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最悪のトラブルを予防!ギターの弦が切れる原因とその対策

エレキギターは楽器本体に消耗品の弦を張って使用する弦楽器です。そのため、使用中に弦が切れてしまうことがあります。

ライブ本番でもよくあるのが弦切れトラブルで、完全に対応するためには演奏を一旦止めないといけません。

弦が1本でも切れるとその弦の音が出せなくなるだけでなく、トラスロッドと釣り合わせている力の均衡が崩れたり、トレモロスプリングとの張力の均衡が崩れるため、残った弦のチューニングも合わなくなります。

そんな困りものの弦切れですが、今回は弦が切れてしまう原因を『弦が切れた場所』と『弦が切れたタイミング』に注目して切り分けて対策を解説していきます。

また、全ての原因に共通することですが古い弦は長期間引っ張られていたことにより密度にムラがあり、新品の弦と比べて切れやすくなっています。チューニングも安定しなくなるので、可能な限り新しい弦を張って演奏するようにしましょう。




目次

ペグ〜ナット間で弦が切れる場合の原因と対策

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弦がペグとナットの間で切れる場合には、ナットと弦の摩擦抵抗が大きいことや、ペグに何らかの問題があることが原因として考えられます。

弦が切れやすいタイミングとしては、弦の張り替え時や、チューニング時などが多くなります。チューニング時にナットが「ピキンッ」というような音を立てている場合は要注意です。

また、チョーキングやアーミングなどのプレイ時にもナットと弦は擦れあうため、ナットの摩擦抵抗が大きいとプレイ中にも弦が切れたり、チューニングが狂う原因になります。

ペグやナット、ストリングリテイナー、テンションバーとの摩擦抵抗が大きいことで、弦が部分的に引っ張られて許容張力を上回ることが主な原因なので、その摩擦抵抗を下げてやることで対策をしていく方法をご紹介していきます。

1.ストリングリテイナー、ナットに潤滑剤を使用する

読んで時のごとく、潤滑剤を使用して摩擦抵抗を下げる方法です。弦切れ対策というよりもチューニングを安定させる方法ですが、弦切れ予防にも非常に有効です。
BIGBENDS / Nut Sauce Lil-Luber
BIGBENDS / Nut Sauce Lil-Luber

上記のような潤滑剤専用の製品も出回っていますが、昔ながらの方法で、鉛筆の芯から出た粉(炭と鉛のカス)をナットの隙間やストリングリテイナーの裏、ペグの弦通しの付近に付着させるのも有効です。

触った手が黒く汚れることが難点ですが、手元にあるもので対応可能な点がメリットです。

2.ナットを交換する

ナットがチューニングのたびに「ペキペキ」と鳴いてしまうような場合で潤滑剤を使用しても改善が見られない場合には、ナットそのものを交換してしまうのがオススメです。特に樹脂製のナットには潤滑剤も浸透しづらく、あまり効果が得られない可能性も考えられます。

ギターには工場出荷時に調整された弦のゲージがあります。トレモロ周り、トラスロッドなど弦のゲージによって調整が変わる部分を出荷ゲージに合わせてから出荷・販売されています。

当然、ナットにも弦のゲージに合わせた溝が切られているため、出荷ゲージよりも太い弦ではナットの弦溝に落ち切らず、逆に細い弦では弦溝の中で弦が動いてしまいます。どちらもチューニングが不安定になったり、弦が切れやすくなる原因になるので注意が必要です。

実際にナットを交換するには古いナットの除去、新しいナットの整形、正確な弦溝の形成など熟練を要する作業が多いので、楽器店さんに相談して交換してもらうのがよいでしょう。その際に、今後使用する予定の弦のゲージに合わせた溝を切ってもらうよう依頼するのがベターです。(こちらから言わなくても必ず聞かれます。)

私は大体のギター改造・メンテナンス的なことをDIYでやるのですが、ナットと後述のフレットに関してはプロフェッショナルに依頼しています。

また、現在のナットが磨耗していたり、樹脂製など振動をネックに伝え切れないものだったりする場合には、ナットを上質なものに交換することでサウンド面の向上も期待できます。

