているので残念です。現状では、Neveサウンドが欲しいけどトランジェントを柔軟にコントロールする必要がある時には、SHAPEだけ他のモジュールを使用する方向で考えています。
COMPRESSORの特徴
British Class Aでは、CompressorセクションがLimiterと切り替え可能な点が特徴として上げられます。
コンプレッサーは幅広く使いやすいコンプレッサーですが、リミッターに関してはかなり潰して使った方がうまいところが活かせるような印象です。
下記、MI7様の製品紹介ページからの引用ですが、かなり恐ろしいことが書かれております。
British Class A Limiterは、非常に詳細なレベル・コントロールとして、あるいはサウンドを叩きのめして屈服させるためにお使いください。
個人的に、サウンドを屈服させようとしたことは一度もありませんが、今後の音楽との付き合い方を考えさせられる文言ですね。
余談ですが、MI7様は本家Softubeページの英文を余すことなく訳して掲載されています。あまりに派手な宣伝文句が気になって本国サイトを観に行って気づきました。とても良いと思います。
EQ / FILTERの特徴
実際のEQについて見て行く前に、大見出し直下の画像のEQカーブをよく見ると、微妙にうねっているように見えるのではないでしょうか?
実はこれ、うねってて合ってます。うねって見えても視覚異常では無いのでご安心ください。
モデリング、あるいはシミュレート元のハードウェア特性をそのまま表しているために、EQ=Flat時でも中域が若干落ち込み、高域が若干伸び、10k辺りからロールオフしています。通すだけで音が変わるハードウェアを再現するために、通すだけで音が変わるプラグインになった、というところですね。
また、Neveの特性を再現して、HPF/LPFの肩の部分もグラフに表されています。
低域のブースト感はグラフ同様あまり感じませんが、高域をロールオフさせる際にカットオフ手前の周波数帯でしっかりと主張してくれるので、各トラックで抜け感を出しながらもうるさくならないMIXを組み立てることが可能です。
上の画像、数値上では16kHzをシェルビングで2dBブーストしているだけですが、グラフ上は目測5dB程度のブーストになっています。この特性に慣れてしまえば、LPF(High Cut)をうまく使うことで、不要な高域のブーストも避けられることでしょう。
American Class A
続いてはこちらのAmerican Class Aです。こちらもBritish Class A同様に特定のメーカー・ブランドを指す表記はどこにもありませんが、『現代のロック』、『アメリカ製』、『プロポーショナルQ』と言うキーワードはやはりAPIのモデリングプラグインですね。
CHARACTERを0〜プラスに取ったDRIVEサウンドを使用することで、トラック数の多いセッションでもAPI独特の抜け感を得ることができ、本来の力を発揮してくれる印象を受けます。
ちなみに、British Class AはConsole1専用のオプションモジュールのみであるのに対して、American Class AはConsole1対応プラグインも同一ライセンスで使用可能です。
Console1の[LOAD]→[STRIP]からだけではなく、単体のプラグインメニューにも表示され、通常のチャンネルストリッププラグインとして使用することができます。
こちらがそのプラグインウィンドウです。配色がAPIそのものですね。
当然モジュールの入れ替えや、Console1ハードウェアでの操作はできませんが、元がDSPベースのプラグインであるため、サウンドは全く同一です。
American Class Aの特徴
ここからは、プラグインバージョンではなく、Console1のストリップとして使用する場合についてご説明していきます。
SHAPEの特徴
American Class AのSHAPEセクションはSL4000E同様にSustain、PunchでコントロールするSHAPERセクションが備わっています。
特にAPIサウンドはモダンでタイトなドラムサウンドを作るために使用することが多いので、この仕様は大変助かります。
COMPRESSORの特徴
American Class AでもBritish Class A同様にコンプレッサーセクションに2つの異なるモジュールが用意されています。
American Class Aのコンプレッサーは、上図中のAmerican Class A Smooth CompressorとAmerican Class A Punchy Compressorから選択可能です。
コンプレッサーについて、MI7様の製品ページに以下の文言があります。
フィードバックとフィードフォワードを切り替えられる魅力的なコンプレッサー
つまりは、API2500コンプレッサーなどと同様にフィードバック動作とフィードフォワード動作を切り替え可能である、ということですね。
Smooth Compressorがフィードバック方式、Punchy Compressorがフィードフォワード方式のコンプレッサーに当たります。プラグインバージョンでは、[NEWTYPE]というスイッチで切り替えが可能な模様です。
ちなみに、フィードフォワード方式のコンプレッサーとは、コンプレッション前の信号に反応して動作するコンプレッサーです。現在皆様が使用している、ほとんどのコンプレッサーはこの形式です。入力信号に対してコンプレッションをする量が決まるため、キビキビと反応し、しっかりとレベリングをすることが可能です。
一方、フィードバック方式のコンプレッサーとは、コンプレッション後の信号に反応して動作するコンプレッサーです。コンプレッサー自身がコンプレッションした信号に反応してコンプレッションを行う一風変わった動作をします。文字にするととても読みづらいですね。