3.ペグを交換する

ナットほど弦の切れやすさに影響が出る訳ではありませんが、ペグの弦を折り曲げる部分との摩擦で弦が切れることもあります。

ヤスリを当てて角を落としてもよいのですが、かなり細かい番手のペーパーまでかけないとかえって逆効果になる場合も多くおすすめできません。

そんな時には、ペグそのものを交換してしまうのもオススメです。高精度なペグ(マシンヘッド)や、ロック式ペグを使用することで、弦が切れづらくなるだけでなく、チューニングも安定し、ヘッドにしっかりと振動が伝わることでサウンド面も向上します。

4.ロックナットが締めすぎor緩すぎ

フロイドローズに代表されるダブルロックトレモロ搭載ギターでは、ナット側でも弦をロックする為にロックナットが搭載されています。

このロックナットを締めすぎていることや、逆に締め足りていない場合にも弦は切れやすくなります。

ナットを締めすぎている場合、ナット上で弦が薄く平たく変形し、強度が下がります。この状態で使用している場合、想像通り弦は非常に切れやすくなります。逆に締め足りていない場合、演奏中にナット上で弦が動いてしまいます。この場合には、金属同士が擦れることで弦が磨耗し、結果として弦が切れる原因となります。

ナットを締める力加減ですが、一般的なL字型の6角レンチの長い方をボルトに挿して、短い方を持って力一杯、が私なりの基準です。これに関しては慣れていくしかないでしょう。

特定のフレット上で弦が切れる場合の原因と対策

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特定のフレット上で弦が切れてしまう場合には、フレットの磨耗や、それによるフレット高の不整合が原因になっていることが多いです。

フレットは磨耗していくことで、頂点が平らになってきて、表面が凸凹になってきます。この状態のフレットはヤスリのように弦を削ってしまうためにフレット上で弦が切れる原因となります。

切れやすいタイミングは演奏中、中でもチョーキング時に切れてしまうことが多いです。

フレットは弦が擦れたり、押し付けられることにより表面が磨耗していきます。また、空気中の酸素や人間の皮脂によって酸化した幕が表面に形成されます。磨耗し、酸化することで表面がヤスリ上になった摩擦抵抗の大きいフレットと弦が接触するのが、このパターンで弦が切れる原因です。

となれば、対策はフレット表面の摩擦抵抗を下げることになります。

1.フレットの表面を磨く

フレットの酸化が主な原因となり、フレットの表面は曇っています。

実際に手で触って見てもあまりツルツルといった手触りではなくなっている場合、フレットの表面を磨く(研磨)することで弦切れが改善する場合があります。
FERNANDES / SCRATCH MENDER 946
FERNANDES / SCRATCH MENDER 946
上記のような研磨剤を使用し、フレットの表面を磨くことで、弦の突っかかりがなくなり、弦切れ対策だけでなく、演奏性も向上します。ピカピカのフレットは見た目にも美しいですね。

フレット磨きの際には、指板面をマスキングテープで完全に覆い、不要な布切れなどを使用して磨くようにしましょう。びっくりするくらい真っ黒になります。

2.フレットすり合わせ

フレットの高さに不整合が出てしまって、弦を抑えた時に1つ上のフレットにも同時に接触してしまっている場合、弦が切れやすいだけでなく、音が詰まって出ないポジションが存在したり、ビビリが酷かったりと楽器として改善が必要な状態にあります。

フレットのすり合わせを行うことで、相対的なフレット高を適正に保ち、楽器として正常な状態に戻すことが可能です。

こちらは高い技術と経験を要する作業なので、楽器店さんに依頼されるのがよいでしょう。

3.フレット交換

上記のフレットすり合わせで解決出来ないレベルでフレット高の不整合が出ている場合には、こちらのフレット交換が対処法になります。

楽器店さんのリペア担当の方と相談して、フレットのすり合わせで済ませるのか、フレット打ち替え(交換)を行うのかを慎重に決定しましょう。

フレット交換は消耗品交換の中でも技術料が高額になることが多いです。また、塗装がされているメイプル指板や、バインディングがある指板の場合アップチャージがかかる場合もあります。

実際に作業を拝見したことがあるのですが、技術料が高額に及ぶのも納得できる匠の技でした。



ピックが当たる付近で弦が切れる場合の原因と対策

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ピックが弦に当たる部分の近くで弦が切れてしまう場合の原因は、主にピックの材質によるものや、ピッキングの強さによるものです。