フィードバック方式のコンプサウンドの特徴としては、一旦コンプで慣らされたレベルに対してコンプレッションを行うので、同じ設定値でもリダクションの反応が遅いです。アタック、リリースともにフワッと緩やかに動作します。このフィードバック方式を採用しているコンプレッサーは、あまり数が多くありませんが、Rupert Neve DesignのコンプレッサーやElysia Alpha Compressor(切り替え式)、API 2500(切り替え式)などに採用されています。
EQ / FILTERの特徴
APIのEQを語る上で欠かせないのが、プロポーショナルQという単語です。
プロポーショナルQとは、GAINの変動幅に合わせてQ(EQの作用する帯域幅)が狭くなっていくAPI EQの最大の特徴です。この特徴を持っているため、大きなブースト・カットを行っても周辺の帯域に影響が少なく、ピンポイントのブースト・カットが可能になります。
目盛りがリニアでは無いのでグラフだと分かりづらいですが、4dBカットしている5kHzの谷と2dBカットしている150Hzの谷の幅が違います。
また、API 550B(550L)モジュール同様にFREQUENCY、GAINともにクリック式で決まった値から選択する方式になっています。それらの値の中間値を取ることはできません。
EQ作用の帯域幅を決定するQコントロールについては搭載すらされていません。プロポーショナルQを使え、ってことです。ここがAPI EQの賛否両論な部分で、SSLのように広めのQで柔軟なEQをするような使い方には向いていません。
しかしながら、American Class Aは一味違いました。
SELECT EQUALIZERを開くと、American Class AにはEQが2種類用意されています。
American Class A Original EQというのが、前述の、いわゆるAPI EQモードです。
では、American Class A Extended EQを呼び出してみるとどうなるのでしょう。
なんと、LOW MIDとHIGH MIDにQコントロールが現れました。
そして、GAINの設定値も本来では使用できない中間値を取ることが出来ています。
プラグインだから、そしてライセンスものじゃないから出来た技です。
今のところExtended EQの個人的な感想は「APIっぽいけどなんか違う」と言ったところですが、活かせるところが必ずあるような印象を受けたのも事実です。
HPF/LPFのカーブ特性は多くの機器で見られる、設定値で付近で3dB落ちる、といったものですが、スロープがかなり緩やかな印象です。
完全な目測ですが、HPFでは3倍の270Hz付近から、LPFでは1/3の3000Hz付近から落ち始めていて、45Hz地点や18000Hz地点でも7~8dB程度しか落ちていません。ちなみに、HPFは2倍、LPFは1/2辺りの周波数から作用し始めるフィルターが多いです。
プラグインGUIのカーブが必ず正しいとは思っていませんが、British Class Aや他のEQプラグインと聴き比べるとサウンド的にもかなりなだらかな効きをしています。HPFで低域をバッサリカットするような使い方には向いていないでしょう。
Softubeに3種の神器が揃った!?
さて、ここまでのところでBritish Class AとAmerican Class Aのちょっとした使用感と印象を書いてきましたが、いかがだったでしょうか。
Console1シリーズがリリースされてから結構経っていますが、2018年の段階で、アナログモデリングの旗手SoftubeからSSL、Neve、APIと世界三大コンソールモデリングプラグインがリリースされたことになります。
この3つのコンソールモデリングは多くのプラグインメーカーからリリースされていますが、やっとSoftubeから出てきた、というところに感動すら覚えています。同一のプラグインをインサートして、モジュールでこれらのコンソールを組み替え、組み合わせて使用できるのは今のところConsole1だけではないでしょうか。
Console1では、EQ、COMP、SHAPEの各モジュールとは独立してDriveセクションがアウトプット段に備わっています。コンソールごとの特徴的なサウンドをこのDrive段に集約しているため、各モジュールを組み合わせた際にもサウンドの方向性がブレたり破綻したりすることがありません。
また、専用コントローラーとGUIの並びが完全に統一されているのも使いやすい点として挙げられます。汎用コントローラーでは直感的に手が伸びずストレスを感じていた方も納得できるものだと思います。
SOFTUBE / Console 1 Mk II
3行でまとめると
- ついにSoftubeからNeveとAPIが!
- Driveを使用することでコンソールのクセが演出可能!
- モジュール混ぜても面白い!
最後に
さて、今回はConsole1用の専用オプションBritish Class Aと、対応プラグインAmerican Class Aをご紹介してまいりました。
私自身、まだ実践使用していないのですが、コントローラーの使いやすさと高品位なサウンドで、Console1がこれからの主力プラグインになることは間違いありません。
高品位なアナログモデリングプラグインが増えていくと、録音のタイミングでマイクプリを使ってサウンドを方向づけるのか、ナチュラルな録り音に後から色付けをするのか、など今までなかった悩みも増えたりしますが、非常に贅沢な悩みですね。
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