あまり使用している方は多くないと思いますが、金属製や石器のピックを使用している場合、硬度によっては、弦を削りながらピッキングをすることになります。

また、柔らかい材質のピックを使用していても、ピックが削れて弦との引っ掛かりが多くなることで、弦が必要以上に引っ張られ弦が切れる原因になることもあります。

個人の奏法やプレイスタイルによるところが大きいので、万人に通じるコレといった対策があるわけではありませんが、確実に言えることは、『古くなったピックをいつまでも使用しない』といったところでしょうか。

古くなったピックは弦により削れて、弦との接触面がギザギザになっていたりします。このギザギザに弦が引っかかると、思い通りのピッキングが出来ないだけでなく、必要以上に弦が引っ張られて弦切れの原因になります。

ピッキングの強弱については、強く弾くと切れやすい、ということは必ずしも無いと思っています。手首が硬いピッキングをしていると、弦を捕えている時間が長くなり、切れやすくなる気はするのですが、人によっては電動ドリルを使用してピッキングしても弦は切れないので、なんとも言えないところではあります。

ブリッジ・サドル上で弦が切れる場合の原因と対策

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ブリッジや、弦と直接接触しているサドル上で弦が切れてしまう場合、サドルに原因がある場合がほとんどです。

直接的には、サドル本体やロックトレモロのインサートブロックなどの弦と直接接触している部品が磨耗することで、摩擦抵抗が大きくなっていることや、接点が刃物のように切り立ってしまっていることが原因になっている場合が多いです。

前述の通り、サドル・ブリッジ上で弦との接点の摩擦抵抗が大きくなっていたり、弦との接点が鋭利な刃物のような状態になってしまっていることが原因になります。

そのため、対策としてはそれらを正常な状態に戻してやることになります。

1.サドルの弦溝に潤滑剤を使用する

ナットの項でもご紹介した潤滑剤には、サドルに使用できる製品もあります。

それらをサドルの弦溝に使用することで、弦とサドルの摩擦抵抗を抑え、弦を切れづらくする方法です。

プレイスタイルによっては演奏中に常にサドルにピックを持った手が触れているため、鉛筆の芯を含む潤滑剤が手に付着し、ブリッジ全体やギター本体が汚れる可能性があるので注意しましょう。個人的には潤滑剤を使用するよりも後述のサドル交換がオススメです。

2.サドル・インサートブロックを交換する

世の中には、様々なブリッジ形状用の交換用サドルが出回っています。サウンド面の変化を目的とした製品から、弦にストレスをかけないことが売りのものまであります。材質もステンレス、樹脂、チタン、スチールなどさまざまです。
GRAPHTECH / PS-8000-00
GRAPHTECH / PS-8000-00
古くなって磨耗したサドルの弦溝を綺麗に整形し直す手間を考えたら、これらのサドルに交換してしまうのがオススメです。

シンクロナイズドトレモロブリッジや、フィクスドタイプの6連サドルのブリッジには弦ピッチ(弦の間隔)によってサドルのサイズも異なります。E to Eスペースなどの表記で表されていますが、現在使用しているギターの弦ピッチにも気をつけて選びましょう。

弦ピッチについては以下の記事もご参照ください。

また、チューンオーマチックタイプ以外のほとんどの交換用サドルでは弦溝がすでに切られており、加工の必要はありません。ドライバーや6角レンチ一つでパーツ交換可能です。

ちなみに、チューンオーマチックタイプの弦溝を切るのもそんなに大変な作業ではありません。弦を張った状態のまま、棒ヤスリ1本で切ることが可能です。

3.ロックトレモロを締めすぎない

ナットの項同様、ロック式トレモロで弦を締め込みすぎると、弦が押しつぶされて薄く平面になり、強度が下がって切れやすくなります。

締め込み強度もナット同様にL字型の6角レンチの長い方をボルトに挿して、短い方を持って力一杯くらいの強度で十分です。



3行でまとめると

  • とにかく摩擦抵抗を減らす!
  • それでもダメならパーツ交換!
  • 古い弦は切れやすい、新しい弦を使用しよう!

最後に

さて、弦が切れやすい状態とその対策方法についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

私自身、あまり弦を飛ばすことがないのですが、弦が切れやすくて困っている方々の助けになれていれば幸いです。

 


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